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真実
庭園にて
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(どうしてこうなったか……なんて、思うのも変な話なのかしら?)
シエラはカーティス王子と共に王宮自慢の庭園を歩いていた。王宮自慢ということもあって、よく整えられた庭だ。センス良く配置されている花の生け垣には規則正しく花が咲き、遠くに見える木々の全体的な形は不均等とは程遠い。
風が心地よく、緑が目に優しい。人の多い場所を苦手とするシエラにとっては最高の場所だ。
隣を歩くのが、カーティス王子でなければ。
「暑くはありませんか?」
「……えぇ、大丈夫ですわ。あの……殿下は王子であらせられるのですから、本当に日傘なんて持たずとも……私が持ちます」
「よいのですよ。そんなことは気になさらないでください」
ぎこちなく訴えても、カーティスは優しく断りを入れる。
(気になさらないでくださいなんて……気にするに決まっているわ)
王子に日傘を持たせるなんてこの国に生まれた者なら皆、萎縮するに決まっている。
「……」
シエラは黙り込むしかなかった。その表情は変わらず無表情。誰もこの表情を見てシエラが困惑しているなどとは思わないだろう。
しかし、何故かカーティスは「申し訳ない」と謝った。
「え……」
突然のことにシエラは驚いて、カーティスの顔を見上げる。
「本当は……庭園へ誘われたあなたが困惑していたことも、少し怒っていたことも知っています」
真摯な視線に晒されて、シエラは目を見開く。
(知っていた?……どうして?私は感情を表に出せないはずじゃ)
「私は……そんなにあからさまな表情をしていたのですか?」
「あ、いいえ。誰がどう見ても平然としているようにしか見えませんでしたよ」
その答えを聞いてほっとする間もなく、シエラの脳裏には新たな疑問が浮かぶ。
(じゃあ、どうして……怒っているなんてわかったのかしら)
そんなシエラの疑問を読み取ったのか、カーティスは日傘を少し傾けて、自らの無表情を指さした。
「私は生まれてからずっと感情が表に出ない性質でした……。それに加えて幼い頃から人に囲まれて生きてきたので、他人の表情が一層鮮やかに見えるのです。僅かな口角と眉の傾き、瞳孔の大きさ……そんなものから他人の感情を読み取るのに長けています」
「……なるほど」
完全に油断していた。王族の誘いに対して怒っていたなど……心象が悪くなって当然だろう。
「ああ、安心してください。あなたが怒るのも当然です。私が強引に誘ったのだから……あなたには怒る権利がある」
「あの……でしたら、なぜ……怒っていると知っていて私を?大切なお話でもおありなのでしたら、夫にお話された方が良いと思いますが」
提案すると、カーティスは僅かに眉間に皺を寄せて頭を振った。
「……ただ、あなたと話をしたかっただけです」
シエラはカーティス王子と共に王宮自慢の庭園を歩いていた。王宮自慢ということもあって、よく整えられた庭だ。センス良く配置されている花の生け垣には規則正しく花が咲き、遠くに見える木々の全体的な形は不均等とは程遠い。
風が心地よく、緑が目に優しい。人の多い場所を苦手とするシエラにとっては最高の場所だ。
隣を歩くのが、カーティス王子でなければ。
「暑くはありませんか?」
「……えぇ、大丈夫ですわ。あの……殿下は王子であらせられるのですから、本当に日傘なんて持たずとも……私が持ちます」
「よいのですよ。そんなことは気になさらないでください」
ぎこちなく訴えても、カーティスは優しく断りを入れる。
(気になさらないでくださいなんて……気にするに決まっているわ)
王子に日傘を持たせるなんてこの国に生まれた者なら皆、萎縮するに決まっている。
「……」
シエラは黙り込むしかなかった。その表情は変わらず無表情。誰もこの表情を見てシエラが困惑しているなどとは思わないだろう。
しかし、何故かカーティスは「申し訳ない」と謝った。
「え……」
突然のことにシエラは驚いて、カーティスの顔を見上げる。
「本当は……庭園へ誘われたあなたが困惑していたことも、少し怒っていたことも知っています」
真摯な視線に晒されて、シエラは目を見開く。
(知っていた?……どうして?私は感情を表に出せないはずじゃ)
「私は……そんなにあからさまな表情をしていたのですか?」
「あ、いいえ。誰がどう見ても平然としているようにしか見えませんでしたよ」
その答えを聞いてほっとする間もなく、シエラの脳裏には新たな疑問が浮かぶ。
(じゃあ、どうして……怒っているなんてわかったのかしら)
そんなシエラの疑問を読み取ったのか、カーティスは日傘を少し傾けて、自らの無表情を指さした。
「私は生まれてからずっと感情が表に出ない性質でした……。それに加えて幼い頃から人に囲まれて生きてきたので、他人の表情が一層鮮やかに見えるのです。僅かな口角と眉の傾き、瞳孔の大きさ……そんなものから他人の感情を読み取るのに長けています」
「……なるほど」
完全に油断していた。王族の誘いに対して怒っていたなど……心象が悪くなって当然だろう。
「ああ、安心してください。あなたが怒るのも当然です。私が強引に誘ったのだから……あなたには怒る権利がある」
「あの……でしたら、なぜ……怒っていると知っていて私を?大切なお話でもおありなのでしたら、夫にお話された方が良いと思いますが」
提案すると、カーティスは僅かに眉間に皺を寄せて頭を振った。
「……ただ、あなたと話をしたかっただけです」
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