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レインバッドエンド 愛していると言わない男

3 地下室 ✤✤✤

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 ヴィクトリアはレインに馬車に乗せられ、途中宿を取りつつ二日ほどかけてこの国の首都近郊まで連れてこられた。

 途中人気の多そうな街中を通ったりもしたが、馬車の窓は外が見えないように黒い布などで覆われてしまい、外を直接見ることはできなかった。
 ヴィクトリアは窓の隙間から入る風の匂いから、外の風景をぼんやりと感じ取れる程度だった。

 レインはヴィクトリアのことをもう誰にも見せたくないのだと言う。特に男には。

 馬車の窓を布で覆って覗き込まれないようにするのもそうだが、馬車から出て宿に入る際も徹底していて、顔はもちろん手など肌が露出している部分や髪の毛まで外には晒したくないと、レインの衣服や他のもので隠されたりぐるぐる巻きにされたりして、宿屋の部屋に辿り着くまでが息苦しすぎて辛かった。

 明らかに怪しい人型のものを抱えた人物がやってきたら宿泊をお断りされそうなものだが、銃騎士であるレインは訳ありなのかとあまり詮索されなかったようだ。

 馬車が止まり、レインの自宅だという場所に着いた。

 ヴィクトリアは案の定、御者台の男から隠すために身体をぐるぐる巻きにされてから、戸建ての家の中に入った。

 ソファに座らされるが、布はまだ取らないでと言ってレインが外に出ていく。荷物や馬車の支払いが残っているからだろうと思った。

 ヴィクトリアは言いつけに背いて少しだけ顔に巻かれた布をずらし、隙間から周囲の様子を伺った。

 レインは愛する番であり、彼から離れるつもりはもう微塵もないけれど、たぶんこのまま監禁されてしまう可能性が高いので、自分の現在の状況を早めに確認しておきたかった。

 今いるのはおそらくリビングだと思うが、部屋の中ははっきり言って殺風景だった。テーブルや椅子やその他の生活に必要だと思われるものは置かれていたが、それ以外に趣味のものや調度品が飾られているということもなかった。何にもない。がらんどうに近い。

 レインが戻ってくる気配がしたので、ヴィクトリアはずらした布を元の位置に戻した。

 レインは無言のまま近寄ってくると、ヴィクトリアを抱えて歩き出した。

 リビングを出たレインはどこかの部屋に入った。数歩行った所でヴィクトリアは床に下ろされる。

 ギギィ…… と扉のようなものが開く音がした。

「……ねえ、これもう取ってもいい?」

「まだ駄目」

 レインが何をしているのかがものすごく気になったヴィクトリアは、許可が出なくても顔の周りの布を取り去ってしまおうかと思ったが、その前に再びレインに抱き上げられてしまった。

 レインが階段を一段一段降りていく。家に入ってから一度も階段は登っていないのに降りているということは、この家には地下室があるようだった。

(ああ、きっとここで囲われるのね……)

 階段を下りきって地下室に到着し、ようやく布を取る許可が出た。

 布を取り地下室を見回す。牢屋のような場所を想像していたが、意外にも部屋の中はきちんとしていて人が住めるような普通の部屋だった。しかも中を案内されると地下室は一部屋ではなく続き部屋があって、結構広い。

 階段を下りてすぐの部屋がリビングに当たる部屋で、地上の部屋で見たものよりも上等そうなテーブルと椅子があり、上では見かけなかったレース付きのテーブルクロスまでかけられていた。

 リビングには驚いたことにダイニングまで併設されていて、材料さえあればここで末永く自炊して暮らしていけそうだった。

 料理台の上に換気口があることには気付いたが、流石に狭すぎてここから外に出るのは無理のようだ。

 中央のリビングが各部屋に繋がっていて、既に女性ものの衣服が何着か入っていた大きめのクローゼットがある寝室と、思わず監禁されかかっていることも忘れてその品揃えに感動してしまいそうになった広々とした書斎と、清潔そうな浴室と厠と、それから驚いたことに、外の光を取り入れたサンルームまであった。

 サンルームの床の一部には囲いがあり、土が盛られていて花壇になっていた。可愛らしいマリーゴールドの花が咲いていて、地下室で植物を見られるとは思っていなかったヴィクトリアは、少し癒やされた。

