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対銃騎士隊編
46 結婚します(レイン視点)
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レインは宿屋には直行せず、先程の宝飾店に戻って来ていた。
店員に声をかけ、こっそり準備してもらっていたものを見せてもらう。
綺麗な小箱に入れられたそれは、銀色の揃いの指輪だ。
先程の試着において、着けたり外したりを繰り返して、彼女が何度も何度も見ていたから、それにしようと決めた。店内で彼女と距離ができた時に、あとで彼女に内緒で買いに来るから用意しておいてほしいと店員に伝えていた。
「贈り物ですか?」
「ええ、婚約指輪です」
「まあ、ご婚約用ですか。それはおめでとうございます」
「ありがとうございます」
婚約も何も交際の返事すらもらっていないが、レインはヴィクトリアと結婚する気満々だった。
そう、ヴィクトリアとは奴隷契約ではなく、結婚するのだ。
彼女が奴隷は嫌だと言うから、妻にしようと思う。
人間と獣人が人間社会で共に生きていくには、主人と奴隷になる以外に、ほとんど反則技と言っていいがもう一つだけ方法がある。
魔法使いの力を使えばいい。
そうすれば、人間社会に完全に溶け込み、獣人であることを隠して生きていける。彼女が人間として生活できる。
幸い、レインには魔法使いの伝手もある。
魔法使いに貸しを作ることになるし、多少の不便さは発生することになるが、それでも奴隷にならずとも一緒にいる方法があると言えば、彼女もきっと受け入れてくれるはずだ。
本当は奴隷の方が色々と都合がいいのだが、彼女の望みはできるだけ叶えてあげたい。それに、レインにとっては奴隷でも妻でも、結局は同じことだった。
環境は全て整えてある。
一緒になったら専用の部屋に閉じ込めて、自分が付き添える時以外はそこから出さない。
少し不自由な思いをさせてしまうかもしれないが、全ては彼女の安全のためだ。
彼女はびっくりするくらい綺麗だから、彼女の姿を見ただけで血迷う男が次から次へと湧いて出てきてしまう。
九番隊砦の面子がいい例だ。実際、彼女の姿を目にした途端、連中は浮足立ち、お祭り騒ぎだった。
法が許すなら全員始末したい。
筆頭はジュリアスだ。
ジュリアスは馬鹿みたいに強い。本人は隠したがっているが、銃騎士隊で一番強いのはおそらくジュリアスだろう。闇討ちした所で返り討ちにされるだけだろうが、何か仕返しをしないと気が済まない。
何が「俺は婚約者一筋だから大丈夫」だ。
他の奴らよりはあからさまではなかったが、時折奴が彼女を見る目は、でろでろに甘く溶けていた。
あとで婚約者のフィーにジュリアスが浮気をしていたと言いつけておいてやろう。
彼女を不埒な全ての男共から守りたい。その思いは砦を逃げ出し、彼女と絆を深めながら共に過ごすうちにより強くなった。街歩きをしながら、レインはやはり自分の考えは間違っていなかったと確信した。
道行く者たちが彼女を舐めるように凝視していた。すれ違った後も何度も振り返る。
彼女はあまり気にしていないようだったが、レインは気になった。彼女は故郷でもこのような視線を受けていたのだろうか? シリウスからそんな報告は受けていないが、そうだったとしてもレインを刺激するような事案は伏せられていたのだろう。彼女はおそらく、日常茶飯事すぎて劣情を伴う視線には鈍感になっている。
(シリウスの奴、後で彼女の身におかしなことがなかったかどうか締め上げて全部吐かせてやる)
オリオンと偽名を使うあの男は銃騎士隊員ではない。レインが彼の本名を知っているのは、一時期シリウスの実家に居候していたことがあるからだった。
シドが居住する場所への潜入は魔法使いに一任するというのが隊長とジュリアスの判断だった。レインはずっと自分も潜入したいと訴えてきたが、その度にお前では冷静な判断ができないと却下され続けた。シリウスから写真を貰って彼女の姿を眺めるのみで、長い間ヴィクトリアに会えなかった。
