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『番の呪い』前編

83-2 別れと再会 2

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「リュージュ、ごめんなさい…… こんなことになっても、私は今でもあなたのことを大切に思っているわ」

「いいから行け!」

 ヴィクトリアは弾かれたように脱衣所から飛び出して走り出した。涙が次から次へと溢れて止まらない。

 新居を出たヴィクトリアは馬が入れられた牧場まで走った。

 塀を飛び越えて、眠る馬の元まで走る。馬のすぐそばまで行くと、気配で気付いたのか馬は目を開けて、泣いているヴィクトリアの胸元まで自分の顔を近付けてきた。

 馬に抱きつくと、レインが騎乗した残り香が漂ってきて、少しだけ落ち着いた。

「お願い、私をレインの所まで連れて行って」





 ヴィクトリアは夜闇の街道を馬に跨り疾走し続けた。一睡もせずに馬を走らせながら朝を迎え、やがてレインと別れた街まで戻って来ていた。

 シドが処刑される旨の号外が配られた公園までやって来ると、ヴィクトリアは馬から降りた。一度も休憩をしなかったので身体が鈍く痛み、地面に降りた途端に少しふらついてしまった。

 ヴィクトリアは噴水の縁に腰掛けた。馬が噴水の水を飲んでいる。公園から通りを挟んだ斜め向かいには銃騎士隊の駐在所が見えた。

(ここにいればレインに会えるかしら)

 公園の中を街の人間たちが時折歩き抜けていく。ちょうど通勤の時間帯と被っているのか、足早に歩く人たちの中でちらちらとこちらを見る者は何人かいたが、声をかけてくる者は誰もいなかった。

 ヴィクトリアは目を閉じた。一睡もしていない身体はとても疲れていて、このまま寝入ってしまいそうだった。

 ヴィクトリアは見知った人物の匂いを嗅いだ。コツコツと小気味良い靴音が真っ直ぐこちらに向かってくる。

 ヴィクトリアは目を開けてその人物を見た。

 彼女はヴィクトリアと目が合うと、はあ、とため息を吐いた。

「せっかく逃したのに、一体何をやってるのよ。こんな所にずっといたら、またあの銃騎士に捕まるわよ」

 ヴィクトリアはナディアの姿を視界に認めた途端涙腺が緩み始め、飛び付くようにして彼女に抱き付いた。

「色んな男の匂いが混ざってる…… 最悪ね、ヴィクトリア姉様」

 ヴィクトリアを抱きしめたナディアは、子供のように泣きじゃくるヴィクトリアの頭に手を置いて、よしよしと撫でた。





***

次ページからは前話「83-1 別れと再会 1」からの分岐によるリュージュバッドエンドです

本編の続きは目次からリュージュバッドエンド章の次章「『番の呪い』後編」の「84 血の繋がり」へお願いします
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