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『番の呪い』前編

81 愛しい人 ✤✤

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注)主人公による裏切り行為があります

***

 石鹸を泡立たせたリュージュの手がヴィクトリアの両胸に触れている。リュージュはヴィクトリアの全身を泡だらけにしていて、先程から体中の色んな所に触れていたが、ヴィクトリアはずっと身体を強張らせていた。

 リュージュは胸に触っている時だけ、ヴィクトリアの反応が違っていることに気付いて以降、執拗に胸ばかり責めていた。

 ヴィクトリアは顔だけではなく全身の肌を真っ赤にしていて、俯いたまま声をずっと我慢していた。

「ん……っ」

 泡をつけた指の腹でクリクリとやさしく乳首を撫でられて、思わず声が漏れてしまう。

(恥ずかしい)

 変な声を出してしまうのもそうだけど、リュージュとこんなことをするのは、自ら望んだこととはいえ、卑猥すぎる。

「ヴィクトリア、声我慢しなくていいから」

「で、でも……」

「恥ずかしいことじゃないよ。気持ち良かったら素直に自分を出してほしい。ヴィクトリアの甘い声をもっと聞きたい」

 リュージュの手が足の付根にも伸びてきて、ヴィクトリアは慌てた。

「ここも綺麗にしよう」

 リュージュはヴィクトリアの正面にいて銀色の繁みの中に手を滑り込ませてくる。ヴィクトリアは再び身体を硬くしていたが、リュージュを咎めることはしなかった。

 そこは先程アルベールに弄ばれてしまった場所だから、リュージュに上書きしてほしかった。

 泡でその付近を撫でた後、指先が秘裂に触れようとする。

 二人は対面で立った状態のままだったが、ヴィクトリアの腰が引けてしまい、リュージュから離れようとする。

「ごめん、リュージュ、やっぱり私……」

「……」

 リュージュは無言のまま、再度手を伸ばした。今度は秘裂ではなく、その上の方を探り始める。

「ヴィクトリア、逃げるな」

 ヴィクトリアはまたリュージュから離れそうになるが、彼の真っ直ぐな瞳に見つめられて押し留まる。

『番の呪い』を解くためには、必要なことなのだ。

 ヴィクトリアは、持ち得る胆力を集中させてその場に立っていた。

(リュージュと生きていくためには、これは乗り越えなくちゃいけない試練よ)

 泡のついたリュージュの指先が陰核に触れてくる。

 そこに女性の敏感な部分があることは、ヴィクトリアも本で読んで知識としては知っていたが、自分で慰めた経験など皆無だった。

 最初はピリピリと軽く電気が走るような感覚があって、それに慣れてくると、今度は電気の奥から微かな快感を感じるようになる。

「あ……っ…… ああ……んっ…… あっ……」

 柔らかく優しく刺激されていたものが、ヴィクトリアの反応に合わせて少し強めに押されたりつままれたりしていく。

 最初は微かだった快感が徐々に大きくなっていき、ヴィクトリアの息も上がっていく。

 リュージュの手技は巧みだった。声を我慢しようとしても堪えきれないものが口から溢れていく。

 触られているのは突起なのに、秘裂の奥が潤んでくるのが自分でもわかった。瞳も潤んできてポロポロと自然に涙が溢れる。

 気持ちいいのが大きくなってきて、段々と腰が落ちそうになったヴィクトリアは、やがて耐えられなくなってその場に座り込んでしまった。

 ヴィクトリアの身体から手を離したリュージュがシャワーの栓を捻る。

 温かいお湯が出てきて、身体を覆っていた白い泡が流れて消えていき、ヴィクトリアの隠れていた部分も全て露わになる。

「ヴィクトリア……」

 シャワーを止めたリュージュは屈み込むと、ヴィクトリアの涙を拭って、口付けてくる。唇を啄むようにしていたものが段々と深くなり、口内に侵入してきたリュージュの舌とヴィクトリアの舌が絡まった。

(本当はずっと、リュージュとこうしたかった)

