大魔導師と賢者

河内 祐

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作戦会議

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「“文月の仙人”!」
「本物か?」
「仙人クラスが来るなんて」

その一言で周りはザワザワし出した。

「仙人⁉︎」

かくいう僕も衝撃を受けた。

「まさかあんなに餓死寸前大食いの人が仙人だったなんて……」
『はいそこ~静かにね~』

僕の声が聞こえたのか若干声がうわずっている感じで止めに来た。
笑顔だが多分、怒ってる。

『オホン……それでは説明しますね』

そう言うと、彼女は僕たちに映像を見せた。
映像には白い塔が建っており、なかなか壮観だった。

『これは“白銀の都”ケリフォス、その街の象徴とも言えるホワイト・ピリゴスです。これを見に多くの観光客が来ることもありました……』

周りの魔法使いも少し目をキラキラさせている人もいる。おそらく仕事が終われば観光に行くだろう。

『しかし』
「「「⁉︎」」」

そう言って映像が変わった瞬間、全員の顔色が変わり血の気が失せた顔色になる。

『ホワイト・ピリゴスは現在崩れており、周囲にいた人たちを巻き込む大事故が起きました』

そこには、塔があった場所には多くの瓦礫が落ち、白い壁には焦げたような色……そして。

「うぷ……」

近くの魔法使いが口に手を当てる。
無理もない。
そこには……白い壁には明らかに大量の血痕がついていた。

『気分を悪くされてる方もいるので次の映像に変えますね……』
「⁉︎」

そして、次の映像にも僕たちを衝撃を走らせる充分な物があった。

「なんだこれは……」

ガードーナさんも言葉を詰まらせていた。

『これは上から塔があった上空を撮影させた物です』

その映像、普通ならそこは大きな瓦礫が転がり塔の骨組みが露出している映像が流れるはずだった。
しかし、そこにあったのは

「目玉だ」

塔があった場所は大きく穴を開けて、そこからそれが覗いていた。
地中深くから、恐ろしく大きな目玉が映像の中心にばっちり映っている。

『私たちが映像の報告を聞き駆けつけた時には穴しかなく目玉は確認できませんでした』
「最悪だ……」

僕は思わずボソッとそう呟く。
もしかしたら最悪では無かったかもしれない。
しかし、最悪なことを想像して僕は思わずそう呟いた。

『そうです“秋明菊の大魔導師”エメル・サフィスさん』

彼女も冷や汗なのか頬を汗が伝いながら言った。

『“悪魔の力”がこちらの世界で実体を得たかもしれません』
「「「‼︎」」」

他の人からも絶望した感じが伝わった。

「ありえない!」

1人が叫ぶ。

「“悪魔の力”は自我がある霧のような存在!肉体など持っていないはずだ!」
「いや、“悪魔の力”は何かわかっていない!もしかすると肉体を得る個体がいるかもしれん!」
「そんな……」

叫んでいた人が膝から崩れ落ちる。

『そうですね。私たちは“悪魔の力”を知りません。なのでこれは何なのかそれも調べるのが今回の目的でもあります』

そう言って、今度は都全体の地図を映像にした。

『さてとそれでは作戦を説明します』

そう言って、棒で街の様々な所を指す。

『私たちは一定の人数で班を分けたあと、街全体の調査を行っていきます。塔を中心に離れたところから中心に向かうようにして塔まで向かいます。なんらかの異常を見つけた場合、近くにいる班も急行し原因の解明をお願いします。もしそして何もなければ……』

ふぅーっと彼女は軽く息を漏らす。

『この巨大な穴に侵入し調査を行います』

シンッとその場が鎮まる。

「すいません」

1人が手を挙げた。

『……はいなんでしょう?』
「この任務私は降ります。危険すぎる」
『無理です』
「‼︎」
『ここにいるのは全員、大魔導師です。それが何を意味するかわかりますね』
「‼︎……っくそ!」

ドンと机を強く叩く音が聞こえた。
“大魔導師”は魔導連盟からの任務に逆らうことができない。マウグス・リリィに召集それどころかスカウトもないことからきっとこれは決まっていたことがわかる。

『さてと作戦の重要な班は人数は5、6人!それを十班用意します』

そう言い、9人が彼女より一歩前に出た。

『彼らは私の専属の部下であり、あなたたちの班長をしてもらいます』

一斉にお辞儀をしたら一歩後ろに下がり元の場所に戻った。

『それでは班の人たちを発表していきます。皆さんから見て左にいるレシリア君の班の人からです。まず“白粉花の大魔導師”ミルサ・キナラスさん……』

そうして一人一人名前を呼ばれていった。

『“薔薇の大魔導師”アミリア・ガードーナさん』
「おっと遂に私か」

ガードーナが呼ばれたのは3班目の時で班長はシオン・アナスタシアで、髪が角刈りで小さいグラサンをかけている男だった。

「君はなかなか呼ばれないね」
「そうですね」

僕の番はなかなか来ずにとうとうカオル・ナナミヤか、他の班長であるリープ・ゼブラさんだった。

『以上でリープちゃんの班はおしまいです。残りの方は私の班です!よろしくね!』
「エメル君……」

ポンとガードーナが僕の肩を叩く。
そして

「ドンマイ!」

と親指を立てて良い笑顔で励ましてくれた。

『よろしくね!エメル・サフィス君!』
「誰か助けてください」







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