街歩きの最中、レインはヴィクトリアの隣を歩きながら表情を崩さないようにしていたが、その実、彼女に向けられる視線に腸が煮えくり返る思いだった。
見るな、と思った。
(彼女は俺だけのものだ)
いったい誰の許可を得て見ているのだ、と。
彼女を不躾に見ている奴ら全員の目玉を抉り出して踏み潰して壊したい。
そんなことをしたら心優しい彼女が悲しむだろうから、思うだけでやらないけど。
大切な人をもう誰にも奪われたくない。傷付けられたくない。
絶対に触らせたくないし、もはや見せるのでさえ嫌だ。
だから彼女はどこにもやらない。どこにも出さない。
(彼女に触れていいのは俺だけだ)
指輪の購入を進めながら、今も心配でたまらない。早く彼女に結婚の約束を取り付けたくて、求婚するための指輪を買いに走ってしまったが、無事でいるだろうか。変な男に絡まれてはいないだろうか。彼女はちょっと純粋すぎる所があるから心配だ。
指輪を受け取ったらすぐに彼女の所まで戻ろう。実は揃いの指輪は数年前に既に別のものを買ってあるが、自宅に置いたままだ。こんなことなら持ち歩いていればよかった。
指輪は恋人の証として一組あればいいと思っていたが、計画は変更だ。あれは結婚指輪でこれは婚約指輪ということにしよう。
馬…… 馬なんかもはやどうでもいい。馬を取りに行くと言ったのは指輪を買うためのただの口実だ。
馬を連れずに戻って不審がられたら、正直にこの指輪を買いに行っていたんだと言おう。そして奴隷になる以外に一緒になる方法があると言って、彼女に求婚しよう。
彼女が疲れているようなら、また自分が抱き上げて移動すればいい。彼女は嫌がっていたが、レインとしては自分のものだと主張できるから気分が良かった。
とにかく彼女のことが心配だ。早く戻りたい。
商品を受け取った所で、外が騒がしいことに気付く。大勢の人の叫び声のようなものが聞こえる。
「……一体どうしたんでしょうね?」
店員も訝しんで窓の外を見ている。
レインは急いで店から飛び出した。
店員に声をかけ、こっそり準備してもらっていたものを見せてもらう。
綺麗な小箱に入れられたそれは、銀色の揃いの指輪だ。
先程の試着において、着けたり外したりを繰り返して、彼女が何度も何度も見ていたから、それにしようと決めた。店内で彼女と距離ができた時に、あとで彼女に内緒で買いに来るから用意しておいてほしいと店員に伝えていた。
「贈り物ですか?」
「ええ、婚約指輪です」
「まあ、ご婚約用ですか。それはおめでとうございます」
「ありがとうございます」
婚約も何も交際の返事すらもらっていないが、レインはヴィクトリアと結婚する気満々だった。
そう、ヴィクトリアとは奴隷契約ではなく、結婚するのだ。
彼女が奴隷は嫌だと言うから、妻にしようと思う。
人間と獣人が人間社会で共に生きていくには、主人と奴隷になる以外に、ほとんど反則技と言っていいがもう一つだけ方法がある。
魔法使いの力を使えばいい。
そうすれば、人間社会に完全に溶け込み、獣人であることを隠して生きていける。彼女が人間として生活できる。
幸い、レインには魔法使いの伝手もある。
魔法使いに貸しを作ることになるし、多少の不便さは発生することになるが、それでも奴隷にならずとも一緒にいる方法があると言えば、彼女もきっと受け入れてくれるはずだ。
本当は奴隷の方が色々と都合がいいのだが、彼女の望みはできるだけ叶えてあげたい。それに、レインにとっては奴隷でも妻でも、結局は同じことだった。
環境は全て整えてある。
一緒になったら専用の部屋に閉じ込めて、自分が付き添える時以外はそこから出さない。
少し不自由な思いをさせてしまうかもしれないが、全ては彼女の安全のためだ。
彼女はびっくりするくらい綺麗だから、彼女の姿を見ただけで血迷う男が次から次へと湧いて出てきてしまう。
九番隊砦の面子がいい例だ。実際、彼女の姿を目にした途端、連中は浮足立ち、お祭り騒ぎだった。
