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気まずい2人
大雅side
しおりを挟む近「矢神が幸せなら…応援するよ。」
陽斗の家の近く。
そう言っている陽斗の声が聞こえた。
結「じゃあ私……ケホケホ…ケホケホケホケホッ」
近「……矢神?大丈夫か?!」
結「大丈…夫……ケホケホッ。」
俺は結衣のもとへ急いだ。
大「結衣、ゆっくり息をしろ。ほら、吸入器。自分で出来るか?」
俺が結衣に駆け寄りそう言うと結衣はコクリと頷いた。
近「あの…矢神は…」
大「喘息の発作だ。ここまで走ってきたから発作が出たんだろう。…悪かったな。陽斗。心配かけて。こいつは俺が連れて帰るから。」
近「あの…大雅先輩…。結衣のこと…よろしくお願いします!」
大「あぁ。」
俺は“よろしく”の意味が分からなかったがとりあえずそう返事をして結衣をおぶり、家まで帰った。
結「ケホケホッ……」
大「結衣、呼吸しろ。」
呼吸もままならないほど咳き込む結衣。
結「苦しい……ケホケホッケホケホッ」
そう言って涙交じりに俺に訴えた。
大「ベッドに下ろすからな。よいしょっと…今琉兄呼んでくるから待ってて。」
結「待っ……ケホケホッ…て…」
と言いながら俺の服の裾を掴む結衣に対して俺はその手を解くように離すと
大「すぐ戻るから。」
と声をかけ、琉兄を呼びに行った。
琉「点滴をする。大雅、用意してくれるか?」
大「えっ」
琉兄は結衣に酸素チューブをつけながらそう俺に指示をする。
琉「お前はまだ大学に入ったばかりだが、散々勉強してきたんだから分かるだろ。俺がちゃんと確認するから大雅が準備しろ。」
大「分かった!!」
俺は急いで準備をして結衣の部屋に戻ると琉兄に準備したものを手渡す。
琉「またお前は細い針を持ってきたなぁ。」
大「このゲージ数なら点滴は可能だろ?」
琉「甘いな。お前は。まぁいい。今日はこれで行こう。薬も完璧だ。」
大「よっしゃ。」
そして琉兄はすぐに駆血帯を巻き、点滴の準備を始める。
すると結衣は途端に不安そうな顔をし、俺の顔を見上げた。
結「……大雅兄。ケホケホッ」
大「大丈夫だよ、結衣。すぐ終わるから。」
俺はそう呟きながら結衣の頭を撫でた。
そうすると結衣は今にも泣きそうな声で頷く。
それから琉兄は点滴をするとすぐに部屋を出て行った。
一方で俺は結衣がしばらく落ち着くまでそばにいる事にした。
大「大丈夫か?」
結「うん。ねぇ…大雅兄。」
大「ん?」
結「ごめんね。ずっと避けてて…」
ま、避けてたよな。
俺も余裕そうにしてはいたけど正直結構堪えた。
大「お前も…なんか感じるものがあったんだろ?分かってるから。ま、少し寂しかったけど。」
俺がそう応えると結衣は少し微笑んだ。
そしてまた口を開き始めた。
結「ありがとう。ねぇ大雅兄。私さ。」
大「今度はなんだ?」
そう尋ねると今度は真っ直ぐ俺を見て
結「キスしたい。大雅兄と。」
と言った結衣。
大「……ったく。調子がいいな。お前は。」
俺もそんな結衣に口付けを交わした。
どれくらいの時間していたのかわからない。
それは短いようで長いキス。
結衣に直球でキスをしたいと言われて顔が赤くならないわけがない。
そんな顔を見られないように俺はしばらく結衣の口を離さなかった。
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