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父編

暗黒の微笑み ✤✤

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 ブラッドレイ兄弟の母ロゼは、家族や息子たちの婚約者と夕食を囲んだ団欒の後、眠そうにしていた末の息子レオハルトと、そして最愛の夫アークと共に、今回のお出かけで連泊する部屋へと戻ってきた。

 長男の婚約者フィオナの実家、キャンベル伯爵家所有の別荘には部屋が多くあり、ロゼとアークは海からの眺望も最高で中も広々としている、一等豪華な客室をあてがわれた。

 婚約者のいる息子たちも、それぞれの相手と各々の部屋へ泊まっている。

 本当は、ロゼも自らの伴侶であるアークと二人きりで泊まりたかったが、まだ二歳でママっ子な七男レオハルトが、五男カインと六男シオンの兄弟組の部屋で寝るのではなく母ロゼと一緒に泊まりたいと言い出したため、ロゼは夫と末の息子と三人での部屋割りとなった。

「眠いよママー」

「レオちゃん、きちんと歯磨きをして、トイレも済ませてから寝るのよ」

 海でたくさん遊んでいたレオハルトはいつになく猛烈な睡魔に襲われているようだった。何とか歯磨きをさせてトイレを見守り、船を漕ぎかけているレオハルトを寝台に寝かせると、すぐにスヤスヤと規則正しい寝息が聞こえてきた。

 レオハルトの熟睡を確認し、美形息子の可愛らしい寝顔に癒やされた後―――― 肉欲の炎を宿したロゼの瞳が、キラーンと光を放った。

「アーちゃーーーん♡」

 振り向きざま、ロゼは愛しい男の名を叫び、ソファで寛いでいたアークに飛びかかった。

 晩酌をしていたアークはロゼの襲来を悟り、寸前で酒の入ったグラスや酒瓶が乗るテーブルを魔法で離れた位置に寄せ、ダイブしてきたロゼをすっぽりと腕の中に抱きかかえた。

 息子たちは皆可愛い。七人も子宝に恵まれて幸せではあるのだが、ロゼは娘を持つのが夢だった。ロゼはもうアラフォーであるし、思わぬ妊娠だった長男ジュリアスを除く、次男シリウスを授かった時からの七度目の再々々々々々々挑戦を早々にしたかった。

 ところが、愛する夫アークはそんなに子供はいらんという考えで、子作りには非協力的である。それでも七男まで授かれたのだから、ロゼの涙ぐましい努力の賜物と言える。

 とはいえアークにも性欲がないわけではないので、ヤルことはヤってるが、したくない時の対応は冷ややかだ。

 駄目な時は魔法で見えない壁を作られてしまい、一切の接触不可となって、指を咥えて恨みがましい目で見るロゼを放置し、アークは一人でさっさと無慈悲に寝てしまう。

 ロゼは夫アークや息子たちと違って魔法の力を持っていない。

 アークの魔法を打ち破ることもできず、ロゼは何とかアークがその気になってくれないかと、透明な壁の外側で卑猥な夜着をまとい時には全裸になってクネクネダンスをしてみたり、自慰まで披露することもあったが、ガン無視である。

 酷い。

(でもそこが好き♡)

 元々ロゼはアークのような冷酷無情鬼畜男は好きではなかったが、知り合って以降、彼の色に染められ続け、今では抜け出せないほどにドップリとハマっている。アークは鬼畜なくせに、ロゼには優しくすることも多くそのギャップにメロメロだった。

 アークに飛びかかったロゼは見えない壁にバーンと弾き返されることも覚悟したが、アークが腕の中に受け止めてくれたことで今日はオッケーな日だと確信し、ドキドキする乙女心とムラムラな気分を同時に高めた。

 きっと、広大な海が近くにあることでアークの心も開放的になり、エロエロしても良いかと思っているのだろう。

「あっ、駄目よアーちゃん♡」

 アークの手がロゼのスカートの中に入り込み、ロゼの太ももを撫でさすった後に股間に辿り着き、既にギンギンになって芽を出している陰核をショーツの上から擦り始める。

 ロゼは駄目と言っているが全然駄目ではなく、自分から脚を広げ、股間をアークの指に押し付けてより快楽を貪ろうとする。

「駄目ぇ♡ あぁんんっ♡ イっちゃううぅ~♡」

 アークに純潔を散らされてからもう二十年以上のロゼの身体は、アークとの前戯的な触れ合いでも快感を大吸収して、すぐにイってしまう。

「ああぁぁ……っ♡ あんんっっ♡ はぁぁんっ♡」

 ショーツを脇に寄せ、既に蜜を溢れるほどに湛えていた淫孔の中にアークがいきなり指を二本挿入する。ぬちぬちと中をいじられるとまたすぐに達しそうになる。

 見上げればこんな時でも無表情のアークがいるわけだが、彼の冷血的な灰色の瞳の中に、見る者にしかわからない喜びの色が浮かんでいることに、付き合いの長いロゼは気付く。

「アーちゃん! 好きっ! 世界一好きよ!」

 たまらずロゼが叫ぶと、アークの口元が僅かに上がる。

(かっこええ……♡)

 ロゼはアークを愛しすぎていて、滅多に出現しない彼の微笑みを目撃できて感激しているが、アークの部下たちに言わせれば、「アーク隊長の微笑みを見た日は悲惨なことが起こるぞ」と恐れられている暗黒の微笑みだった。
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