9 / 28
僕は行く
しおりを挟む 僕達は帝都に戻って直ぐに皇后の部屋に案内された。すんなり案内されたのは勇者であるアルバートのお陰だろう。勇者の特権を受けられるのは有り難い。僕は宰相に喧嘩を売った反逆者みたいなものだからね。
ベットで寝ている女性が皇后か? 国政が忙しいので皇帝も宰相も不在……まぁ、僕にとっては都合が良いのだけど。だけど、付き添っているのがアリシア姫だけなのは少し悲しいな。アリシア姫が僕に向かって真剣な眼差しを向けてくる。言わなくても分かっているさ、キャプテン・ヴァージャスの名に於いて約束したからな。
「リアン!」
僕は契約した光の精霊リアンを呼び出す。10cm程度の身長の光の翼を生やした女性が僕の胸前に現れる。リアンは出会った時とは異なり、小柄な精霊には不釣り合いなプレートメイルを着ている。僕が好みの服を全く言わないので、一緒にいるクロエの騎士姿が僕の好みだって勝手に思いこんだせいなのだけどね。
「伝説の戦乙女みたいですねっ!」
アリシア姫が興奮して叫ぶ。姫は素直で良いな……クロエには鎧フェチってからかわれたからね。
僕が好きなのは鎧じゃないのに……って余計な事を考えている場合ではない。
皇后にかけられた呪いを解くにはどうすればよい? 光の精霊の力を使うといっても僕は魔法使いではない。リアンが持つ光の力を使いこなすイメージを想像する。
思い出したのは、ガルファダ王国で目にした圧倒的な命の光ーー邪悪な目的に使われた生命活性魔法『アクティベーション・グリッター』
それは仲間であったヨーゼフの死の原因となった悲しい思い出の魔法である。だが、生命を活性させる偉大な癒しの力である事には違いはなかった。僕は思い浮かべる。
ヴェロニカさんが放った生命の輝きを……
ヨーゼフが自らの命を光と変えた姿を……
それと頼むよヴァージャス!
僕が胸前で拳を合わせモスト・マスキュラーのポーズをとると同時に筋肉が爆発的にバルクアップする。
そして、リアンが僕めがけて飛び込み大胸筋に溶け込む。リアンの光の力が全身に行き渡り筋肉がテカリ始める。
あの日見た生命の光の様に……輝けっ! 僕の命よ!
『マッスル・グリッター!!』
僕の筋肉が放つ緑の光が皇后の部屋を満たす。
呪いなど一片の欠片も残さない様に全てを塗りつぶせっ! 筋肉の輝きよ!
これで皇后の呪いは解けただろうか?僕は解呪の成果を確認する為に、呪いについて詳しそうなアルバートに視線を送る。
「何をしているんだいケン?」
予想外の返答をするアルバート。えっ、何って何だろう? いやっ確かに解呪って感じに見えないポーズなのは分かるけど……呪いが解けたかどうかは分かるよね普通は?
「何って、皇后の呪いを解こうとしただけですけど……」
アルバートの不思議そうな顔を見ていると、段々自信がなくなってくる。依頼内容は皇后の呪いを解くであってるよな?
「ケン、光の精霊を捕まえるのが依頼だよ。わざわざ光らなくても良いのに」
えっ、まさかアルバートは依頼内容を理解していない? 念のために確認してみるか。
「依頼内容は光の精霊の力で皇后にかけられた呪いを解く事ですよね?」
「なんだ、そんな依頼だったのか。光の精霊を捕まえて欲しいしか聞いてなかったよ。呪いを解くだけなら僕の聖剣ウィッシュ・グランターでも出来る事だよ。ストレートに呪いを解いてって言ってくれれば良かったのに」
なんだよソレ。あんまりじゃないか! ショウはため息をついているし、クロエは腹を抱えて笑っているじゃないか。
「全く意味がなかったじゃないか! アルバートは天然すぎるよ!」
「ははっ、意味はあるよ。ケンがパワーアップしたじゃないか。それに可愛い奥さんも出来たしね」
いやいやっ、確かに色々な意味でパワーアップしたけどね。それに奥さんは余計だよ……伴侶とか言ってたのはリアンの精霊ジョークだよ……きっと。はぁっ、張り切って筋肉テカらせた僕の身にもなってくれ。
「お母様っ!」
声の方向を見るとアリシア姫が皇后に飛びついていた。アルバートと残念な会話をしている間に皇后が目を覚ましたようだ。どうやら僕の筋肉のテカリで呪いが解けたみたいだな。格好悪いけど目的が果たせたなら問題ない。
「呪いが解けても直ぐに体力が回復する訳ではないわ。休ませてあげましょうね」
クロエの提案を聞いてアリシア姫が皇后から離れる。そして……
「凄いですケン様!!」
アリシア姫が僕に飛びつく。まったく……誰構わず飛びつくとはね。皇后にも飛びついてたし、アリシア姫の性格なんだろうけど、男の僕に飛びついたら勘違いされるよ。
「あらっ、ケンが浮気してる!」
「何よこの女っ! 気安く近づかないでっ!」
ほらっ、クロエとリアンが面倒な事を言い始めているじゃないか。まぁ仕方がないかな。母親が呪われて、ずっと不安な思いをしていたのだ。不安を払拭するのもスーパーヒーローの役目さ。だからアリシア姫を片手で抱き抱えて高らかに宣言する。
「もう大丈夫だ! キャプテン・ヴァージャスがここにいる!」
僕は空いた手で自身の大胸筋を指す。
