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対銃騎士隊編
29 姫の御用聞き
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お腹は満たされたが、ヴィクトリアのもう一つの要望「お風呂に入りたい」はもう少し待ってほしいと言われてしまった。九番隊砦は男所帯で女風呂なんてないらしい。シャワーだけの施設はないのかと聞くと、あることにはあるがと歯切れが悪い。
近いうちに何とかするから身体を拭くだけで我慢してくれと言われたが、シャワー施設があるなら使わせてくれてもいいじゃないかと食い下がった。
レインというあの男性に着替えはさせてもらったけど、里から逃げて長時間走り続けたせいで不快な汗の匂いが身体中に残っている。
(近いうちになんて、いつまで待てばいいの)
今日中にはどうしても汗を流したかった。
シャワーでいいから絶対に入りたい、ただの水浴びでもかまわないからその施設を利用させてほしいと強く主張した。
入らせてもらえないならあなたとはもう口もきかないし取り調べにも協力しないでずっと黙ってるわよと脅したり、何なら川にでも連れてってもらって後ろ向いてくれればパパッと済ませるからお願いよと懇願したりして、何が何でも入りたいと強硬な態度を貫いた。
そしてジュリアスに半ば呆れられながらも、わかったと返事を貰うことに成功した。
きっと、かなりのわがまま娘に見えたに違いないが、ヴィクトリアにとって一日一風呂は譲れない信条の一つだ。
その結果、部屋を移動することになった。
手枷はそのままで、足枷だけ外してもらいそれまでいた部屋から外に出た。廊下を進み白い壁の建物から一歩外へ出れば、新緑の匂いの混じった心地よい風が肌を撫でていく。やはり閉じ込められているよりは外に出た方が気持ちがいい。
敷地内は砂利が敷かれていて、所々常用樹が点在している。視線を上げれば山が近くに見えた。九番隊砦は山の麓にある。
じゃりじゃりと小石を踏みしめて歩くが、同時に響く足音が多すぎる。ジュリアスを含む見張りが前後左右と他数名いるのはわかるが、その周りをぐるりと取り囲むように全方位を銃騎士に囲まれている。全部で何人いるかわからない。
(何この大移動)
もしかしたら移動の際に逃げ出す隙があるかもと期待したが、この人数を振り切って逃げるのは無理だ。
「ねえ、いくら何でも見張りの数が多すぎるんじゃない?」
「ほとんどが自発的行動だ。来るなと言っても散歩の方向が同じだけだと言って勝手に付いてくるんだから仕方ないだろう」
ジュリアスに聞けば彼は頭が痛いという風に首を振りながら答えている。なぜ軍隊の大移動みたくなっているのか理由を知りたかったが、ジュリアス自体があまり答えたくないという雰囲気だったので口を噤む。
やがて辿り着いたのは一軒の小屋だった。敷地の端っこの方にあり、だいぶ寂れている。中は先程の白い部屋に比べればかなり広いが、入るとすぐに鉄格子が見えた。天井から床までを貫く長めの鉄の棒が、小屋の東側から西側まで連続して何本も突き刺さっている。鉄の棒は横方向にも伸びていた。この柵の向こう側が監獄というわけらしい。
檻の中、壁際にシャワーが一台取付けられていた。カーテンを引くことで一応目隠しができるようになっている。
「昔ここで捕まえた獣人を不必要に監禁していたらしい。銃騎士隊の暗部だ。今ではかなり強く取り締まっているからそんなことは起こらなくなってきているが、何故かこの建物は今でも取り壊されずに残っている。こんな所に君を入れるのは忍びないのだが、どうする? 嫌なら先程の部屋に戻ってもいいぞ」
柵の中はあまり陽の光が入らず薄暗いけれど、ヴィクトリアが移ることになって準備がされたらしく、床には絨毯が敷かれ食事が摂れるようにテーブルと椅子もある。ふかふかで寝心地の良さそうな寝台も置いてあった。
