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命に代えても守る
琉生side
しおりを挟む事故から10日が経ったある日のこと。
病院から結衣が居なくなった。
抜かれたまま放置されていた点滴。
大雅の横にもお手洗いにもいない。
俺は秀や瑛斗、太陽、榊に声をかけて結衣を探し回った。
院内は探したがいる様子はなく、多分院外に出たと思われる。
太「琉生!結衣ちゃんいた?」
琉「いや…ったく。あいつどこ行ったんだよ……」
太「まぁまぁ。あんなことがあったんだ…。それに今の結衣ちゃんの気持ちは1番お前がわかってるんじゃないのか?」
……たしかに太陽の言う通りだ。
あの時の傷は何年も経った今でも癒えることはない。
2時間ほど探し回った時太陽に1本の電話がかかってきた。
太「もしもし。陽斗か?あとで掛け直……え!?結衣ちゃんが!?うん…分かった。そのまま捕まえておいてくれ!」
電話の相手は弟の陽斗からだった。
どうやら下校途中に裸足で彷徨っている結衣を見かけたらしく、今は家で匿っているとのことだ。
俺らはとりあえず連絡を取り合い、太陽の実家へと向かった。
太陽の実家に着くとすでに秀、瑛斗、榊は先に到着していた。
太「結衣ちゃん!!心配したんだよ。」
結「ごめんなさい…。」
結衣は膝を抱えるようにして丸くなってボソリと呟いた。
裸足で歩いていたからか、足は傷だらけで、何日も眠れず、食べられずの生活で痩せ細り、目の下にはクマが酷い。
そして何で切ったか分からない傷が手首にたくさんついていた。
琉「なんでこんな事をしたんだ。」
俺がそう聞くと何も聞かないようにと俺の肩にポンと手を置き、首を振る秀。
でも結衣は口を開いた。
結「全部…私がいけなかった…。」
声は震えていて、本当に自分を責めている様子。
秀「何がそんなにいけなかったと思うの?」
秀は優しく結衣に尋ねた。
結「男の子…車に轢かれそうで…私が助けようとしたから……。私があの時でしゃばらなければ大雅兄は……っ」
瑛「でもそのおかげで結衣とその男の子は助かったんだろ?」
榊「彼は…貴女を命に代えても守ると仰っていた。それは誰のせいでもない…。ただただ貴女を想う彼の気持ちそのものだと思うのです。」
みんながそう言うと結衣は思い切り首を振った。
結「違う……っ。大雅兄じゃなくて私だったら良かったのに…。私が死ねば良かったんだ……っ!!」
もう訳がわからなくなるほど泣きながらそう叫ぶ結衣。
結「出会わなきゃ良かった……。今回だけじゃない。私…大雅兄をたくさん傷つけた。私のせいで…たくさんたくさん大雅兄に迷惑かけたり…怪我させたり…。私なんか大雅兄と出会わなきゃ良かったんだ!!」
結衣がそう言った瞬間俺の中で何かがプチンと弾けた。
そして気付くと俺は結衣の頬を思い切り叩いていた。
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