大魔導師と賢者

河内 祐

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白銀の都にて

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窓や壁に生えた、草花が綺麗に整えられた白い塔がそびえ立つ街があった。
そこに住む全ての人が、朝日に反射して輝く塔の美しさにため息を漏らしていた。
『自分たちが住む街はなんと素晴らしいのだろう!』、そこに住む人たちは自分の街に誇りを持っていた。

ズシン

しかし、その日は違った。

ズシン

朝から辺りに大きな音が響いていた。
街の人たちは音のする方を見ると、そこには塔があった。
しかし、いつもとは違う。

ズシン

塔でまた大きな音がまた響いた。
そして

ゴゴゴゴ

大きな音を立てて塔は崩れていった。



『クルッポー!』

朝になり、“知恵の塔”の蔵書の管理を始めていたら空から魔鳩が飛んできた。

「おぉ?今回は何があるのかな?」
「なんであなたがウキウキしてるんですか?」
「面白いからな!!」
「素直に連れていきたくない」

魔鳩の鳴き声につられて、マウグスが凄まじい勢いで来た。
その後、「ゼーハー……」とモアさんが歩いてきた。

「主…ハァ…ちょっと…走るのハァ…はやく…ハァ…ないですか?」
「そんなハァハァするな変態みたいだぞ」
「ハァハァ……誰のせいでこうなったと……」
『秋明菊の大魔導師エメル・サフィスに告げます』
「まだ私が喋ってたでしょ⁉︎」
『“白銀の都”にて特殊な魔力を魔導検察部隊の職員が感知しました。職員曰く魔力の正体は“悪魔の力”との事です』
「「「‼︎」」」

その言葉にその場にいた全員が反応した。
“悪魔の力”……危険度の高い魔法書“禁術の書”を生み出す自我を持った力だ。

『今回感知された“悪魔の力”は町全体を包む大きさです。魔導連盟はこの規模から大魔導師を数十人を招集し解決にあたります、細かい指示は魔導連盟の本部“世界樹イグドラシル”にて伝えるので明後日の昼までにきてください』
「……」
『なお、あなたに拒否権はありません』
「‼︎なんだと‼︎」

それを聞いてマウグスが激怒する。

「エメル!これはどういうことだ!」
「どうしたもこうしたも、そういうことです」
「凄いな!理由が1ミリも理解できないだと!」
「大魔導師は国に雇われているため、国の命令に絶対服従なんです」

マウグスにそう言い、僕は魔鳩に今回の件に了解する旨を伝え空に飛ばし、魔導連盟まで行くために準備を始めた。

「待て!エメル!」
「待ちません」

部屋で準備をしているとマウグスが部屋に入ってきた。

「ノックくらいしてもよいのでは?」
「お前は思春期の坊主か?」
「違いますね」
「そうだろ?って違う‼︎そういう話ではない‼︎」
「なんですか?」
「簡単だ今回も私を連れていけ‼︎」
「だめです」
「拒否がはやいな!」
「今回の件は“アース”のような危険度ではありません。来ても邪魔です」
「‼︎私はお前と実力はどっこいどっこいだぞ!」
「だからです。私程度の実力では危険なのです」
「‼︎」
「足手まといが増えるのは避けないといけません」

そういって、準備を終えた僕は鞄を担ぎ、部屋から出ようとする。

「……邪魔です」

しかし、マウグスが扉の前に立ち止まり道をふさいでいた。

「死ぬ気か?」
「……必要なら」
「なら行かせられないな。それにお前は“知恵の塔”の管理者でもある誰がここを管理するんだ?」
「国が別の大魔導師を派遣するので、問題ないです。貴方たちが“知恵の塔”にいることは国に言ってあるので問題ないです」
「……」
「なのでどいてください」
「……行くな」

意地でもどかない気か……しょうがないなぁ。

「あ!あそこに空飛ぶカメレオンが!」
「なにどこだ!?」
「発射!!」
「ぐっほ⁉︎」

よそ見した瞬間、魔法で気絶させ出ていく。

「モアさん」
「気づいていましたか」

そして、廊下の角にいたモアさんをよぶ。

「マウグスをよろしくお願いします」
「はい。気をつけてくださいね」
「そうですね。死にたくありませんし」

そう言って僕はイルミさんんも挨拶をすますとほうきに乗り、“世界樹”に向かった。




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