テーブルの上には花瓶が置かれ花が生けてあった。摘んだばかりなのだろう花の香りがほんのりと漂ってくる。
昔、ここで獣人が虐待されていたような匂いは感じなかった。
何より、ここにはシャワー設備がある。ヴィクトリアにとってはそれが一番重要だった。
「せっかく部屋を整えてくれたのでしょう? ここでいいわ」
「言った通りシャワーは水しか出ないからな」
「冬じゃないし水で充分よ。ありがとうジュリアス! 本当に助かったわ!」
ついつい笑顔でそう言うと、ジュリアスが相好を崩した。
では早速使いたいなどと言っていると、小屋の入口から外にかけて中に入れなかった者たちの集団からざわめきが聞こえた。
シャワーだ…… 美女の…… 肌を弾く水飛沫…… といったような声がぼそぼそと聞こえてくる。
「……ヴィクトリア、害虫を駆除してくるから少し待っていろ」
ジュリアスは美しい顔に、にっこりと微笑みを浮かべた。目だけ笑っていないが。
カツリ、カツリ、とジュリアスが威厳を放つように歩み出せば、入口付近にいた者たちがさっと身を引いて道を空ける。
ジュリアスが外に出て行き、朗々たる美声が響いた。
「今から一時間、俺以外の誰一人としてこの小屋の半径一キロ以内に侵入するな。お前たちがどんなに気配を殺して近づいても俺は全て見破ってやるからそのつもりでいろ。禁を破った者には銃騎士隊名物地獄の特訓百回分を課してやる」
ひえっ、と誰かが呻いた。殺す気か、という声もする。
すると小屋の中、ヴィクトリアの側にいた銃騎士の一人が慌てたように戸口に立ち、話しかけた。
「ちょっと待てジュリアス、見張りはどうするつもりなんだ?」
「俺が一人で見張る」
すかさず集団の中から声が上がった。
「隊長代行だけずるいぞ!」
「横暴だ!」
「職権乱用!」
不満の意を顕にする集団に対し、ジュリアスの一段低くなって冷え切った声が響く。
「異論がある奴は前に出てこい」
バキバキ、と、たぶんジュリアスの手の骨が鳴る音がする。小屋の内部、戸口付近に立っていた何人かの顔が引き攣っているのが見えた。
「上官命令が言葉でわからない奴は身体に直接叩き込むしかないな」
辺りが急に静まり返る。反論者はいなかった。
他の銃騎士たちが皆小屋から出て行っていなくなった後、ため息を吐き出したジュリアスから、言っておきたいことがあると話を切り出された。
「いいか、君は危機感が無いようだからこの際はっきり言わせてもらうが、この九番隊砦に女性はほとんどいない。近くの村から通いで食事を作りに来てくれる年輩の女性が何人かいるだけだ。獣人とはいえこの砦にいるうら若い女性は君だけで、おまけに食事をするだけで男を悶絶させるほどの美女ときている。今、君は飢えた狼共の巣窟にいると思え。身体を綺麗にしたいのはわかるが、確実に覗かれたぞ」
「の、覗き……」
ヴィクトリアは絶句した。
「覗かれるだけで済めばいいがな。あの中の何人かはその先のことまで考えていただろうな。この国の法律が守っているのは人間だけだ。獣人が暴行を受けた事自体が罪に問われることは無い。人間と獣人との性交を禁止する法律はあるが、今やそれは形骸化している。子を成さない限り捕まったり裁かれたりすることはほとんど無い。欲望の捌け口にするには君は格好の相手なんだ」
ヴィクトリアは話を聞きながら固まっている。
「出来るだけのことをすると言った手前、シャワーを浴びるなとは言わないが、俺が見張りの時以外は絶対にシャワーを使うな。必ず俺に一声掛けてから使うんだぞ」
「わ、わかったわ。色々気を配ってくれてありがとう」
ヴィクトリアはジュリアスに心から感謝した。
ヴィクトリアはシャワー近くのカーテンを引き、服を脱いだ。壁際に棚がありタオルが何枚か置かれていたので、その棚に脱いだ服を置く。
