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親友の兄貴・磐城瑞穂
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俺はゴールドスカルのペンダントヘッドから得た情報をいかに親友に告げようかと悩んでいた。
ソイツはデパートの従業員用エレベーターの前で亡くなったロック歌手・木暮敦士の弟で木暮悠哉と言うんだ。
中学時代にサッカー部のエースになると言う同じ夢を見ていた同志だ。
彼も俺同様に身長が低かったが、パワーだけは超一流だった。
でも兄貴の不遇の最期を見て、意気消沈してサッカーを辞めてしまったのだ。
結果俺がエースになった。
もし……
そいつが残っていれば、俺は……
そんなことを俺は何時も考えていたんだ。
玄関のチャイムを鳴らすと、木暮が飛んで来た。
『木暮の兄貴のことで話がある』
と、電話しておいたからだと思うけど。
でも流石にボンドー原っぱのことは言えないと思っていた。
「あれっ瑞穂、少し大きくなってないか?」
流石に俺の親友だ。
一番気にしていることを然り気無く誉めてくれる。
(ん!? っていうことは少し伸びたのかな?)
俺は嬉しくなって、木暮の次の言葉を待った。
「ホラ、兄貴の葬式の時確かこん位だった」
木暮はそう言いながら、玄関の扉に付いているチェーンを指差した。
「なぁんだ、中学の時と比べてか? 当たり前だろうが」
俺は少しがっかりしながら、靴を脱いで木暮の後を追った。
「兄貴の話なら、此処がいいと思って」
木暮はそう言いながら、仏間の襖を開けた。
其処には小さな仏壇に納められた位牌と写真があった。
真っ先に木暮の兄貴の遺影に手を合わせる。
それが礼儀だと、家を出る前に母に教えられた。
合掌しながら、まだまだ未熟な自分に気付いた。
(母さんありがとう)
妙に素直な自分の出現に少し戸惑ってはいた。
目の前の写真の木暮敦士は金髪では無かった。
茶髪のロン毛だった。
それはあのゴールドスカルに触れて見た、意識とは少し違っていた。
「あの金髪じゃ?」
「ん。……あ、そうそうデビュー前に金髪にしたんだそうだ。でもこの茶髪は本当は違うんだってさ」
「え、何が違うの?」
「兄貴は介護ヘルパーだったんだよ。仕事にこんな頭じゃいけないらしくてさ、鬘なんだって」
「確かロックだったよね?」
俺の質問に木暮は頷いた。
「鬘で大丈夫か?」
俺は頭の中で、ボンドー原っぱのパフォーマンスを思い出していた。
舞台狭しと暴れまくる彼がもし鬘だったら……
(踊りまくっている内に鬘がポロリ……)
想像しただけで可笑しくなってきた。
でも俺は必死に笑いを堪えていた。
此処で笑ったら失礼過ぎると思ったのだ。
でも木暮は俺の変化に気付いたようだった。
「瑞穂。もしかしたら……、鬘がポロリなんて想像した?」
いきなりの直球で俺は慌てて……
それでも仕方なく頷いた。
「やっぱりな。実は俺も想像してたんだ。ホラ良くロッカーはヘッド何とかってやるだろう?」
「あぁ、ヘッドバンキングか?」
「あれやりながら、それでも必死に鬘を押さえてる兄貴を思い浮かべて……」
何処からか噛み殺したような笑い声が聞こえた。
良く見ると、それは木暮だった。
木暮の肩が小刻みに震えていた。
泣いている訳ではないのだ。
俺もそれを見ながら、遂に笑い出していた。
「写真見る?」
一頻り笑った後で、タイミング良く木暮が言ってくれた。
実は俺は写真の中身を確かめたくて此処に来たのだった。
そう……
金髪かどうか、自分の目で見て納得させるつもりだったのだ。
俺は中身が見たくて仕方なかった。
だから、すぐに表紙を開けた。
でも木暮が用意したアルバムの中にはこれと言った物はなかった。
(一体何を探すつもりなんだ? いや、判らない。でも何かしらあるはずだ)
俺は自問自答を繰り返していた。
「兄貴はロッカーになっても、茶髪には躊躇していたらしいんだ」
「ん、何で?」
「兄貴は又介護ヘルパーの仕事に戻るつもりだったって」
木暮の言葉を受け、俺は頷いた。
(そうだよな。奥さんのことを考えるとな)
俺は木暮の兄貴の気持ちが解った気でいた。
彼は茶髪も躊躇していた。
なのに金髪で……
しかも亡くなる時はスキンヘッドだった。
ボンドー原っぱもそうだったよな。
亡くなる直前に二人ともスキンヘッドになっていたんだ。
木暮の兄貴は確かに自分の遺志だ。
でもボンドー原っぱは違う。
ボンドー原っぱは一体誰にツルツル頭にさせられたのだろうか?
