23 / 202
琉生お兄ちゃんの過去。
琉生side
しおりを挟む体調悪くて仕事を休んだ。
今の仕事を始めてから自分の体調で休んだのは初めてだ。
琉「はぁ…何してんだろ、俺。情けない。」
そう言えば結衣のやつ…
前に聴診した時気になった。
喘息っぽい感じの音がしてたけどそれ以降何もないし、きっと色々あったから体調も良くなかっただけかな。
そんな事を考えながら横になっていた。
すると
結「ただいま~。」
大「ただいま。雨やべえ。」
2人が帰ってくる音が聞こえた。
今日は割と早かったんだな。
予報では晴れになっていたから傘を持って居ないだろうと思いタオルを持って行った。
大「えっ。この時間に家にいるの珍しくね?今日休み?」
琉「あぁ…ちょっとな。」
2人に体調悪いだなんて言ったら心配するだろうから俺は少し話を濁し、部屋に戻った。
それから何時間経ったのだろうか。
俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
眠っている俺のおでこに冷たいタオルが置かれたのに気付き、俺は目を覚ました。
そこには1人の女性がいた。
琉「……未結?」
結「あ、ごめんなさい。声かけたけど…返事がなかったから勝手に入ってしまって……」
そこにいたのは結衣だった。
なんで未結だなんて名前が出てきたんだろう。
熱にうなされて夢でも見ていたのだろうか。
でも、結衣の優しい目元はなんとなく未結に似ている。
琉「何をしている。移るから出て行け。」
結「あ、ごめんなさい。すごく熱が高そうだったから…心配で。お食事ここに置いておきますね。あとでまた食器取りに来るので…あ、あと食欲無かったら残して良いですから。」
それだけ言うと部屋を出て行った。
琉「蟹雑炊と蜂蜜レモンのゼリー……か。」
食欲は無いが少しでも食べて薬飲まなきゃな。
琉「いただきます。………うまい。」
本当に結衣は料理上手だ。
最近大雅や瑛斗がなんとなく結衣を慕っているとは分かっていたが、俺は仕事も忙しいし、そこまで関わるつもりはなかった。
俺は、関わっていいような人間では無い。
でも彼女は本当に気遣いが良くできる。
我慢強くて、でも弱くて、心の優しい女の子。
俺は食べ終わって薬を飲むと眠ってしまっていた。
そしてあの頃の夢を見た。
俺と未結が出会ったのは俺たちが高校生だった頃。
未結は無口であまり友達を作らない俺とは違いいつも笑顔で元気で常に周りに友達がいるような子だった。
俺にも積極的に話しかけてくれていつしか俺らはお互いが特別な関係になっていた。
付き合いだした俺らは同じ夢を持ち、同じ医大に通ってそれなりに仲良くやっていたが、いつからか、未結は体調をよく崩すようになった。
急に熱を出したり、吐いてしまったり、お腹が痛いと言っていたり……
それでも彼女は俺と会う時はいつも笑顔で元気だった。
だから気付かなかったんだ。
本当は彼女が体調は精神的なことからきていると言うことに。
最後、彼女はたしかに助けを求めようとしていた。
あの交差点で。
あの日渡ろうとしていた横断歩道が青になり、俺が真ん中あたりまで渡った時未結は俺に声をかけた。
未「琉生、あのね……」
琉「どうした?」
彼女は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
未「私……」
琉「未結、危ない!!」
バン!!!!
未結は俺の目の前で車に跳ねられた。
俺は…医大に通っていたのにも関わらず頭が真っ白になり動けなかった。
どんどんと地面に流れゆく血液。
俺はただ立ちすくむ事しかできなかった。
事故の原因は飲酒運転。
俺がもっとはやく彼女の心の傷に気付いてあげられていたら…
俺があの時手を繋いで歩いていたら……
すぐに救急車を呼んで出来る限りの処置をしていたら……
亡くならなかった命かもしれない。
彼女は本当に我慢強く、頑張り屋で、明るくて……本当に優しい子だった。
そんな子を守れなかったんだ、俺は。
俺はあの日のことを一生悔やんで生きていくんだ。
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