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新入社員と上司とウシ
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今から5年くらい前の話。
おれは、当時付き合っていた恋人と居酒屋に来ていた。
店員さんが案内した座席に座り、お酒やおつまみを注文した。
約一ヶ月ぶりのデートなので、話したいことがたくさんある。
お互いアニメが好き同士なので、『おそ松さん』の話で盛り上がった。
◆
それなりにお酒が進み、料理も食べ終わったタイミングで、彼女がお手洗いに行った。
おれはその間、残りのお酒をちびちびと飲みながら、彼女の帰りを待った。
ふと、他の客の話が耳に入った。
この座席からは死角で、姿は見えない。
ただ、話を聞くに、彼らが二人組であるのは間違いない。
「先輩、おれは独立して自分の会社を起こします!」
「おお、その心意気はすごいじゃないか」
「だから、会社辞めようと思ってます!」
「そうか。でも、まだ会社辞めるには早すぎるんじゃないか?」
どうにも、会社を辞めたい若手社員と、それを止めようとする先輩社員という構図っぽい。
おれ自身、かつて同じような経験があるから、話の流れ的にそんな気がした。
「いや、でも!おれ、やりたい事があるんす!」
「うん、起業することは否定はしないよ? けど、もう少し会社で経験を積んでからでも良くないか?」
「いや、でも!今すぐやりたいんす!」
「うん、やりたいことがあるのも分かった。ただ、君はまだ入社して間もないと思うんだ。もうすこし社会経験積んでからでもいいと思うけどなあ」
若手社員の言い分もわかる。若い年齢の『今』だからこそやれることや、やりたいことがあるんだろう。
また、上司の言い分も分かる。せっかく入社したのに辞めるだなんて勿体無いという気持ちが。
だからこそ、二人の会話が食い違って、正解のない謎々が発生してしまっている。
「ごめん、お待たせ。ん? どうかしたの?」
お手洗いから帰ってきた彼女が、おれにそう言った。
聞き耳を立ててるおれの姿が、彼女の瞳に怪しく映ったのかもしれない。
「ううん、いこっか。忘れ物ない?」
「うん、大丈夫」
彼らの話の続きを聞きたかった気持ちを堪えて、店を出た。
◆
5年経った今。
あの若手社員と上司は、まだ社内で働いているのか。
もしくは、独立したんだろうか。
と、たまに思い返す今日であった。
おれは、当時付き合っていた恋人と居酒屋に来ていた。
店員さんが案内した座席に座り、お酒やおつまみを注文した。
約一ヶ月ぶりのデートなので、話したいことがたくさんある。
お互いアニメが好き同士なので、『おそ松さん』の話で盛り上がった。
◆
それなりにお酒が進み、料理も食べ終わったタイミングで、彼女がお手洗いに行った。
おれはその間、残りのお酒をちびちびと飲みながら、彼女の帰りを待った。
ふと、他の客の話が耳に入った。
この座席からは死角で、姿は見えない。
ただ、話を聞くに、彼らが二人組であるのは間違いない。
「先輩、おれは独立して自分の会社を起こします!」
「おお、その心意気はすごいじゃないか」
「だから、会社辞めようと思ってます!」
「そうか。でも、まだ会社辞めるには早すぎるんじゃないか?」
どうにも、会社を辞めたい若手社員と、それを止めようとする先輩社員という構図っぽい。
おれ自身、かつて同じような経験があるから、話の流れ的にそんな気がした。
「いや、でも!おれ、やりたい事があるんす!」
「うん、起業することは否定はしないよ? けど、もう少し会社で経験を積んでからでも良くないか?」
「いや、でも!今すぐやりたいんす!」
「うん、やりたいことがあるのも分かった。ただ、君はまだ入社して間もないと思うんだ。もうすこし社会経験積んでからでもいいと思うけどなあ」
若手社員の言い分もわかる。若い年齢の『今』だからこそやれることや、やりたいことがあるんだろう。
また、上司の言い分も分かる。せっかく入社したのに辞めるだなんて勿体無いという気持ちが。
だからこそ、二人の会話が食い違って、正解のない謎々が発生してしまっている。
「ごめん、お待たせ。ん? どうかしたの?」
お手洗いから帰ってきた彼女が、おれにそう言った。
聞き耳を立ててるおれの姿が、彼女の瞳に怪しく映ったのかもしれない。
「ううん、いこっか。忘れ物ない?」
「うん、大丈夫」
彼らの話の続きを聞きたかった気持ちを堪えて、店を出た。
◆
5年経った今。
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