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22 全裸待機芳一 ⬆
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注)
・バイオレンス注意
・性器に関する一部センシティブな発言があります
***
陽が落ち、夜の時間がやって来た。
芳一は和尚の言い付けを守り、ずっと自慰を我慢していた。和尚曰く、数珠を付けている間は数珠からの神気で身体が浄化されるので、催すこともないという話だったが、お小水をしたくならないように夕食も断った。
芳一は全裸のまま一人静かに敷布団の上で正座して、時が過ぎるのを待っていた。
そのうちに、不眠の僧侶が使っている安眠の香の香りがそこはかとなく漂い始めた。
もしかしたら霊たちが来るかもと緊張して全く眠気のなかった芳一だったが、香の影響なのかいつの間にか正座を崩し、敷布団の上に横になって寝入っていた。
「芳一…… 芳一…………」
芳一は自分を呼ぶ声に気付いてはっと目を覚ました。
「芳一……」
「鎧、さん……」
その声は最初に芳一をあの場所へ案内した男の声だった。けれど彼とは初日に会ったきりで、以降はお供を引き連れたお館様が直接迎えに来るばかりであり、ずっと会っていなかった。
彼と交わったのもあの日一回だけで、以降彼はあの淫らな宴の場にも全く現れていないようだった。
気になった芳一はお館様に問いかけてみたこともあったが、「ふふふ、罪作りな男じゃのう、芳一……」と意味深長なことを言われたのみで、男がなぜ来なくなったのかはわからなかった。
寝起きでまだ頭が上手く働かない芳一の元に、ガシャリ、ガシャリ、と鎧を鳴らして男が近付いて来る。
「……経文なんて書いても無駄だ。俺には効かない」
男がここに来たということは、和尚の張った結界を突破してきたということだろう。和尚からはお経を書いておけば悪霊からは見えなくなると言われたが、彼には芳一の姿がバッチリ見えているらしい。
(何ということだろう。まさか結界も経文も効かない悪霊がいるとは……)
驚いて何も言えなくなっている芳一の腕を男が掴んで立たせようとする。
「さあ行こう…… あの方々がお待ちだ」
(あの方々というのはお館様たちのことだ…… 和尚さんの心配通り、やっぱり消滅してなかったんだ……)
「い、行きません!」
芳一は叫んで男の手を振り払った。鎧が鳴り、男がたたらを踏む音がする。
(もう二度と浮気はしない!)
これ以上和尚を悲しませたくなかった。
「僕はもうあんなことしません! 和尚さんと約束したんです!」
芳一の言葉に男はしばし沈黙してからこう言った。
「お前は俺と一緒に墜ちるんだ。お前は慰み者なんだよ。和尚になんて渡さない。だからここにはもう二度と帰らない。お前は俺と一緒に暮らすんだ」
静かだが有無を言わせない圧を感じる声音で言ってから、男が再び芳一の腕を掴んで連れて行こうとする。
「や、やだ!」
芳一は抵抗しようとするが、鍛えているのか芳一よりも男の方が力が強い。芳一は再び叫んだ。
「行かない! 僕は和尚さんと夫夫になるんだから!」
男の動きがピタリと止まった。
「は?」
男の声が極寒を感じさせる程に冷たい。
「なにそれ?」
男は怒っているようだった。しかし芳一は怯まない。
「僕が愛しているのは和尚さんだけです。和尚さん以外の人とは一緒になれない。
もうこれ以上はやめてください。他の人を巻き込んで命を奪うのももう終わりにしてください。
このまま帰って、皆さんに成仏するように伝えてください。もしあなたたちが無事であることを和尚さんが知れば、今度こそあなたたちの魂を滅して二度と生まれ変わりができないようにしてしまうかもしれません。
あなたが今日来たことは黙っておきますから、このまま帰ってください」
芳一の必死な訴えに、芳一の腕を掴んでいた男の手がわなわなと震え出す。
「許さない……! 俺を捨てて一人だけ幸せになるなんて、絶対に許さないからな!」
「い、痛っ!」
男は芳一の両耳を掴むと、ものすごい力で引っ張り始めた。
(痛い! もげる!)
「芳一、今すぐ和尚と別れて二度と会わないと誓えば許してやる!
俺と一緒に来るんだ! でないなら、お前の代わりにこの耳を持ち帰るまでだ!
二度と淫らなことが出来ないようにこの淫乱チンコだって切り落としてやる! 切り取って持ち帰って味噌汁の具にしてやるっ!」
「ひ、ひいいっ!」
芳一は縮み上がって情けない声を上げた。流石にチンコがなくなるのは嫌だ。
「さあ言え芳一! 和尚と別れると言え!」
「あああああっ!」
両耳に激しい痛みが走る。顔の横からぬるりと液体の感触がして、耳の一部が切れて血が流れているようだと知る。
「今なら許してやる! 耳もチンコも取るのはやめてやる! 和尚と別れると言え!」
(痛い…… ものすごく痛い…… だけど、やっと恋仲になれたのに、和尚さんと別れるなんて絶対に嫌だ!)