「陽の光を浴びないときっとおかしくなってしまうと思ったから、この部屋を作ったんだ。上の部分もちょうど一階部分のサンルームになっている」

 上を向くと天井は硝子張りだったが、透明度はあまり高くないらしく磨り硝子のようになっていて、向こう側はよく見えない。

「特注強化硝子を五枚重ねにしてあるから、たぶん獣人の君でも壊せないと思うよ」

 一種頭をよぎった考えを読んだかのようにレインが告げてくる。

 レインと一緒に暮らすことに否はない。けれど、待遇は少しでも改善させたい。

「本当に私は外にも出られずにここで一生暮らすの?」

「俺が家にいる時は一階や二階部分に上がってきてもいいよ。けど、外に出るのは一切禁止だ」

「それはちょっと酷いんじゃない?」

「ヴィクトリアの安全が第一だ。届けは出すから俺の獣人奴隷として人間社会でも生きていけるけど、その事がこの近辺の人間たち全員に知れ渡るわけじゃない。それに正式に許可が出ていると知っても尚、獣人である君を殺そうとする輩は出るかもしれない」

「あなたと一緒でも駄目なの?」

「君があまりにも美しすぎるから、俺は君が他の男どもを誘惑していく様なんて見たくない」

「そんなことしないわ」

「君がそんなつもりはなくても男はみんなそうなる。断言する。この家の外にいるのは女性の他は君を襲うことしか頭にない下方向に飢えた狼の二種類しかいないと思え」

 あなたも充分狼だったわよ、と言ってやりたかったがとりあえず黙った。

「……色々と部屋を用意してくれたのはありがたいけど、ここにずっといたら流石に運動不足に――――」

 言いながら、ヴィクトリアは途中でしまったと思った。

 レインは口元に好色そうな笑みを浮かべている。

「運動なら俺と二人ですればいいじゃないか」










「運動したかったんだろう? ほら、自分で動きなよ」
 
 場所は地下の寝室。ヴィクトリアは犬のように四つん這いになった姿勢で背後からレインの怒張を飲み込んでいた。

 一度だけ奥を突かれたが、レインは緩く腰を引いて己の先端をヴィクトリアの中頃に置いたまま、全く動いてくれない。

 この数日で何度も身体を重ねはしたものの、それでもやはり自分から動くのは恥ずかしいしはしたない。けれど自分のあそこがひくひくと動いて早く中を擦ってほしいと懇願していた。

 ためらいつつもヴィクトリアはゆっくりと動き出した。

「あっ…… ああっ……」

 自分が動くたびにぬちゅぬちゅと結合部から音が響いてくる。穴があったら入りたいくらい恥ずかしいのに、気持ちいい。

 ヴィクトリアの動きは快感を求めて次第に大きくなっていくが、自分で動くのはまだ慣れていないのもあって良い所に上手く当てられない。けれどレインに何度も開かれた身体は、ナカを行き来しているだけで媚薬なしでも強く快感を引き出せるようになっていた。

 お腹の奥が切なくてたまらない。結合部から溢れた蜜が落ちてシーツに染みを作っていく。

「あ、ああっ! レイン……! 愛してる! 愛してる……!」

「俺も大好きだよ、ヴィクトリア…………」

 羞恥を捨て去り激しく身体全体を揺すっていると、腰に手を添えていただけだったレインがヴィクトリアの動きに合わせて動いてくれるようになった。

「ひあっ……! ああああっ! きもちいいっ!」

 ズンズンと膣の最奥にレインの亀頭が当たる感覚がたまらない。背後からのレインの喘ぎ声も強くなった。

「ヴィクトリア、出る――――」

 宣言と共に熱い子種が体内に注がれる。激しく突かれた衝撃でヴィクトリアも背中をしならせて達した。

 しばらくの間二人の荒い息遣いだけが周囲に響いていた。

 レインが雄を引き抜くと、膣口からレインの精液と愛液が混ざったものが流れ出てくる。

 行為の前に避妊薬を飲まされているので、中に出されても妊娠することはない。

 外に出られないのもそうだが、レインの奴隷になるということは、自分の子供を産むことも一生ないのだろう。

(でもそれでもいい。私はレインを愛しているのだから、レインがいてくれればそれだけで充分よ……)

 熱が通り過ぎ、次第に冷静になっていく頭の中で、ヴィクトリアはそんなことを考えていた。
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