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気まずい2人
陽斗side
しおりを挟む近「お邪魔します。」
結「どうぞ~!」
結局神崎の家に来てしまった……。
大「なんだ。陽斗来たのか。」
近「お邪魔してます…。」
リビングに通されるとすぐに大雅先輩が声をかけて来た。
結「あ…えと…途中出会って…お買い物付き合ってもらって……」
大「そっか。言ってくれれば荷物くらい持ってやったのに。」
結「だだ、大丈夫!!本当に!!あ、じゃあ私……ご飯作ってくるー!!」
そう言いながらバタバタとキッチンまで行く矢神。
近「あ、俺手伝っ…」
大「ほっとけ。なんか知んねーけど、アイツ俺のこと避けてやがる。」
近「なんで?」
大「何かが気に食わなかったんかな…。あ、陽斗さ、結衣が飯食ってる間俺の部屋にでも来るか?久しぶりだし話でも…」
近「いや、遠慮しておきます。」
大「そっか。」
近「やっぱり俺…矢神…いや、結衣のこと…手伝って来ます!」
なんか気に食わなかった。
この人が結衣の好きな人。
なんで俺はこの人に敵わないのだろう。
兄貴の言っていた「アイツには敵わないからやめとけ。」の意味がわからない。
荷物持つって言うくらいなら目を離さないでついていけばいいのに。
自分の部屋に行くくらいなら手伝えばいいのに。
そんなモヤモヤさえあった。
俺はそそくさと矢神がいるキッチンへと行った。
近「なにか手伝うことある?」
結「ありがとう!じゃあ…この麺茹でてくれるかな。」
近「分かった。」
俺にそう言うとトントンとリズムよく食材を切っていく矢神。
本当に料理得意なんだな、とその横顔に少し見惚れてしまう俺。
結「あっ!」
近「ん?」
結「ううん!ごめん!餃子、そろそろ焼けたかなぁって…」
そんな事を言いながら手を洗いフライパンの蓋を持ち上げ様子を見ている矢神。
冷やし中華を作りながら更に餃子、春巻き、作り置きのナスの揚げ浸しを用意し、さらに瑛斗くんにはサラダまだ用意している。
本当に矢神はすごい。
そう感心させられていると少し怒った表情の大雅先輩がキッチンにやってきた。
大「結衣、手見せてみろ。」
結「……え?」
大「左手。早く。」
結「なんでよ。」
大「指切ったんだろ。消毒してやるから早く手出せ。」
そう大雅先輩が矢神に言っているのをみて、俺は初めて矢神の指から血が出ていることに気づいた。
近「え!本当だ。血が出てるじゃん。」
結「大丈夫!大丈夫!これくらい!」
大「大丈夫じゃない。早く手出せ。大人しく消毒されてろ。」
結「大丈夫だって!」
大「あーもう。…陽斗、結衣が動かないように左手しっかり抑えててくれ。」
そう言いながら矢神を椅子に座らせ、左手を持つように俺に指示すると矢神の指を消毒し始めた。
結「痛い…離してーっやだー!」
そう言いながら泣き始める矢神。
大「すぐ終わるから。」
結「バカバカ!大雅兄のバカ!!」
大「バカでもなんでもいいから……ほら、終わったぞ。」
大雅先輩がそう言うとグスンと体を丸めて泣いている矢神。
大「もうあと盛り付けだけだろ?俺やるからお前そこ座っとけ。」
結「……。」
泣いている矢神とさっさとお昼をテーブルに並べていく大雅先輩。
俺は全然気付かなかった。
それに気付いたところであそこまで心を鬼にしてまで手当てしてあげられるだろうか。
兄貴が言っていた事が少しだけ分かってしまった気がする。
分かりたくもなかった。
俺だって……矢神のこともっと好きになってしまったから。
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