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茶会

カーティス王子

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ほんのりと甘い味が舌に広がる。

「幸せそうに食べるわね~」
「だって本当に美味しいのよ。おば様も食べて見て頂戴」
「私はいいわ。この年になってくると甘いものは控えないといけないって医者に言われるのよ」

そんな会話を呑気にしていると、急にサロンの入り口付近がざわめいた。一体何事か。アマリアが様子を見に行こうとしたが、その必要はなかった。皆が皆、騒ぎの原因、つまり入り口から入ってきた背の高い人物──カーティス王子に頭を垂れたからだ。


シエラとアマリアも慌てて頭を垂れる。

「皆、頭を上げて談笑を続けてくれ」


そのように告げられると令嬢達は我先にと頭を上げた。皆、頬を赤く染めている。カーティスはグレイと同様に見目麗しい美丈夫で、かつ誰もが憧れる王子様である。

しかしあまり恋愛や結婚に興味がないのか、こういった令嬢達の集まりにはあまり顔を出さないと聞く。

案の定、カーティスはチラチラと自らに視線を寄越す令嬢達には見向きもせず、母親である王妃と話始める。おそらく茶会に顔を見せたのではなく、母親である王妃に緊急の連絡でもあったのだろう。

シエラはカーティスから早々に目を背けて、まだ気になっている様子のアマリアに話しかけた。

「おば様。そんなにカーティス殿下が気になる?」
「そりゃあねぇ。カーティス様はなかなかこういった場所に顔を出す御方ではないから。誰か気になる方でもいらっしゃるんじゃないかしらと思ってね……でも、あの様子じゃそれはないのかしら」
「きっと王妃様に急ぎ伝えなければならないことがあったんじゃない?」
「……そうね」

シエラは令嬢達がカーティスに夢中になっている間に、菓子を頬張る。王宮の菓子は王宮専門の菓子職人が作っているから、公爵夫人という立場にあってもなかなか食べられるものではない。シエラは1つ1つを吟味しながら、次はどれを食べようか、とそれはそれは熱心に菓子を眺めていた。

「シエラ嬢」
「?」

呼ばれたので振り返ると、そこには無表情のカーティスがいた。

(な、なんでカーティス殿下が私に話しかけるの?)

と、そんな風に思ってハッとする。

そういえば王妃様を除いて、この場にいる令嬢達の中で1番位の高い人間はシエラだ。保護者的な立場にいるアマリアではあるが、身分的には彼女は伯爵となる。王女も今はこの場にいない。そのため公爵夫人であるシエラが王子から挨拶を受けるのは当然の流れだと言えた。

一瞬の動揺を悟られぬよう、シエラは慎重に「カーティス殿下」と呼びかけ、また見事に膝を折って見せる。

視線を合わせると、彼の透けるような緑色の瞳が何か意図的にシエラの瞳を絡め取ったような気がした。
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