4人の王子に囲まれて

*YUA*

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すれ違い

大雅side

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結衣が花火大会の件で必死に訴えて来た。

あんなに真剣そうな顔を見るのははじめてだ。

どうにか行かせてやりたい。


……でも。

花火大会ともなると…煙やらで喘息を持っている結衣はかなりしんどい思いをするだろう。







だいぶ前…俺が小学生の頃。

花火が見てみたいと駄々をこねた俺を花火大会に連れて行ってくれた琉兄。


その時の俺は今の結衣くらい酷い喘息持ちだった。

だから耐えられなかったんだ。


咳が止まらなくなる苦しさ。


あの時のような思いを結衣にはしてほしくない。


琉兄だってあの時の俺をみているからここまで反対するんだ。


分かって欲しい。


でも結衣は今にも泣きそうな顔をしている。

するとその場の空気を少しでも変えようとした太陽くんが言葉を発した。


太「そろそろ点滴も終わるから…終わったら帰ろう。俺、送るよ。」

大「あ、俺バイク取りに行かなきゃだ。」

結「……。」

俺もそれに便乗して話してみるけど結衣はずっと下を向いていた。



太「どこまで取りに行くの?」

大「駅の近くって言ってたな…。」

太「んじゃ駅まで送るわ。」

大「やった!ありがとう!」

太「おう!」


シンとしたこの空気をどうにかしようと今話せる最大限の言葉を発してみても結衣の表情は曇ったままだ。

たしかにそんなすぐに機嫌は治らないにしても…

大「……。」

太「……。」

空気が重たすぎる。


結衣は下を向いたままピクリとも動く様子がない。


太「結衣ちゃん…。琉生もさ、言い方悪いよな!あんな言い方されたら誰だって……」

太陽くんがそう言いかけた瞬間結衣はポタリと涙を流し始めた。


今まで結衣は泣き虫だと思っていたが…

花火大会を反対されて泣くとは誰も思っていなかっただろう。


今、結衣はどんな気持ちなんだろう。

どんな気持ちで泣いているんだろう。


俺には理解し難い。



太「結衣ちゃん!大丈夫だよ!泣かないで!泣いたらまた辛くなっちゃうよ?」

結「グスン…。」

大「結衣…俺らだって結衣に辛い思いはしてほしくないんだよ。分かってくれよ…。」

結「…。」


俺がそう言っても結衣は頷くどころか下を向いたまま動かない。

太「よし。点滴も終わったし、針抜くね。じゃあ俺、着替えて迎えに来るから大雅、結衣ちゃんに着いててあげてくれ。」

大「うん…分かった。」


俺がそう返事をすると太陽くんは行ってしまった。

泣いている結衣と2人きり。


なんで声をかけたらいいか分からない。


すると結衣がベッドから立ち上がり言った。


結「顔洗ってくる。」

大「え?あぁ…。分かった。」

暗い声でそう言う結衣に俺はそう返事をした。








それからしばらくして太陽くんが戻って来た。

太「あれ?結衣ちゃんは?」

大「顔を洗いに行くって言ったまま…。おせぇな。あいつ。」

しばらくその部屋で待ってみていても結衣が戻ってくる気配はなかった。



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