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僕は行く

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「そうかそうか」

僕がこの学校を辞めると言った瞬間、校長先生は嬉しそうに目を細めた。

「君がそうしたいならそうするべきだ……頑張りなさい。私は君の門出を祝福しよう」
「ありがとうございます」
「おっと……そうだそうだ」

そう言って、校長先生は懐から手紙を取り出した。

「もし、何かあったら此処に訪ねてみなさい。きっと助けになってくれる」
「あっありがとうございます」

僕はお礼を言ってその手紙を受け取る。

「校長先生は何故僕に此処までやってくれるのですか?」

あまりに不思議だったので聞いてみる。

「ふふふ」

すると校長先生は嬉しそうに笑った。

「君は君が思っている以上に魅力が溢れている。それは沢山の人が持ってる。けど……沢山の人がそれを持ち続けられない、何処かで降ろしてしまう。君はきっと最後までそれを捨てない」
「それとは?」
「な~に、自分がわからないのも魅力の内さ。周りの人はそれに気づくさ」
「??」

僕は分からず首を傾げる。

『なるほど確かにマスターはそこが良いですね。尊いです』
「アイ?」

アイは納得した様にウンウンと頷いているけど僕には一体何のことだかわからない。

「まぁ頑張りなさいな。君もいづれはわかるかも知れないしね」
「はい!ありがとうございます!」

僕がそう返事をする。

「ふふふ。いい返事だね」

僕が返事をして離れて行った時、そう言って校長先生は掃き掃除を再開した。

ーーー

不思議な少年だった。
私はふと彼らが走って行った所を見る。
彼らの姿はもう見えず、他の歩行者が談笑をしながら歩いていた。

「あんな子が“別次元”に行くなんて……お前にわかるか?」

そう言って私は空を見上げる。
かつての景色と変わらず空は青い。

「さてと……この体の主を起こそう。仕事はさせるが……」

そう言い、私はこの体の主に催眠術をかける。
少年の羽ばたきにはしっかりと処理しないといけないからな。

「あれ?ワシはいったい何を?」

老人は顎に手を添えて今までの事を思い出そうとすり。

「そうじゃ!アーク君の退学の手続きをやっておかねば」

早速効果が出たのかそう言い、老人は慌てて学校内に戻っていった。
私はそれを遠くから見る。

「さてと……やる事もやったし……他の仕事もせんとな」

そう言い私は空間を飛ぶ、そこには白い塔が天を突き刺す槍の様に伸びている街だった。
いや、街の規模では無かった。
それはもはや一つの国の様にも見える。

「少年少女の羽ばたきに祝福を!」

そう言って私は溶ける様に姿を消した。

ーーー

「それでマスター次にやる事は?」
「それなんだけど……」

僕は少し恥ずかしくて、頬を掻く。

「アイの服を買わないといけないでしょ。僕は寮から後で取りに行かないといけないけど、アイは別次元にいたからその一着しかないんだよね」

その一着も、僕がよく分からなかったから白い服というシンプルな物だ。

『私はあまり気にしませんよ?』
「それは駄目‼︎」
『ふぇ?』

僕の反対の声にアイから変な声が出る。

「アイは美人なんだから綺麗な服とか、やっぱりプロの仕立て屋さんの服の方が僕みたいな素人が作った奴より良いと思うんだ‼︎」
『いいえマスター!この服はマスターが初めて私に作った物です!世界が滅んでもこれを着ます!』
「世界を引き合いに出さないで⁉︎」

急にアイが反論してきた、しかも結構恥ずかしい事を言ってるし‼︎

『マスターの方が恥ずかしい事を言ってます!』
「⁉︎僕の心を読んだ⁉︎」
『読んでますん‼︎』
「どっち⁉︎」

そんな分かりにくいボケを入れてくるのか‼︎やはり別次元にいた時より高性能になってる‼︎

『ていうかマスター』
「急に素になるねアイは」
『服買う資金あるんですか?』
「…………………………………あっ」

アイに指摘されて今気づく、

「無いや」

僕は魔法が使えなくなってから奨学金が少なくなり、食料代に全て消えるほどの金額にしかならなかったんだ。

『ですよね』

アイは僕がお金を持っていない事がわかっていたのか、フゥーーと息を吐く。

「お金が貯まったら服を買いに行こう……あっ‼︎」

僕はある事を思い出して手をポンと叩く。

『どうかしましたかマスター?壊れましたか?」
「違うよ!確か……家にだったら服があったと思う」
『家?誰のですか?』
「僕の」
『マスターの?』
「うん。アイには悪いんだけど出来れば僕の故郷にいかない?そこにはアイが着れそうな服があったと思う」
『私は構いませんよ。マスターの自由です』
「じゃあアイ、明日には取り調べとかも終わるだろうし。僕の故郷に行く準備をしようか?」
『YES My lord』
「だからそのカッコいいのナニ⁉︎」

ーーー

それから、私たちはマスターの故郷に行く為の準備を始めた。
準備と言ってもそこまでの物では無い。
マスターの故郷に行く為の足を確保する方法だ。
今の世では、遠くに行く為には乗り物に乗るのが主流だ。
しかし、私たちは乗り物を操る手段を持たない人だ。
歩いて帰るでも良いが、マスターの故郷は遠くにあるらしい。