俺が考え事をしているの見て、木暮が肩を叩いた。
「兄貴が使っていた携帯電話があるけど見る?」
待ってましたとばかりに俺は頷いた。
「でもな……、中に写真は無いよ」
木暮が妙なことを言った。
「どう言うことがそれ?」
「だから削除されていたんだ」
「えっ、削除!?」
「うん、それしか考えられないんだ。それに記憶媒体も無くなっていたんだ」
「記憶媒体って、マイクロSDのことか?」
木暮は頷きながら席を外し、別のアルバムを持って来た。
でもその中にも変わった写真は無かった。
俺は結局、木暮の兄貴の携帯を手に取っていた。
削除されたと言う写真が物凄く気になったからだった。
削除された画像などあるはずもないのに。
まず電池パック上のカバーを外しマイクロSDを取り出そうとした。
でも其処には入っていなかった。
「おいお前、なにやってるんだ?」
木暮が言う。
「マイクロSDがないかと思って」
「そんな場所にはないよ。入り口は確か側面に付いていたかな?」
木暮が答えた。
俺は携帯電話の側面に付いているはずのマイクロSDの挿入口を見せてもらった。
確かに何も無かった。
幾ら指先で強く押してみてもマイクロSDは持ち上がっても来なかった。
その上、本体のカメラにも何も残されてはいなかった。
「でも普通撮るよね?」
俺の質問に木暮は頷いた。
俺はもう一度許可をもらって携帯を触ってみた。
売り出し中のロックグループのボーカルにしては古いタイプのを使用していた。
まずデータBOXを押す。
次にマイピクチャ。
次に上から検索開始。
カメラ。
インターネットモード。
デコメピクチャと来た時ヒットした。
映像が一枚だけ残っていたのだ。
「あ、アルバムか?」
俺は思い出したように言った。
「何だいそりゃ?」
「ホラ大切な写真をしまっておける機能だよ」
俺はそう言いながら、木暮の兄貴の携帯を触り始めた。
「ちょっと実験してみていい?」
俺の言葉に、木暮はしぶしぶ頷いた。
「いい? まず写真を撮って保存する」
俺はそう言いながら、携帯を木暮に向けて撮影した。
「メニューからデータBOX押して、マイピクチャーに合わせて又押す。ホラ、カメラって表示されるだろ?」
「そんなこと知ってるよ」
木暮が俺の説明にケチを付けた。
それでも俺は構わず続けた。
「そのカメラを押す。そうすればさっきの映像だ」
「それも知ってる」
「ちょっと黙って聞いてよ。それでさっきの映像を表示するだろう。その後メニューを押して、移動スラッシュコピーだ。ホラ一番上にアルバムへの移動が出るだろう。これを押すとデコメピクチャーになる」
俺はそう言いながら、画像を移動しますか? の《はい》を押した。
「さあ、画像点検だ」
俺はそう言いながらスイッチを切り、又さっきの順番通りに操作してデコメピクチャーにカーソルを移動させた。
あの女性と兄貴のツーショットの横に、木暮の写真が表示された。
「これが俺が言ったアルバムな意味だよ」
俺はその時、少し得意になっていた。
「そんな御託はいい。早くそのアルバムとかを見せろよ!」
木暮は急に怒り出した。
「あ、ごめん。まだ映像見せてなかったんだ」
俺は頭を掻きながら、携帯の画面を木暮に向けた。
木暮の兄貴はあの女性と笑っていた……。
「へー、この人が兄貴の奥さんか?」
木暮が言った。
「知らなかったのか?」
俺の質問に木暮は首を振った。
その時俺はスキンヘッドの男性の携帯にあったマイクロSDの画像を撮り込んでいたことを思い出していた。
自分の携帯でその画像をアップさせた。
二つに画面を見比べる。
やはり女性は同一人物だと思われた。
俺はそれを確認のために木暮にも見せていた。
「確か、全部削除されてたんだな?」
そう言った途端歯がガチガチと鳴り出した。
「瑞穂どうした?」
木暮が言う。
「お前の兄貴と同じ頭をしたヤツのことを思い出したんだ」
俺はワナワナと震えながら、此処を訪ねた本当の目的を語り始めた。
勿論しどろもどろだ。
自分で何を言ったのかさえ判らない。
それでも俺は必死だった。
何としてでも木暮に事件の真相を伝えなくてはいけないと思って……
「もしかしたら、原田とか言わなかった?」
木暮が言った。
(えっ、何故名前を知っているんだ。もしかしたら兄貴の知り合いか何かか?)
俺はそう思いながら、木暮の次の言葉を待った。
「もしソイツだったら、この前電話をくれた人だ」
木暮はそう言いながら、その時書いたと言うメモを固定電話の傍から持ってきた。
スキンヘッド……? ストーカー……?
そう読める走り書き。
木暮もきっと震えていたのだろうか?
その文字は乱れていた。
この探偵事務所のことは調べているようだった。
何処から噂を聞いたのだろうか?
叔父さんが元刑事だったことまで知っていた。
きっと、叔父さんを良く知っている人に紹介されたんだ。
俺はあの時勝手にそう思い込んでいた。
(そうか!? そうだったのか!? 木暮が教えたのか!?)
