ブラッドレイ家の夏休み ~たわわ義妹の水着姿を見て意気消沈した令嬢は完璧彼氏に岩場で育乳され、次期宗主はセクシー脱衣の罠にも嵌められる、他~

鈴田在可

文字の大きさ
上 下
11 / 20
三男編

昔のノエル

しおりを挟む
 夜の砂浜でたき火をしながら、アテナは隣のノエルに身体を寄せて座り、月光に照らされる遠くの海を見ていた。

 ノエルは灰色の髪と宝石のような碧眼を持つ美少年で、その類稀な天性の美貌を生かしてアテナと同様にモデルをしている。

 ノエルはアテナよりも三学年下ではあるが、時には自分を引っ張って行ってくれる頼もしい面もあって、今はアテナにとっては魂の伴侶とも言うべき、なくてはならない存在だ。

 夕食の後、アテナとノエルは、カインとシオンと一緒に海辺で花火をしていた。

 しかし、五歳のシオンが眠いと言い出したことで花火はお開きになり、カインは寝てしまったシオンを背負って瞬間移動で別荘に帰って行った。

 一番下のレオハルトも海ではしゃいでいた疲れが出たのか、眠そうにしていたので花火には不参加で、夕食後は父アークと母ロゼに連れられて部屋に引き上げて行った。

 ジュリアスとフィオナには大人の事情があるような気がして、彼らからも一緒に花火をしたいと言われなかったこともあり、アテナは無理には誘わなかった。

 四男カップルについても、夕食も部屋で摂るという話で、ずっと部屋に篭もりきりで、昼間に見たきり顔を合わせていない。

「ジュリナリーゼ様、綺麗だったわよねぇ…… 薄紫色と黒で左右の目の色が違うあの神秘的な瞳が開いた瞬間、森の妖精姫が現れたのかと思ったわ。

 でも明日には帰っちゃうのよね。会えるのを楽しみにしていたんだけど、せめて挨拶くらいはしておきたいわ」

「セシもジュリナリーゼ様も忙しくしているようですから、せっかくの夏休みに二人だけで過ごしたいのでしょう。また会える機会もありますよ」

 平常時は丁寧語で話すノエルがそう答える。

「そうよね…… 愛し合っている所に邪魔をするのも野暮よね」

 そうして二人は沈黙した。

 ザザーン、と打ち寄せる波の音だけが鼓膜を揺らし、アテナの胸のときめきも加速する。

「ノエル……」 

 何かを求めるつもりで、たき火の炎に照らされたノエルの美しい顔を見つめていると、ノエルも照れたような顔になった。ノエルは瞳を潤ませてアテナに顔を寄せ、唇にちゅっ、とキスをしてくれる。

(ああ、幸せ♡)

 ノエルはアテナに啄むようなキスを繰り返し、アテナの身体を抱きしめてくれる、のだが…………

「…………ノエル、押し倒してくれないの?」

「……ここではちょっと」

「えっ、いいじゃない夜だし誰もいないし、魔法で見えないようにもできるんでしょう? 私たちもしようよ、青姦」

「な…… 何てこと言ってるんですか」

 絶句しかけるノエルに暴走娘アテナが畳み掛ける。

「だって、ジュリアスお義兄様とフィオナ様、絶対にお外でしてたわよ。二人して結構な時間、不自然にいなくなった時があったじゃない。気が付かなかった?」

 貴族のフィオナとは違って、ブラッドレイ一家は次期宗主ジュリナリーゼと婚約中のセシルも含め、現段階では全員平民だが、ジュリアスの美しさがあまりにも神懸かり的に凄すぎるため、ジュリアスの信奉者同様、アテナも何となくジュリアスを様付けで呼んでいた。

「そうですね…… そんな気はしていましたが、深く考えていませんでしたね」

「そうなの?」

「うちは、母が隙あらば父を襲って部屋に篭もるのが日常でしたので、家族のそういう部分は見て見ぬふりをするというか、皆無意識的にあまり気にしないようにしているんだと思いますよ」

「そうなんだ…… でも、お父さんがお母さんを襲うのではないのね」

「父も母のことは愛していますが、母はそれ以上に父が好きすぎて、父は仕事で長く留守にするような時もありますから、帰ってくると燃え上がってしまうようです」

 ノエルたち兄弟の母、奇跡のアラフォーなロゼは、物語上に出てくるまさに空想通りの天使のような外見をしているのに、中身はかなりの肉食のようだった。

「母は生む子供が全員男ばかりなので、どうしても女の子がほしい部分もあるようです」

「でも、シオン君だって可愛いじゃない…… シオン君を見てると、昔のノエルを思い出すわ」

 その昔…… といってもつい一年くらい前までの話だが、ノエルはシオンと同じように女装癖があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】あなたの『番』は埋葬されました。

月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。 「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」 なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか? 「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」 そうでなければ―――― 「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」 男は、わたしの言葉を強く否定します。 「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」 否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。 「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」 「お断りします」 この男の愛など、わたしは必要としていません。 そう断っても、彼は聞いてくれません。 だから――――実験を、してみることにしました。 一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。 「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」 そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。 「あなたの『番』は埋葬されました」、と。 設定はふわっと。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

[完結]裏切りの学園 〜親友・恋人・教師に葬られた学園マドンナの復讐

青空一夏
恋愛
 高校時代、完璧な優等生であった七瀬凛(ななせ りん)は、親友・恋人・教師による壮絶な裏切りにより、人生を徹底的に破壊された。  彼女の家族は死に追いやられ、彼女自身も冤罪を着せられた挙げ句、刑務所に送られる。 「何もかも失った……」そう思った彼女だったが、獄中である人物の助けを受け、地獄から這い上がる。  数年後、凛は名前も身分も変え、復讐のために社会に舞い戻るのだが…… ※全6話ぐらい。字数は一話あたり4000文字から5000文字です。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

処理中です...