「耳でもチンコでも持って行けばいい! 僕の心は渡せない!」
「お前ぇぇっ!」
男が激高する。芳一とて黙って耳をくれてやるつもりはない。なんとかやめさせようと男の腕を掴んで抵抗する。
芳一はふと、自分の手の甲にポタポタと何かが滴り落ちてくるのを感じた。
自分の血が垂れているのだろうかと思ったが、そうではない。
「……くぅっ…… ううっ…………」
男が泣いている。
「……どうして、泣いてるの?」
芳一が痛みに耐えながらそう問いかけた瞬間、両耳にこれまでにない激痛が走った。
芳一は絶叫し、意識を失った。
・バイオレンス注意
・性器に関する一部センシティブな発言があります
***
陽が落ち、夜の時間がやって来た。
芳一は和尚の言い付けを守り、ずっと自慰を我慢していた。和尚曰く、数珠を付けている間は数珠からの神気で身体が浄化されるので、催すこともないという話だったが、お小水をしたくならないように夕食も断った。
芳一は全裸のまま一人静かに敷布団の上で正座して、時が過ぎるのを待っていた。
そのうちに、不眠の僧侶が使っている安眠の香の香りがそこはかとなく漂い始めた。
もしかしたら霊たちが来るかもと緊張して全く眠気のなかった芳一だったが、香の影響なのかいつの間にか正座を崩し、敷布団の上に横になって寝入っていた。
「芳一…… 芳一…………」
芳一は自分を呼ぶ声に気付いてはっと目を覚ました。
「芳一……」
「鎧、さん……」
その声は最初に芳一をあの場所へ案内した男の声だった。けれど彼とは初日に会ったきりで、以降はお供を引き連れたお館様が直接迎えに来るばかりであり、ずっと会っていなかった。
彼と交わったのもあの日一回だけで、以降彼はあの淫らな宴の場にも全く現れていないようだった。
気になった芳一はお館様に問いかけてみたこともあったが、「ふふふ、罪作りな男じゃのう、芳一……」と意味深長なことを言われたのみで、男がなぜ来なくなったのかはわからなかった。
寝起きでまだ頭が上手く働かない芳一の元に、ガシャリ、ガシャリ、と鎧を鳴らして男が近付いて来る。
「……経文なんて書いても無駄だ。俺には効かない」
男がここに来たということは、和尚の張った結界を突破してきたということだろう。和尚からはお経を書いておけば悪霊からは見えなくなると言われたが、彼には芳一の姿がバッチリ見えているらしい。
(何ということだろう。まさか結界も経文も効かない悪霊がいるとは……)
驚いて何も言えなくなっている芳一の腕を男が掴んで立たせようとする。
「さあ行こう…… あの方々がお待ちだ」
(あの方々というのはお館様たちのことだ…… 和尚さんの心配通り、やっぱり消滅してなかったんだ……)
「い、行きません!」
芳一は叫んで男の手を振り払った。鎧が鳴り、男がたたらを踏む音がする。
(もう二度と浮気はしない!)
これ以上和尚を悲しませたくなかった。
「僕はもうあんなことしません! 和尚さんと約束したんです!」
芳一の言葉に男はしばし沈黙してからこう言った。
「お前は俺と一緒に墜ちるんだ。お前は慰み者なんだよ。和尚になんて渡さない。だからここにはもう二度と帰らない。お前は俺と一緒に暮らすんだ」
静かだが有無を言わせない圧を感じる声音で言ってから、男が再び芳一の腕を掴んで連れて行こうとする。
「や、やだ!」
芳一は抵抗しようとするが、鍛えているのか芳一よりも男の方が力が強い。芳一は再び叫んだ。
「行かない! 僕は和尚さんと夫夫になるんだから!」
男の動きがピタリと止まった。
「は?」
男の声が極寒を感じさせる程に冷たい。
「なにそれ?」
男は怒っているようだった。しかし芳一は怯まない。
「僕が愛しているのは和尚さんだけです。和尚さん以外の人とは一緒になれない。
もうこれ以上はやめてください。他の人を巻き込んで命を奪うのももう終わりにしてください。
このまま帰って、皆さんに成仏するように伝えてください。もしあなたたちが無事であることを和尚さんが知れば、今度こそあなたたちの魂を滅して二度と生まれ変わりができないようにしてしまうかもしれません。
あなたが今日来たことは黙っておきますから、このまま帰ってください」
芳一の必死な訴えに、芳一の腕を掴んでいた男の手がわなわなと震え出す。
「許さない……! 俺を捨てて一人だけ幸せになるなんて、絶対に許さないからな!」
「い、痛っ!」
男は芳一の両耳を掴むと、ものすごい力で引っ張り始めた。
(痛い! もげる!)
「芳一、今すぐ和尚と別れて二度と会わないと誓えば許してやる!
俺と一緒に来るんだ! でないなら、お前の代わりにこの耳を持ち帰るまでだ!
二度と淫らなことが出来ないようにこの淫乱チンコだって切り落としてやる! 切り取って持ち帰って味噌汁の具にしてやるっ!」
「ひ、ひいいっ!」
芳一は縮み上がって情けない声を上げた。流石にチンコがなくなるのは嫌だ。
「さあ言え芳一! 和尚と別れると言え!」
「あああああっ!」
両耳に激しい痛みが走る。顔の横からぬるりと液体の感触がして、耳の一部が切れて血が流れているようだと知る。
「今なら許してやる! 耳もチンコも取るのはやめてやる! 和尚と別れると言え!」
(痛い…… ものすごく痛い…… だけど、やっと恋仲になれたのに、和尚さんと別れるなんて絶対に嫌だ!)
「耳でもチンコでも持って行けばいい! 僕の心は渡せない!」
「お前ぇぇっ!」
男が激高する。芳一とて黙って耳をくれてやるつもりはない。なんとかやめさせようと男の腕を掴んで抵抗する。
芳一はふと、自分の手の甲にポタポタと何かが滴り落ちてくるのを感じた。
自分の血が垂れているのだろうかと思ったが、そうではない。
「……くぅっ…… ううっ…………」
男が泣いている。
「……どうして、泣いてるの?」
芳一が痛みに耐えながらそう問いかけた瞬間、両耳にこれまでにない激痛が走った。
芳一は絶叫し、意識を失った。
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