胸にはヴァージャススーツの黄色いVとJの文字が誇らしげに輝いていた。
ベットで寝ている女性が皇后か? 国政が忙しいので皇帝も宰相も不在……まぁ、僕にとっては都合が良いのだけど。だけど、付き添っているのがアリシア姫だけなのは少し悲しいな。アリシア姫が僕に向かって真剣な眼差しを向けてくる。言わなくても分かっているさ、キャプテン・ヴァージャスの名に於いて約束したからな。
「リアン!」
僕は契約した光の精霊リアンを呼び出す。10cm程度の身長の光の翼を生やした女性が僕の胸前に現れる。リアンは出会った時とは異なり、小柄な精霊には不釣り合いなプレートメイルを着ている。僕が好みの服を全く言わないので、一緒にいるクロエの騎士姿が僕の好みだって勝手に思いこんだせいなのだけどね。
「伝説の戦乙女みたいですねっ!」
アリシア姫が興奮して叫ぶ。姫は素直で良いな……クロエには鎧フェチってからかわれたからね。
僕が好きなのは鎧じゃないのに……って余計な事を考えている場合ではない。
皇后にかけられた呪いを解くにはどうすればよい? 光の精霊の力を使うといっても僕は魔法使いではない。リアンが持つ光の力を使いこなすイメージを想像する。
思い出したのは、ガルファダ王国で目にした圧倒的な命の光ーー邪悪な目的に使われた生命活性魔法『アクティベーション・グリッター』
それは仲間であったヨーゼフの死の原因となった悲しい思い出の魔法である。だが、生命を活性させる偉大な癒しの力である事には違いはなかった。僕は思い浮かべる。
ヴェロニカさんが放った生命の輝きを……
ヨーゼフが自らの命を光と変えた姿を……
それと頼むよヴァージャス!
僕が胸前で拳を合わせモスト・マスキュラーのポーズをとると同時に筋肉が爆発的にバルクアップする。
そして、リアンが僕めがけて飛び込み大胸筋に溶け込む。リアンの光の力が全身に行き渡り筋肉がテカリ始める。
あの日見た生命の光の様に……輝けっ! 僕の命よ!
『マッスル・グリッター!!』
僕の筋肉が放つ緑の光が皇后の部屋を満たす。
呪いなど一片の欠片も残さない様に全てを塗りつぶせっ! 筋肉の輝きよ!
これで皇后の呪いは解けただろうか?僕は解呪の成果を確認する為に、呪いについて詳しそうなアルバートに視線を送る。
「何をしているんだいケン?」
予想外の返答をするアルバート。えっ、何って何だろう? いやっ確かに解呪って感じに見えないポーズなのは分かるけど……呪いが解けたかどうかは分かるよね普通は?
「何って、皇后の呪いを解こうとしただけですけど……」
アルバートの不思議そうな顔を見ていると、段々自信がなくなってくる。依頼内容は皇后の呪いを解くであってるよな?
「ケン、光の精霊を捕まえるのが依頼だよ。わざわざ光らなくても良いのに」
えっ、まさかアルバートは依頼内容を理解していない? 念のために確認してみるか。
「依頼内容は光の精霊の力で皇后にかけられた呪いを解く事ですよね?」
「なんだ、そんな依頼だったのか。光の精霊を捕まえて欲しいしか聞いてなかったよ。呪いを解くだけなら僕の聖剣ウィッシュ・グランターでも出来る事だよ。ストレートに呪いを解いてって言ってくれれば良かったのに」
なんだよソレ。あんまりじゃないか! ショウはため息をついているし、クロエは腹を抱えて笑っているじゃないか。
「全く意味がなかったじゃないか! アルバートは天然すぎるよ!」
「ははっ、意味はあるよ。ケンがパワーアップしたじゃないか。それに可愛い奥さんも出来たしね」
いやいやっ、確かに色々な意味でパワーアップしたけどね。それに奥さんは余計だよ……伴侶とか言ってたのはリアンの精霊ジョークだよ……きっと。はぁっ、張り切って筋肉テカらせた僕の身にもなってくれ。
「お母様っ!」
声の方向を見るとアリシア姫が皇后に飛びついていた。アルバートと残念な会話をしている間に皇后が目を覚ましたようだ。どうやら僕の筋肉のテカリで呪いが解けたみたいだな。格好悪いけど目的が果たせたなら問題ない。
「呪いが解けても直ぐに体力が回復する訳ではないわ。休ませてあげましょうね」
クロエの提案を聞いてアリシア姫が皇后から離れる。そして……
「凄いですケン様!!」
アリシア姫が僕に飛びつく。まったく……誰構わず飛びつくとはね。皇后にも飛びついてたし、アリシア姫の性格なんだろうけど、男の僕に飛びついたら勘違いされるよ。
「あらっ、ケンが浮気してる!」
「何よこの女っ! 気安く近づかないでっ!」
ほらっ、クロエとリアンが面倒な事を言い始めているじゃないか。まぁ仕方がないかな。母親が呪われて、ずっと不安な思いをしていたのだ。不安を払拭するのもスーパーヒーローの役目さ。だからアリシア姫を片手で抱き抱えて高らかに宣言する。
「もう大丈夫だ! キャプテン・ヴァージャスがここにいる!」
僕は空いた手で自身の大胸筋を指す。
胸にはヴァージャススーツの黄色いVとJの文字が誇らしげに輝いていた。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる