獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~ R18

鈴田在可

文字の大きさ
上 下
45 / 220
対銃騎士隊編

43 写真

しおりを挟む
 下着をいくつか見繕い、そのうちの一つを身に着けたヴィクトリアは更衣室から出た。

(次は服を選ばないと)

「ヴィクトリア」

 レインに呼ばれてヴィクトリアは彼のそばに行った。レインの前には婚礼用の純白のドレスが目立つように展示されている。

「花嫁が結婚式に着る衣装ね。綺麗だわ…」

(花嫁衣装を見ると、リュージュとサーシャの結婚式のことを思い出す……)

「聞いてみたんだけど試着してもいいらしいよ。着てみない?」

 レインが急にそんなことを言ってきたので驚く。

「え、私はいいわよ……」

「予行演習だと思えばいいいよ」

 別にまだレインと一緒になると決めたわけではないし、獣人と人間が結婚式を挙げるだなんて里でもない限り不可能だろうと思ったが、レインは店員を呼んでしまい再び更衣室に逆戻りすることになった。

「お客様はお美しいのでよくお似合いでございます!」

 婚礼衣装を着せ終えた店員はヴィクトリアを見るとなぜか感動したようにそう言って、目を輝かせた。

「こちらはサービスでございます!」

 店員はヴィクトリアを椅子に座らせると張り切った様子で化粧まで施し始めた。別の店員がやって来てヴィクトリアの長い銀髪を結い上げる。衣装に合わせたヘッドドレスを飾れば鏡の中に立派な花嫁が出来上がっていた。

 店員の化粧の腕前は素晴らしいもので、自分で化粧した時よりもとても綺麗な仕上がりになっていた。

 完成形を見た店員たちは泣いていたが、更衣室のカーテンを開けてレインにその姿を見せても、彼は時が止まったように目を見開いてこちらを見つめるばかりで、一言も何も言ってくれなかった。

(綺麗にしてもらって浮かれていたけど、花嫁でもないのに恥ずかしい……)

 ヴィクトリアは思わずカーテンを引いて隠れてしまった。

「ヴィクトリア、どうしたんだ! 隠れないでもっと花嫁姿を見せてくれ! とても綺麗だ」

 カーテンの向こうから上擦った声で慌てたように言うレインの声が聞こえた。





 ヴィクトリアはすぐに別の服に着替えようとしたが、レインや店員たちに勧められるまま隣の写真館で花嫁衣装のまま写真を撮ることになってしまった。

「結婚式も隊服で挙げられるのですか? 銃騎士の方は隊服のままで式を挙げる方もいらっしゃいますからね」

 レインは何をどう言ったのか、写真館の店主は二人の結婚写真を撮ると思っているようだった。

 二人で並んで撮ったものと、レインの希望でヴィクトリアだけを写したものも何枚か撮った。

 写真は出来上がるまでに何週間かかかるらしく、レインが受け取り方法について店主と話をしている間、ヴィクトリアは隣の婦人服店に戻って普段着に着換え、髪の毛も下ろして華美ではない髪型に変えてもらった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

私と運命の番との物語

星屑
恋愛
サーフィリア・ルナ・アイラックは前世の記憶を思い出した。だが、彼女が転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢だった。しかもその悪役令嬢、ヒロインがどのルートを選んでも邪竜に殺されるという、破滅エンドしかない。 ーなんで死ぬ運命しかないの⁉︎どうしてタイプでも好きでもない王太子と婚約しなくてはならないの⁉︎誰か私の破滅エンドを打ち破るくらいの運命の人はいないの⁉︎ー 破滅エンドを回避し、永遠の愛を手に入れる。 前世では恋をしたことがなく、物語のような永遠の愛に憧れていた。 そんな彼女と恋をした人はまさかの……⁉︎ そんな2人がイチャイチャラブラブする物語。 *「私と運命の番との物語」の改稿版です。

三年間片思いしていた同級生に振られたら、年上の綺麗なお姉さんにロックオンされた話

羽瀬川ルフレ
恋愛
 高校三年間、ずっと一人の女の子に片思いをしていた主人公・汐見颯太は、高校卒業を目前にして片思いの相手である同級生の神戸花音に二回目の告白をする。しかし、花音の答えは二年前と同じく「ごめんなさい」。  今回の告白もうまくいかなかったら今度こそ花音のことを諦めるつもりだった颯太は、今度こそ彼女に対する未練を完全に断ち切ることにする。  そして数か月後、大学生になった颯太は人生初のアルバイトもはじめ、充実した毎日を過ごしていた。そんな彼はアルバイト先で出会った常連客の大鳥居彩華と少しずつ仲良くなり、いつの間にか九歳も年上の彩華を恋愛対象として意識し始めていた。  自分なんかを相手にしてくれるはずがないと思いながらもダメ元で彩華をデートに誘ってみた颯太は、意外にもあっさりとOKの返事をもらって嬉しさに舞い上がる。  楽しかった彩華との初デートが終わり、いよいよ彩華への正式な告白のタイミングを検討しはじめた颯太のところに、予想外の人物からのメッセージが届いていた。メッセージの送り主は颯太と同じ大学に進学したものの、ほとんど顔を合わせることもなくなっていた花音だった。

心を病んだ魔術師さまに執着されてしまった

あーもんど
恋愛
“稀代の天才”と持て囃される魔術師さまの窮地を救ったことで、気に入られてしまった主人公グレイス。 本人は大して気にしていないものの、魔術師さまの言動は常軌を逸していて……? 例えば、子供のようにベッタリ後を付いてきたり…… 異性との距離感やボディタッチについて、制限してきたり…… 名前で呼んでほしい、と懇願してきたり…… とにかく、グレイスを独り占めしたくて堪らない様子。 さすがのグレイスも、仕事や生活に支障をきたすような要求は断ろうとするが…… 「僕のこと、嫌い……?」 「そいつらの方がいいの……?」 「僕は君が居ないと、もう生きていけないのに……」 と、泣き縋られて結局承諾してしまう。 まだ魔術師さまを窮地に追いやったあの事件から日も浅く、かなり情緒不安定だったため。 「────私が魔術師さまをお支えしなければ」 と、グレイスはかなり気負っていた。 ────これはメンタルよわよわなエリート魔術師さまを、主人公がひたすらヨシヨシするお話である。 *小説家になろう様にて、先行公開中*

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...