壁から突き出た丸い取手を捻ると固定された傘の部分から水が出てくる。手で触るとやや冷たさを感じたが、意を決して身体全体的にシャワーの水を当てる。身体に冷たさが響くが、じきに慣れた。
ヴィクトリアは一度シャワーを止めた。タオルを掴み身体の前面だけ隠すと、カーテンを少しだけ開けて様子を伺う。
外にいると言われたのでジュリアスは小屋の中にはいない。ヴィクトリアはかなり神経を研ぎ澄ませ、集中して匂いを探る。
小屋の周りにはジュリアス以外誰の匂いもしない。ジュリアスは小屋の外で、腕組みをした状態で戸口に背を預けるようにして立っているようだ。彼はずっと小屋から背を向けていて、戸の隙間からこちらを覗くようなこともしていない。
(なんて律儀な人だろう)
少しくらい覗かれるのではと思ったが、完全に杞憂だったようだ。しばらく探ってみてもジュリアスにそんな素振りはない。彼はヴィクトリアの危険を取り払い、自身も規律を守っている。
(とても立派な人だ)
もし彼に婚約者がいなかったら、惚れていたかもしれない。
そう、ジュリアスには婚約者がいる。左手の指輪が気になったので恋人がいるのか尋ねたら、そんな答えが返ってきた。あれほどの美形に相手がいない方がおかしいだろう。
できれば近いうちに結婚したいと考えているそうだ。
ジュリアスは本当に良くしてくれる。わがままを聞いてくれるだけではなく、彼はヴィクトリアの命を助けたいと言ってくれた。死罪にはしないように進言すると言われて、どれほど救われたことか。
ただ、誠意を尽くしてくれるジュリアスには申し訳ないが、それでもやはり奴隷になるのは嫌だった。誰かの所有物として生きていくのは、抵抗がありすぎる。
おそらくジュリアスのことだからちゃんとした人を探してくるような気もしたが、一生側にいる相手――自分の番――は自分で選びたい。
ヴィクトリアは再び取手を捻り、水浴びを再開した。
ヴィクトリアがシャワーを浴びる時は見張りはジュリアスだけになる。鉄格子の柵を開ける鍵を手に入れて、あとはジュリアスさえ何とかすれば逃げられる。
逃げ出すなら、シャワーの時間帯に勝気があるような気がした。
近いうちに何とかするから身体を拭くだけで我慢してくれと言われたが、シャワー施設があるなら使わせてくれてもいいじゃないかと食い下がった。
レインというあの男性に着替えはさせてもらったけど、里から逃げて長時間走り続けたせいで不快な汗の匂いが身体中に残っている。
(近いうちになんて、いつまで待てばいいの)
今日中にはどうしても汗を流したかった。
シャワーでいいから絶対に入りたい、ただの水浴びでもかまわないからその施設を利用させてほしいと強く主張した。
入らせてもらえないならあなたとはもう口もきかないし取り調べにも協力しないでずっと黙ってるわよと脅したり、何なら川にでも連れてってもらって後ろ向いてくれればパパッと済ませるからお願いよと懇願したりして、何が何でも入りたいと強硬な態度を貫いた。
そしてジュリアスに半ば呆れられながらも、わかったと返事を貰うことに成功した。
きっと、かなりのわがまま娘に見えたに違いないが、ヴィクトリアにとって一日一風呂は譲れない信条の一つだ。
その結果、部屋を移動することになった。
手枷はそのままで、足枷だけ外してもらいそれまでいた部屋から外に出た。廊下を進み白い壁の建物から一歩外へ出れば、新緑の匂いの混じった心地よい風が肌を撫でていく。やはり閉じ込められているよりは外に出た方が気持ちがいい。
敷地内は砂利が敷かれていて、所々常用樹が点在している。視線を上げれば山が近くに見えた。九番隊砦は山の麓にある。
じゃりじゃりと小石を踏みしめて歩くが、同時に響く足音が多すぎる。ジュリアスを含む見張りが前後左右と他数名いるのはわかるが、その周りをぐるりと取り囲むように全方位を銃騎士に囲まれている。全部で何人いるかわからない。
