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クリーミー花のルーティン(前編)
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太陽が燦々と輝き、オイラ達のいる建物を照らし出す。
「おはようございます。イルミさん」
「おはようなのさ」
オイラの朝のルーティンは、この男の声から始まる。
結局、オイラは名前を言いこの塔にいる。
寄生する生物がいなくなった今、オイラは特にこれといった行動をする必要も無くなってしまったからだ。
花を咲かせるにしてもオイラの一生よりもこいつらの方が早く死ぬ。
ゆっくりやっていくさ。
「はぁ~」
「欠伸が長いのさ」
「もうすぐ、魔導連盟の“世界樹会議《ユグドラシル》”がありますからね。研究成果や開発した魔法を見せる為のレポートを作っているんですよ」
「“世界樹会議《ユグドラシル》”?」
「まぁ有り体に言って報告会ですね。魔導連盟の支部や本部に行ってレポートを提出。数日経って、そのレポートの結果が届きますね」
「結果が悪ければ?」
「まぁ資格剥奪ですね」
「うへぇ大変なのさ」
そんな会話をしながら、この男“エメル・サフィス”はオイラに水をかける。
「まぁ私やマウグスレベルの魔法使いはそうそう剥奪されませんよ」
「何故なのさ?」
「使えるからです」
「身も蓋もない」
「事実なので」
利用価値がある人間は大変なのさ。
そう思いながら、オイラは歩き出した。
行くのは竃なのさ。
「花なのに火に燃えないって不思議ですね」
「オイラ達は魔力が体の表面に膜のようにあるから、火を寄せ付けないのさ」
「なるほど」
竃から火をつけながら、卵を四つ割りフライパンに乗せて、端がカリカリになった時に皿に移す。
そしてソーセージを数本焼いてそれぞれの皿に盛り付けてトマトなどの野菜を乗せて終わり。
その間にエメルはパンを焼き、コーヒーを用意していた。
「あなたがいるおかげで大分楽ですね」
「そうだろうそうだろう」
皿を机に移動させて、オイラたちは朝食を摂る。植物もご飯を食べるのさ。
「植物は排泄をしませんよね」
「100%摂取できるのさ」
それでも摂取が出来ない奴もある。
その時は吐いたりして体から出されるのだ。
「ここら辺の食べ物は食べやすいのさ」
「それは良かった」
「おお~いい匂いです」
朝食を食べ始めると丁度、金髪の女“モア”が降りてきた。髪がなかなか芸術点が高いことになっている。
この女にはなぜかオイラの寄生が歯が立たなかったのさ。
「イルミさんが来てから、料理が美味しくなりましたね」
「そうですね」
そう言って、この女はガツガツご飯を食べる。それを見ると作っている方も悪い気はしないのさ。
「マウグス遅いですねぇ」
「主、何故か今までの研究成果レポートを手直ししていました」
「彼女も“世界樹会議”に来るのですかね?」
「賢者なのに?」
この世界の“賢者”や“大魔導師”についてはエメルに教えてもらった。
知っている分、あの女の行動理由がわからない。
賢者は何もしなくて良いはずなのさ。
「“賢者”も報告は出来ますよ?作った魔法の権利を有する為に」
「なるほど」
そうか、人の世は色々と大変だったのさ。
……アイツの家も色々とあったし。
「しかし、マウグスが書いたレポート……気になりますね」
「そうなんですか?主の魔法が気になるんですか?」
「それもありますが一番は“彼女が書いた”というところです。彼女は基本“自分さえ理解すれば良い”のスタンスなので、他者に理解させようとなると彼女は大変なのですよ」
「主にそんな悩みが!?」
「それは意外なのさぁ」
「彼女は突拍子の無い物を創造するのに長けていますが、他者がそれを理解するのは難しいですね」
「エメルさんもですか?」
ふと気づいたようにモアはそう言った。
「僕は……まぁ……他者よりは理解できますね」
「うむ!流石、私のライバルだな!」
「おや、おはようございます」
エメルがそう答えた時に、黒髪の女が降りてきた。
「モア……凄い髪型だな」
「……流行です」
「嘘つけ!」
黒髪の女、マウグスの言葉にモアが口を尖らせてそう言ったが意味がなかったようだ。
「しかし、エメルが私をよくわかっているようで、私は嬉しかったよ」
「そうですか、それは何よりです」
「つれないなーもう」
「ツンツンしないでください」
自分の理解者がいて嬉しかったのか、マウグスは凄いエメルにツンツンしている。
何処か微笑ましささえ感じるこの光景も。
「やめろやぁああ!」
「フハハハハ!器が小さいのがバレたな!」
「あなたじゃなければ、あと数分もった!」
すっごい喧嘩が始まるのである。
「イルミさんは今日は何をするんですか?」
「この塔の管理補佐なのさ。蔵書の管理とか」
「良いですねぇ。平和ですね」
それを横目にオイラ達は朝食を食べ終え、食器を洗い始める。
