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優しさ
瑛斗side
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結「瑛斗兄ご飯できたよ。」
とある寒い日の夜、帰宅してすぐ部屋に閉じこもっていると結衣がそう言ってきた。
瑛「あーー今日俺飯いいや。」
ドア越しにそう伝えると、結衣はドアを開けて部屋に入ってきた。
結「瑛斗兄…どうしたの?具合でも悪いの?」
心配そうに俺の顔を覗いてくる部屋着にエプロンをつけた姿の結衣。
俺はなんとなく意地悪をしたくなった。
瑛「何?心配してくれてんの?」
結「当たり前だよ!」
瑛「ふーん。でも…そう簡単に男の部屋には入らない方がいいんじゃないかな?」
結「あ…ごめん。配慮が欠けてたよね。次から気をつけるね。」
瑛「そうじゃなくてさ…」
俺は結衣をベッドに押し倒した。
瑛「女のお前は男の力には敵わない。」
俺は真っ直ぐ結衣を見てそう言う。
結衣は少し頬を赤らめ、握っている手は熱い気がした。
結「次の台本の練習?」
瑛「え?」
結「瑛斗兄ドラマ出るんだよね!」
…本当にこいつは。
瑛「はぁ……。しらけた。」
結「えっ。ごめんね!私演技とかそーゆーの分からなくて…」
俺が退くと申し訳なさそうにそう言う結衣。
そーゆーことじゃねーんだけど…
瑛「お前はこーゆーシチュエーションでドキドキとかしないわけ?」
結「んー…かっこよかったよ?」
鈍感なのか…抜けてんだか…
俺が聞きたいのはそーゆーことではないんだが…。
そもそもこいつがこの家に慣れてきたのはいいが、男4人と住んでるのに無防備にも程がある。
俺らとは血が繋がっている訳じゃないのに信用しすぎなんじゃねーのか?
…ん?
でも俺に対して無反応なくせになんでこんなにずっと頬を赤らめてるんだ?
…もしかして。
瑛「ちょっとごめんな。」
俺は結衣の額に手を当てた。
やっぱり…。熱い。
なんでこいつはこんなに体が弱いんだ?
結「あ…この事は誰にも言わないでっ!」
瑛「……でも。」
結「さっきインフルエンザの注射したの。多分その副作用だから…。」
瑛「あれって副作用とかあんの?」
結「あるよ!注射したとこ腫れちゃうし、お熱も出るし、喘息だって出やすくなるし……」
体が弱いやつは弱いなりに色々あんだな。
瑛「とりあえず、お前部屋行って休んでろよ。冷やすの持って行ってやるから。」
結「ごめんなさい。」
結衣は謝って自室へと行った。
何も謝る事じゃねーのに。
昔から俺はモテていた。
親が金持ちだとか、カッコいいだとか…
なのに俺が少しでも毒を吐くとみんないなくなってしまう。
大抵の人は見える部分が好きなだけで本当の俺を好きになってくれるやつなんかいないんだ。
見た目に騙され、地位に騙され、お金に騙され…
だから女が嫌いだった。
でもこいつは違った。
俺がどんなにきつく当たっても俺のこと優しいとか言うし…
一方的に何かを言っても怖がらずに向き合ってくれる。
……そして笑ってくれる。
でも俺はこんなにモデルや俳優として活躍して、注目を浴びるほどなのに…こいつは心を揺るがそうともしない。
本当に訳の分からないやつだ。
妹が出来るって聞いて正直不安だった。
何処の馬の骨かもわからねぇのにって。
でも決めつけていたのは俺自身だった。
妹になったのがこいつで本当に良かった。
改めて俺はそう思った。
瑛「さーてと。冷やすものでも持っていきますか。」
俺は1階まで階段を降りて行った。
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