(何この大移動)
もしかしたら移動の際に逃げ出す隙があるかもと期待したが、この人数を振り切って逃げるのは無理だ。
「ねえ、いくら何でも見張りの数が多すぎるんじゃない?」
「ほとんどが自発的行動だ。来るなと言っても散歩の方向が同じだけだと言って勝手に付いてくるんだから仕方ないだろう」
ジュリアスに聞けば彼は頭が痛いという風に首を振りながら答えている。なぜ軍隊の大移動みたくなっているのか理由を知りたかったが、ジュリアス自体があまり答えたくないという雰囲気だったので口を噤む。
やがて辿り着いたのは一軒の小屋だった。敷地の端っこの方にあり、だいぶ寂れている。中は先程の白い部屋に比べればかなり広いが、入るとすぐに鉄格子が見えた。天井から床までを貫く長めの鉄の棒が、小屋の東側から西側まで連続して何本も突き刺さっている。鉄の棒は横方向にも伸びていた。この柵の向こう側が監獄というわけらしい。
檻の中、壁際にシャワーが一台取付けられていた。カーテンを引くことで一応目隠しができるようになっている。
「昔ここで捕まえた獣人を不必要に監禁していたらしい。銃騎士隊の暗部だ。今ではかなり強く取り締まっているからそんなことは起こらなくなってきているが、何故かこの建物は今でも取り壊されずに残っている。こんな所に君を入れるのは忍びないのだが、どうする? 嫌なら先程の部屋に戻ってもいいぞ」
柵の中はあまり陽の光が入らず薄暗いけれど、ヴィクトリアが移ることになって準備がされたらしく、床には絨毯が敷かれ食事が摂れるようにテーブルと椅子もある。ふかふかで寝心地の良さそうな寝台も置いてあった。
テーブルの上には花瓶が置かれ花が生けてあった。摘んだばかりなのだろう花の香りがほんのりと漂ってくる。
昔、ここで獣人が虐待されていたような匂いは感じなかった。
何より、ここにはシャワー設備がある。ヴィクトリアにとってはそれが一番重要だった。
「せっかく部屋を整えてくれたのでしょう? ここでいいわ」
「言った通りシャワーは水しか出ないからな」
「冬じゃないし水で充分よ。ありがとうジュリアス! 本当に助かったわ!」
ついつい笑顔でそう言うと、ジュリアスが相好を崩した。
では早速使いたいなどと言っていると、小屋の入口から外にかけて中に入れなかった者たちの集団からざわめきが聞こえた。
シャワーだ…… 美女の…… 肌を弾く水飛沫…… といったような声がぼそぼそと聞こえてくる。
「……ヴィクトリア、害虫を駆除してくるから少し待っていろ」
ジュリアスは美しい顔に、にっこりと微笑みを浮かべた。目だけ笑っていないが。
カツリ、カツリ、とジュリアスが威厳を放つように歩み出せば、入口付近にいた者たちがさっと身を引いて道を空ける。
ジュリアスが外に出て行き、朗々たる美声が響いた。
「今から一時間、俺以外の誰一人としてこの小屋の半径一キロ以内に侵入するな。お前たちがどんなに気配を殺して近づいても俺は全て見破ってやるからそのつもりでいろ。禁を破った者には銃騎士隊名物地獄の特訓百回分を課してやる」
ひえっ、と誰かが呻いた。殺す気か、という声もする。
すると小屋の中、ヴィクトリアの側にいた銃騎士の一人が慌てたように戸口に立ち、話しかけた。
「ちょっと待てジュリアス、見張りはどうするつもりなんだ?」
「俺が一人で見張る」
すかさず集団の中から声が上がった。
「隊長代行だけずるいぞ!」
「横暴だ!」
「職権乱用!」
不満の意を顕にする集団に対し、ジュリアスの一段低くなって冷え切った声が響く。
「異論がある奴は前に出てこい」
バキバキ、と、たぶんジュリアスの手の骨が鳴る音がする。小屋の内部、戸口付近に立っていた何人かの顔が引き攣っているのが見えた。
「上官命令が言葉でわからない奴は身体に直接叩き込むしかないな」