その時だった。
『ビー!ビー!』
突如として、警報が辺りに鳴り響いた。
「おはようございます。イルミさん」
「おはようなのさ」
オイラの朝のルーティンは、この男の声から始まる。
結局、オイラは名前を言いこの塔にいる。
寄生する生物がいなくなった今、オイラは特にこれといった行動をする必要も無くなってしまったからだ。
花を咲かせるにしてもオイラの一生よりもこいつらの方が早く死ぬ。
ゆっくりやっていくさ。
「はぁ~」
「欠伸が長いのさ」
「もうすぐ、魔導連盟の“世界樹会議《ユグドラシル》”がありますからね。研究成果や開発した魔法を見せる為のレポートを作っているんですよ」
「“世界樹会議《ユグドラシル》”?」
「まぁ有り体に言って報告会ですね。魔導連盟の支部や本部に行ってレポートを提出。数日経って、そのレポートの結果が届きますね」
「結果が悪ければ?」
「まぁ資格剥奪ですね」
「うへぇ大変なのさ」
そんな会話をしながら、この男“エメル・サフィス”はオイラに水をかける。
「まぁ私やマウグスレベルの魔法使いはそうそう剥奪されませんよ」
「何故なのさ?」
「使えるからです」
「身も蓋もない」
「事実なので」
利用価値がある人間は大変なのさ。
そう思いながら、オイラは歩き出した。
行くのは竃なのさ。
「花なのに火に燃えないって不思議ですね」
「オイラ達は魔力が体の表面に膜のようにあるから、火を寄せ付けないのさ」
「なるほど」
竃から火をつけながら、卵を四つ割りフライパンに乗せて、端がカリカリになった時に皿に移す。
そしてソーセージを数本焼いてそれぞれの皿に盛り付けてトマトなどの野菜を乗せて終わり。
その間にエメルはパンを焼き、コーヒーを用意していた。
「あなたがいるおかげで大分楽ですね」
「そうだろうそうだろう」
皿を机に移動させて、オイラたちは朝食を摂る。植物もご飯を食べるのさ。
「植物は排泄をしませんよね」
「100%摂取できるのさ」
それでも摂取が出来ない奴もある。
その時は吐いたりして体から出されるのだ。
「ここら辺の食べ物は食べやすいのさ」
「それは良かった」
「おお~いい匂いです」
朝食を食べ始めると丁度、金髪の女“モア”が降りてきた。髪がなかなか芸術点が高いことになっている。
この女にはなぜかオイラの寄生が歯が立たなかったのさ。
「イルミさんが来てから、料理が美味しくなりましたね」
「そうですね」
そう言って、この女はガツガツご飯を食べる。それを見ると作っている方も悪い気はしないのさ。
「マウグス遅いですねぇ」
「主、何故か今までの研究成果レポートを手直ししていました」
「彼女も“世界樹会議”に来るのですかね?」
「賢者なのに?」
この世界の“賢者”や“大魔導師”についてはエメルに教えてもらった。
知っている分、あの女の行動理由がわからない。
賢者は何もしなくて良いはずなのさ。
「“賢者”も報告は出来ますよ?作った魔法の権利を有する為に」
「なるほど」
そうか、人の世は色々と大変だったのさ。
……アイツの家も色々とあったし。
「しかし、マウグスが書いたレポート……気になりますね」
「そうなんですか?主の魔法が気になるんですか?」
「それもありますが一番は“彼女が書いた”というところです。彼女は基本“自分さえ理解すれば良い”のスタンスなので、他者に理解させようとなると彼女は大変なのですよ」
「主にそんな悩みが!?」
「それは意外なのさぁ」
「彼女は突拍子の無い物を創造するのに長けていますが、他者がそれを理解するのは難しいですね」
「エメルさんもですか?」
ふと気づいたようにモアはそう言った。
「僕は……まぁ……他者よりは理解できますね」
「うむ!流石、私のライバルだな!」
「おや、おはようございます」
エメルがそう答えた時に、黒髪の女が降りてきた。
「モア……凄い髪型だな」
「……流行です」
「嘘つけ!」
黒髪の女、マウグスの言葉にモアが口を尖らせてそう言ったが意味がなかったようだ。
「しかし、エメルが私をよくわかっているようで、私は嬉しかったよ」
「そうですか、それは何よりです」
「つれないなーもう」
「ツンツンしないでください」
自分の理解者がいて嬉しかったのか、マウグスは凄いエメルにツンツンしている。
何処か微笑ましささえ感じるこの光景も。
「やめろやぁああ!」
「フハハハハ!器が小さいのがバレたな!」
「あなたじゃなければ、あと数分もった!」
すっごい喧嘩が始まるのである。
「イルミさんは今日は何をするんですか?」
「この塔の管理補佐なのさ。蔵書の管理とか」
「良いですねぇ。平和ですね」
それを横目にオイラ達は朝食を食べ終え、食器を洗い始める。
その時だった。
『ビー!ビー!』
突如として、警報が辺りに鳴り響いた。
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