上 下
13 / 28

買い物

しおりを挟む
「マスター!此処が俗に言う商店街なのですね!」

そう言ってアイはルンルン♪と声が出そうなスキップをしながら進んでいった。

『みずみずしい野菜が売ってある八百屋!女性たちをターゲットにした化粧品のお店!どれも前マスターが言っていた通りです!』
「へー」

前のマスターはどうやらアイに、この世界のことなどを教えていたようだった。
アイのキラキラした目を見た限り、とても楽しい会話をしていたのだろう。

『しかし、前マスターの話とは違う所もありますね』
「へーどんな所が?」

僕の村の商店街はこの国の基本的な型だ。
一本道に沿うようにして店が構えられている型だ。
もし、文化が違うならそこの違いでもしかしたら前マスターについて知ることが出来るかもしれない。

『向かいのお店同士で殴り合いをしないのですね!』
「はっ?」
『その他にも、空には空飛ぶ円盤やドラゴン、お客同士の血みどろの戦いもありませんね!』
「……」

ガッツリ騙されている⁉︎
前マスターは何故、そんな無意味な嘘を⁉︎

『それではマスター!早速、洋服屋に向かいましょう!』
「……そうだった!」

今日は、アイの服を買う為に商店街に来たんだった!お金は祖母がくれた、結構な額を貰ったのだが、これでも女性のおめかしだと少ない方らしく。
女性の美に対する熱意がひしひしと伝わってくる。

「え~と……確か……前から三つ目のお店が」

僕は引っ越す前の記憶から、お店の場所わ思い出そうとした。

『マスター……お店の看板で分かりますよ?』
「あっはい」

あっさりアイに止められてた。

『マスター……ボケてきました』
「12億年いれば流石にね」
『哀れなマスター……体は15、頭脳は12億、その名は!』
「やめてアイやめて」
『了解しました』

なんだかこのままでは危ない気がしたので慌てて止める。

「あった!」

その後、直ぐにお店を見つめた“衣服店コトブキ”と看板には書かれていた。

『ここがあの“衣服店”!』
「アイの気迫が凄い!」

まるでこれから戦いが始まるようだ!

『それではマスター!let's goです!』
「なにその言葉⁉︎」

また知らない言葉を言ってるし!

『たのもー!』

そう言ってアイは入っていった。

「ん?どうしたんだい?」

中には眼鏡をかけた老女がカウンターで新聞を読んでいた。

『女性用の服を買いにきました!』
「元気が良いねぇ。女性用の服は右側の所にかけてあるよ」
『わかりました!ありがとうございます』

ペコリとアイは頭を下げて、女性の服コーナーに行った。
……僕も行った方が良いのだろうか?
なんだか気恥ずかしい。

「おや?アークの坊主かい?」
「え?」

カウンターにいた老女はゆっくりとこちらに顔をむける。

「ほほ……やっぱりそうだ。大きくなったねぇ」

そう言って優しく微笑んだ。

「どうして僕の名前を?」
「お客さんの名前を覚えるなんて簡単なことだよ」
「そうなんですか……全く来てないのに」
「ほほ……歳を取ると子どもの名前なんて簡単に覚えるんだよ」
「そうなんですね。ちょっと恥ずかしいな」
「気にしなさんな……お前さんも歳を取るとわかるさ……ところで」
「?」

そう言って老女はアイを見る。

「あそこに居るのはお前さんの彼女かい?えらいめんこいねぇ」
「‼︎いや!違いますよ‼︎」
「ほほ……そうかいそうかい」

嗚呼……楽しそうに微笑んでる。
絶対勘違いされた!

『マスター大変です!何が良いのかわかりません!』

そう言ってアイはこちらに来た。

「う~ん……そうは言ってもなぁ……僕もファッションとかわからないし……どんなのが良いですかね?」

僕は思わず老女さんに聞いてしまった。
衣服店だし、最近のファッションとかを知っていると思っていたからだ。

「わたしゃ知らないよ」
「そんな……」
「アークの坊主……お前さんはこの子に何を着て欲しい……」
「えっ?」
「このめんこい子に何を着て欲しいんだい?」
「えっと……」
「それをこの子に着てもらえば良え」
『あっそれ良いですね!マスター!私のファッションセンスは貴方の手にかかっています!』

重い!責任があまりにも!

「女性の服コーナー何だか行くの恥ずかしいなぁ……」
『ではマスター頑張ってくださいね!』
「全く聞いてない!」

駄目だこりゃ!やるしかない!