辺りが急に静まり返る。反論者はいなかった。
他の銃騎士たちが皆小屋から出て行っていなくなった後、ため息を吐き出したジュリアスから、言っておきたいことがあると話を切り出された。
「いいか、君は危機感が無いようだからこの際はっきり言わせてもらうが、この九番隊砦に女性はほとんどいない。近くの村から通いで食事を作りに来てくれる年輩の女性が何人かいるだけだ。獣人とはいえこの砦にいるうら若い女性は君だけで、おまけに食事をするだけで男を悶絶させるほどの美女ときている。今、君は飢えた狼共の巣窟にいると思え。身体を綺麗にしたいのはわかるが、確実に覗かれたぞ」
「の、覗き……」
ヴィクトリアは絶句した。
「覗かれるだけで済めばいいがな。あの中の何人かはその先のことまで考えていただろうな。この国の法律が守っているのは人間だけだ。獣人が暴行を受けた事自体が罪に問われることは無い。人間と獣人との性交を禁止する法律はあるが、今やそれは形骸化している。子を成さない限り捕まったり裁かれたりすることはほとんど無い。欲望の捌け口にするには君は格好の相手なんだ」
ヴィクトリアは話を聞きながら固まっている。
「出来るだけのことをすると言った手前、シャワーを浴びるなとは言わないが、俺が見張りの時以外は絶対にシャワーを使うな。必ず俺に一声掛けてから使うんだぞ」
「わ、わかったわ。色々気を配ってくれてありがとう」
ヴィクトリアはジュリアスに心から感謝した。
ヴィクトリアはシャワー近くのカーテンを引き、服を脱いだ。壁際に棚がありタオルが何枚か置かれていたので、その棚に脱いだ服を置く。
壁から突き出た丸い取手を捻ると固定された傘の部分から水が出てくる。手で触るとやや冷たさを感じたが、意を決して身体全体的にシャワーの水を当てる。身体に冷たさが響くが、じきに慣れた。
ヴィクトリアは一度シャワーを止めた。タオルを掴み身体の前面だけ隠すと、カーテンを少しだけ開けて様子を伺う。
外にいると言われたのでジュリアスは小屋の中にはいない。ヴィクトリアはかなり神経を研ぎ澄ませ、集中して匂いを探る。
小屋の周りにはジュリアス以外誰の匂いもしない。ジュリアスは小屋の外で、腕組みをした状態で戸口に背を預けるようにして立っているようだ。彼はずっと小屋から背を向けていて、戸の隙間からこちらを覗くようなこともしていない。
(なんて律儀な人だろう)
少しくらい覗かれるのではと思ったが、完全に杞憂だったようだ。しばらく探ってみてもジュリアスにそんな素振りはない。彼はヴィクトリアの危険を取り払い、自身も規律を守っている。
(とても立派な人だ)
もし彼に婚約者がいなかったら、惚れていたかもしれない。
そう、ジュリアスには婚約者がいる。左手の指輪が気になったので恋人がいるのか尋ねたら、そんな答えが返ってきた。あれほどの美形に相手がいない方がおかしいだろう。
できれば近いうちに結婚したいと考えているそうだ。
ジュリアスは本当に良くしてくれる。わがままを聞いてくれるだけではなく、彼はヴィクトリアの命を助けたいと言ってくれた。死罪にはしないように進言すると言われて、どれほど救われたことか。
ただ、誠意を尽くしてくれるジュリアスには申し訳ないが、それでもやはり奴隷になるのは嫌だった。誰かの所有物として生きていくのは、抵抗がありすぎる。
おそらくジュリアスのことだからちゃんとした人を探してくるような気もしたが、一生側にいる相手――自分の番――は自分で選びたい。
ヴィクトリアは再び取手を捻り、水浴びを再開した。
ヴィクトリアがシャワーを浴びる時は見張りはジュリアスだけになる。鉄格子の柵を開ける鍵を手に入れて、あとはジュリアスさえ何とかすれば逃げられる。
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