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優しさ
結衣side
しおりを挟む目が覚めると横に大雅兄がベッドサイドの丸椅子に座り手を握ったまま眠っていた。
びっくりして体を起こすと
大「ん…結衣起きたの?」
結「大雅兄大丈夫?」
大「あれ?俺いつの間にか寝ちゃって……」
そんな寝起きで少しだけいつもより高めの声になっている大雅兄をみて胸を締め付けられた。
結「大雅兄怪我は?」
大「俺は大丈夫だよ。結衣は?」
結「私も…大丈夫!大雅兄が無事でよかった…。」
大「お前はバカだよな。俺なんかのためにあんなに一生懸命……」
結「あたりまえだよ!!」
……そんなのあたりまえだよ。
結「だって……大雅兄は……私のお兄ちゃんだもん。」
…そう。お兄ちゃん。
……お兄ちゃん。
………ちゃんと分かってるつもり。
なんでこんな叶わない恋をしてしまったんだろう。
好きだから助けただなんて死んでも言えない。
大「そっか……だよな!!ありがとな!助けてくれて。」
大雅兄は少し寂しそうにそう言った。
それからしばらくして夕飯を食べ終えたあたりで秀兄が病室に来た。
秀「2人とも少し話いいか?」
結「う、うん。」
大「なんだ?」
秀「兄貴から聞いたかもしれないけど…今回の件で西条が退学になった。」
結「え……」
大「当然だろうな。」
結「え……で、でも!!」
退学だなんて……
たしかにやったことはよくないことだけど…
大「でもなんだよ……お前も俺もどんだけあいつに傷つけられたと思ってるんだよ。」
結「だけど……」
大「お前な…そんな同情しても何にもなんねーぞ。それに…また傷つけられるかもしれない。」
…そうだ。
大雅兄の言ってることは間違えていない。
でも何か引っかかるんだ。
彼女の中に潜む黒く醜い感情は何か意味があるんじゃないかと。
でもたしかに大雅兄を傷つけたことは許せない。
あの人は大雅兄が好きだったんだ。
だとすればいくら私のせいだとしても好きな人を傷つけるのは間違っている。
そこまでして私と大雅兄を引き離そうとしたのはどうしてだろう。
私の頭の中はとてもモヤモヤしていた。
このまま彼女はもう大雅兄と会うことはないだろう。
たとえ両思いじゃないとしても…
このまま想いをぶつける事もできず、忘れられた存在になるなんて…
そんなの辛い。
私は考え込んでいた。
大「……結衣?大丈夫か?」
結「え?」
秀「やっぱりもう一度調べてもらった方がいいんじゃ……」
結「大丈夫!!少し考え事!!」
大「退学なのがそんなに気にくわねぇのか?」
結「気に食わないと言うか…大雅兄の事好きなだけなのにそれを誰にも伝えられなくて…振ってすらもらえなくて…ただ私たちの中で忘れられていくだけだなんて…きっと辛いだろうなって。」
私がそう伝えると…
大「全く。お前は…お節介にも程があるな。」
と困ったような笑顔でそう言ったのだった。
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