ーーーアイside

「アークの坊主は勘が鈍いねぇ」
『‼︎』

マスターが女性の服のコーナーに行った時に、この店の店長は面白そうに言った。

『ななナナnanana なんのことですかね⁉︎私にはさっぱり!』
「ふふ……無理がある無理がある。あんなに熱心に花柄のワンピースをじっと見てただろうに……」
『ぐぬぬ……!』

そう言って笑う店長はとても楽しそうだった。

「乙女だねぇ」
『いや……本当に……』
「頑張りなさい」
『あ~もう……はい!』
「ふふ……それでいいそれでいい」

プシュー……

私の顔は湯気が出そうな熱くなった。

ーアークside

どうしよう!わからん!
どれがアイが喜ぶんだ!
全くわからないぞ⁉︎
僕は女性の服のコーナーを行ったり来たりしながら考える。
はっきり言って自分のセンスには自信がない。

「う~ん……」

老女は「アイに似合うのを選べ」と言っていたけど……。
選んだ物が悪く、それで嫌われたくないなぁ。

「う~……」

僕はゾンビの如く辺りを徘徊する。

「やっぱり……これかなぁ……」

ずっと気になっている一品があった。
けどなぁ……これで良いのかな。

「はぁ」

だけど似合うと思うし。

「これで行くか」

僕はアイたちの元に戻った。

「あれ?アイどうしたの?」

戻るとアイの顔がとても赤かった。

『あ!マスター!これはその平気なやつです!』
「兵器なやつ⁉︎」
『同音異議‼︎しっかり識別してください!』
「ごめん!」
「それで……決まったのかい?」

老女はそう言って、僕が持ってきた物を見る。

「僕はこれが似合うと思ったんだけど」
『あっマスターこれって』
「えっダメだった⁉︎」
『いえいえ!そんなこと無いですよ!』
「嘘だ⁉︎絶対ダメなやつだ‼︎」
「これアークの坊主……女の子の言うことは信じるもんだよ」
「うっ!」

そう言われると、何とも言えない!
けど怖いなぁ!

『えっとお値段は……』

お財布を取り出して、アイは金額を確認するが。

「それは確か……あんまり高く無いし無料で良いや」
「『えっ』」

あまりのことに耳を疑う。

「だからタダでいいよ」
「それは流石に」
『はい!それはまずいですよ!』
「ならそうだね……お嬢ちゃん、ちょっと耳を貸しな」
『えっ?はい』

僕の聞こえない声でコショコショと話が進んでいく。
何なの!凄い気になるんだけど⁉︎

『えっ……それだけで良いのですか?』
「いいよ。それで」
『だけど』
「頑張るんだろう?」
『‼︎』
「わかったかい?」
『はい‼︎ありがとうございます!』

最後は大きい声でお礼をするアイ。

『行きますよ!マスター!』
「えっ⁉︎アイ⁉︎」

アイは僕の手を引っ張ってお店を出る。

『はやく家に帰りましょう!』
「対価は⁉︎」
『はい!何でも!“着替えてマスターからの感想を聞け”との事でした!』
「これまた責任重大!」
『そうでしょマスター!だからはやく着ましょう!』

そう言ってアイは僕が持っている服を見る。

『その花柄のワンピースを!』













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

浮気中の婚約者が私には塩対応なので塩対応返しすることにした

今川幸乃
恋愛
スターリッジ王国の貴族学園に通うリアナにはクリフというスポーツ万能の婚約者がいた。 リアナはクリフのことが好きで彼のために料理を作ったり勉強を教えたりと様々な親切をするが、クリフは当然の顔をしているだけで、まともに感謝もしない。 しかも彼はエルマという他の女子と仲良くしている。 もやもやが募るもののリアナはその気持ちをどうしていいか分からなかった。 そんな時、クリフが放課後もエルマとこっそり二人で会っていたことが分かる。 それを知ったリアナはこれまでクリフが自分にしていたように塩対応しようと決意した。 少しの間クリフはリアナと楽しく過ごそうとするが、やがて試験や宿題など様々な問題が起こる。 そこでようやくクリフは自分がいかにリアナに助けられていたかを実感するが、その時にはすでに遅かった。 ※4/15日分の更新は抜けていた8話目「浮気」の更新にします。話の流れに差し障りが出てしまい申し訳ありません。

処理中です...