「ヴィクトリア、愛してる」

「私も、大好きよ、リュージュ……」

 口付けの合間に愛を囁かれて、ヴィクトリアも気持ちを返す。

 脳内にレインの姿がちらつくが、できるだけ考えないようにして、リュージュとの口付けの甘美な感触だけに集中した。

 リュージュはヴィクトリアの胸を揉みながら、胸元の赤い痕に唇を寄せて上から強く吸い始めた。

 肌への口付けは少し痛いくらいだが、もっとしてほしいとヴィクトリアは思った。

 リュージュは身体中を隈なく点検するようにして、見つけた痕に片っ端から痕を付け直していった。

 ヴィクトリアの全ては自分のものだとでも主張するかのように、リュージュはヴィクトリアの身体中の至る所、痕が付いていない真っさらな部分にも唇を這わせた。

 身体中がリュージュの付けた痕でいっぱいになると、リュージュは今度は胸の頂きに唇を移動させた。
 リュージュはアルベールがしたように舌先で乳頭を丹念に舐めてから、口内に含んで吸い始めた。

「リュー、ジュ…… 気持ちいい……」

 アルベールにされた時とは全然感触が違っていた。気持ち良すぎてもっとしてほしくて、ヴィクトリアは剥き出しの自分の欲望に忠実になる。

 リュージュの唇は一度離れかけていたが、また戻ってきて再び胸を咥えた。口内の唾液を潤滑油代わりに、舌先で乳頭を刺激して転がして行く。

「あああっ……んっ…… はあっ、ああ……」

 ヴィクトリアはもう声を我慢しなかった。恥ずかしい声が浴室に反響していて、自分の意志とは無関係に、耐えず喉の奥から甘えたような声が漏れてくる。

 ヴィクトリアは恥ずかしさよりも気持ちよさが勝ってしまい、知らない世界に迷い込んでしまったように感じた。

 快楽に溺れそうになる中、リュージュの手が伸びてきて、指が秘裂に挿し込まれる。

「!」

 甘く快感に溶けていたそれまでとは違い、その瞬間、ヴィクトリアの身体が強張った。ヴィクトリアはリュージュの身体を精一杯の力で遠ざけようとした。

「い、嫌っ…… やめて…………」

 アルベールの時と同じだ。

 ここは聖域。

『番』以外は――――レイン以外は――――決して踏み込んではならない場所だ。

(リュージュと番になろうと決めたはずなのに…… 心を通わせ合って、リュージュと一緒に生きていこうと覚悟を決めたはずなのに……)

 身体が――心が――その決意を否定する。

「ヴィクトリア」

 ヴィクトリアが拒んでもリュージュはやめなかった。彼女の中のより深い場所に辿り着こうとする。

 ヴィクトリアは頭を振った。

「リュージュ……駄目………… 私やっぱり―――― んっ!?」

 言葉の途中で鼻をつままれてしまい、ヴィクトリアは驚いて目を白黒させた。

「ヴィクトリア、大丈夫だ…… 大丈夫だから、俺に身を委ねて」

 嗅覚を塞がれたことで周囲に満ちていたリュージュの匂いがわからなくなる。

 リュージュは鼻をつまんでいるのとは逆の手でヴィクトリアの膣内を弄り続けていた。

 ヴィクトリアは口で息をしていた。リュージュの手の動きが早さを増すにつれて、ヴィクトリアの呼吸が荒くなり、口から喘ぎ声が漏れた。

 ぐちゅぐちゅと、溢れた蜜の中をリュージュの指が掻き回す音が響く。
 
 ヴィクトリアは目の前がチカチカしていた。身体が熱くて、身体の奥の方から波のように何かが押し迫ってくるようだった。

「ヴィクトリア、愛してる。愛しているから、俺を受け入れて。俺を愛して――――」

「あ……愛してる………… 私も、愛しているわ――――」

 ヴィクトリアは初めての感覚に耐えられなくなって、目の前の男の身体に強く強くしがみついた。

 そして、愛しいその人の名前を叫ぶ――――










 ―――――――――――レイン…………
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