法が許すなら全員始末したい。
筆頭はジュリアスだ。
ジュリアスは馬鹿みたいに強い。本人は隠したがっているが、銃騎士隊で一番強いのはおそらくジュリアスだろう。闇討ちした所で返り討ちにされるだけだろうが、何か仕返しをしないと気が済まない。
何が「俺は婚約者一筋だから大丈夫」だ。
他の奴らよりはあからさまではなかったが、時折奴が彼女を見る目は、でろでろに甘く溶けていた。
あとで婚約者のフィーにジュリアスが浮気をしていたと言いつけておいてやろう。
彼女を不埒な全ての男共から守りたい。その思いは砦を逃げ出し、彼女と絆を深めながら共に過ごすうちにより強くなった。街歩きをしながら、レインはやはり自分の考えは間違っていなかったと確信した。
道行く者たちが彼女を舐めるように凝視していた。すれ違った後も何度も振り返る。
彼女はあまり気にしていないようだったが、レインは気になった。彼女は故郷でもこのような視線を受けていたのだろうか? シリウスからそんな報告は受けていないが、そうだったとしてもレインを刺激するような事案は伏せられていたのだろう。彼女はおそらく、日常茶飯事すぎて劣情を伴う視線には鈍感になっている。
(シリウスの奴、後で彼女の身におかしなことがなかったかどうか締め上げて全部吐かせてやる)
オリオンと偽名を使うあの男は銃騎士隊員ではない。レインが彼の本名を知っているのは、一時期シリウスの実家に居候していたことがあるからだった。
シドが居住する場所への潜入は魔法使いに一任するというのが隊長とジュリアスの判断だった。レインはずっと自分も潜入したいと訴えてきたが、その度にお前では冷静な判断ができないと却下され続けた。シリウスから写真を貰って彼女の姿を眺めるのみで、長い間ヴィクトリアに会えなかった。
街歩きの最中、レインはヴィクトリアの隣を歩きながら表情を崩さないようにしていたが、その実、彼女に向けられる視線に腸が煮えくり返る思いだった。
見るな、と思った。
(彼女は俺だけのものだ)
いったい誰の許可を得て見ているのだ、と。
彼女を不躾に見ている奴ら全員の目玉を抉り出して踏み潰して壊したい。
そんなことをしたら心優しい彼女が悲しむだろうから、思うだけでやらないけど。
大切な人をもう誰にも奪われたくない。傷付けられたくない。
絶対に触らせたくないし、もはや見せるのでさえ嫌だ。
だから彼女はどこにもやらない。どこにも出さない。
(彼女に触れていいのは俺だけだ)
指輪の購入を進めながら、今も心配でたまらない。早く彼女に結婚の約束を取り付けたくて、求婚するための指輪を買いに走ってしまったが、無事でいるだろうか。変な男に絡まれてはいないだろうか。彼女はちょっと純粋すぎる所があるから心配だ。
指輪を受け取ったらすぐに彼女の所まで戻ろう。実は揃いの指輪は数年前に既に別のものを買ってあるが、自宅に置いたままだ。こんなことなら持ち歩いていればよかった。
指輪は恋人の証として一組あればいいと思っていたが、計画は変更だ。あれは結婚指輪でこれは婚約指輪ということにしよう。
馬…… 馬なんかもはやどうでもいい。馬を取りに行くと言ったのは指輪を買うためのただの口実だ。
馬を連れずに戻って不審がられたら、正直にこの指輪を買いに行っていたんだと言おう。そして奴隷になる以外に一緒になる方法があると言って、彼女に求婚しよう。
彼女が疲れているようなら、また自分が抱き上げて移動すればいい。彼女は嫌がっていたが、レインとしては自分のものだと主張できるから気分が良かった。
とにかく彼女のことが心配だ。早く戻りたい。
商品を受け取った所で、外が騒がしいことに気付く。大勢の人の叫び声のようなものが聞こえる。
「……一体どうしたんでしょうね?」
店員も訝しんで窓の外を見ている。
レインは急いで店から飛び出した。
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