「僕の故郷はね、村を三つ超えた先にあるよ」

聞いてみると確かにかなりの距離だ。

「だからコレを使うんだー」

そう言ってマスターは私に見取り図を見せてきた。
それは馬に似ているが違った。

『これはゴーレムですか?』

それは馬の形をしたゴーレムの見取り図だったのだ。

「そう魔術でも小さい石に魔術回路を描けば馬にも劣らないレベルのものができる様になってる」
『前マスターの文献にはありませんでしたね。御自分でお調べに?』
「うん。石や鉄、他の鉱石も調べたんだけど石が安定したゴーレムを作れたんだよね。なんでだろ?」

そう言いマスターは首を傾げるが、私はそれ所では無い。

『あのマスターが自分で‼︎』
「だからその発言だと僕が自堕落な人みたいじゃん!」

感涙をする様な動きをするとマスターにそう言われてしまった。

「この魔術の原理は……」

そう言ってマスターがゴーレムの見取り図で一つ一つのパーツを解説してる時だった。

『……!』

突如、私達の背後から突き刺す様な視線を感じた。

「僕たちはそれに乗るだけで……アイ?」
『はい?なんですか?』

後ろを振り返ろうとすると、マスターが不思議そうに声をかけてきた。

「大丈夫?何かあった?」
『いいえ……』

私は咄嗟に嘘をついてしまった。
……恐らくあいつらだ。
私はマスターに気づかれない様にギロリとそこを睨みつける。
するとそいつら慌ててそこから離れていった。

『……マスター。少し私一人で動いて良いですか?』

私は笑顔で言う。

「えっ?それなら僕が案内するけど?」

そうマスターが返すが……。

『いいえ。マスターは外の空気を吸ってください』
「いやあのアイ」
『それでは‼︎』
「もうここ既に外なんだけどって……いっちゃった」

私は無理矢理、マスターから離れた。
早くしないと逃げられてしまう。



「「ハァ……ハァ……」」

暗い路地裏に虫の息の様なネズミが二匹。

『もう逃げられませんよ』
「「ひぃっ⁉︎」」

私はそれに微笑む様にして近づいくとそれはとてもとても怯えた良い表情を見せる。

「待ってくれ‼︎俺は唆されただけなんだ‼︎」

そう言って男が土下座をしてくる。
名前は確かローグ・キャスパーでしたね。

「何言ってんのよ‼︎あんたも賛同してたでしょうが‼︎」

男の土下座を見て、この女……アリス・ホワイトも耳障りな高い声でキャンキャン言い出した。

「『“口なし”が一位なのが納得できない‼︎奴がいなければ俺が一位なのに‼︎』そう言って私に相談してきたのはあんたでしょ‼︎」
「うるさいうるさい‼︎」

アリス・ホワイトに痛い所を突かれたのか男はその後も「うるさい!」と叫び続けて頭を地面に押さえていた。

『さて……どう殺しましょうか?』
「「⁉︎」」

そう言って私が一歩前に進むと男は土下座を止めて走る様に後ろにいって、女を盾にした。
この時を待ち望んでいたのだ。
マスターがどうでも良くても私は納得出来ないのだ。

許さない。

その一言で終わりなのだ。

マスターの実力に納得出来ずに殺そうとした。
許さない。
マスターの努力を認めずに場所を取ろうとした。
許さない。

『しかし、マスターはあなた方は興味の対象外だと言っていた。それは既にあなた方も知ってる筈だ。
新聞を読んだか?あなた方の事は書いてなかった』

それなのに…!

『あなた方はマスターをまた殺そうとした‼︎』

許さない。
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。

『許さない!』

私はそう言って近く。

「死ね!」

男がそう言って隠していたナイフを私に刺してきた。

「よっしゃ!死ね死ね!」

二人とも刺せてか勝利が確信した様な顔をするが……。

『とても見るに耐えない顔ですね』

私は何とも無いという顔をする。
実際には彼らは一度も私に傷を付けられていない。
マスターが作った肉体が強すぎるのだ。

「「……」」

二人はとうとう息すら忘れてただただ青い顔でガタガタと震えている。
私は男が落としたナイフを拾う。
……これでマスターを刺そうとしたのですね。

『マスターは私に殺す手段を与えませんでした』

何と優しいマスターでしょう。
私はマスターのメイドなのだからそれくらいの能力をつけて欲しかった。

『しかしには魔術の心得があるのです』

そう呟き私は指先に魔力を集める。
“文字効果”。

『“幻影”』

そう呟き魔力を二人の眼球に流し込む。

「「ぎゃあああああああ⁉︎」」

その瞬間二人は、毒を吸った獣の様にのたうち回っていた。
今、二人は幻影の世界に居る。
幻の痛みが二人を襲う、二人はもうまともな生活は出来ないだろう。

『マスターの優しさに免じて、幻影の魔術は軽くしてやっています。にはしません。永遠の幻影にのたうち回れ』

そう言って私は彼らを尻目にマスターがいる場所に戻っていった。
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