俺はあの日自転車で木暮の通っている高校を目指した。
その時、みずほの殺された真相や叔父さんが元刑事だったことを話してしたのだった。
でも木暮は電話をくれた男性が殺されたボンドー原っぱだとは知らなかった。
「ボンドー原っぱ!? えー、兄貴のことじゃ無かったのか!?」
やっと気付いた木暮は自分の書いたメモを見ながら震えだした。
「やっぱり……」
木暮が兄貴の携帯を見ながら言った。
「やっぱりって?」
「ほら此処」
木暮が指し示した携帯の履歴には原田学の文字があった。
木暮は兄貴の携帯電話を固定電話の傍に置いておいた。
もしかしたら木暮敦士に纏わる情報が入って来るかも知れないと思ったからだった。
「もしかしたら、原田学は兄貴の仲間なのかな?」
その質問に頷いた。
「そうだよ。原田はきっと仲間なんだ。だから名前が登録されていたんだ」
木暮はそう言った。
「さっき瑞穂がスキンヘッドだと言った時、もしかしたら兄貴のことか? なんて思ったんだ。だけど、その原田ってヤツが本当にスキンヘッドだったとは……」
(そうだった。本当はお前に話さなければいけないことがあったんだ)
俺は震え出した。
木暮を見ると、兄貴と俺の携帯の写真を交互に見ていた。
兄貴は確かにこの時は金髪だった。
照れくさそうでいて、優しさ溢れる笑顔だった。
「兄貴のこんな顔初めて見たよ」
木暮がポツリと言った。
そんな奴に、過酷な現実を告げなければいけない。
俺は身構えていた。
《俺はロックグループのボーカルだった。売れない時代から支えてくれた彼女が、俺の好みのちょいっとロングなチェーンを探してくれたんだ。しかも、ゴールドスカル付き。こんなカッコいいペンダントヘッドなんてそうざらにあるもんじゃない。》
俺の頭にあのゴールドスカルの記憶がよみがえっていた。
ソイツはデパートの従業員用エレベーターの前で亡くなったロック歌手・木暮敦士の弟で木暮悠哉と言うんだ。
中学時代にサッカー部のエースになると言う同じ夢を見ていた同志だ。
彼も俺同様に身長が低かったが、パワーだけは超一流だった。
でも兄貴の不遇の最期を見て、意気消沈してサッカーを辞めてしまったのだ。
結果俺がエースになった。
もし……
そいつが残っていれば、俺は……
そんなことを俺は何時も考えていたんだ。
玄関のチャイムを鳴らすと、木暮が飛んで来た。
『木暮の兄貴のことで話がある』
と、電話しておいたからだと思うけど。
でも流石にボンドー原っぱのことは言えないと思っていた。
「あれっ瑞穂、少し大きくなってないか?」
流石に俺の親友だ。
一番気にしていることを然り気無く誉めてくれる。
(ん!? っていうことは少し伸びたのかな?)
俺は嬉しくなって、木暮の次の言葉を待った。
「ホラ、兄貴の葬式の時確かこん位だった」
木暮はそう言いながら、玄関の扉に付いているチェーンを指差した。
「なぁんだ、中学の時と比べてか? 当たり前だろうが」
俺は少しがっかりしながら、靴を脱いで木暮の後を追った。
「兄貴の話なら、此処がいいと思って」
木暮はそう言いながら、仏間の襖を開けた。
其処には小さな仏壇に納められた位牌と写真があった。
真っ先に木暮の兄貴の遺影に手を合わせる。
それが礼儀だと、家を出る前に母に教えられた。
合掌しながら、まだまだ未熟な自分に気付いた。
(母さんありがとう)
妙に素直な自分の出現に少し戸惑ってはいた。
目の前の写真の木暮敦士は金髪では無かった。
茶髪のロン毛だった。
それはあのゴールドスカルに触れて見た、意識とは少し違っていた。
「あの金髪じゃ?」
「ん。……あ、そうそうデビュー前に金髪にしたんだそうだ。でもこの茶髪は本当は違うんだってさ」
「え、何が違うの?」
「兄貴は介護ヘルパーだったんだよ。仕事にこんな頭じゃいけないらしくてさ、鬘なんだって」
「確かロックだったよね?」
俺の質問に木暮は頷いた。
「鬘で大丈夫か?」
俺は頭の中で、ボンドー原っぱのパフォーマンスを思い出していた。
舞台狭しと暴れまくる彼がもし鬘だったら……
(踊りまくっている内に鬘がポロリ……)
想像しただけで可笑しくなってきた。
でも俺は必死に笑いを堪えていた。
此処で笑ったら失礼過ぎると思ったのだ。
でも木暮は俺の変化に気付いたようだった。
「瑞穂。もしかしたら……、鬘がポロリなんて想像した?」
いきなりの直球で俺は慌てて……
それでも仕方なく頷いた。
「やっぱりな。実は俺も想像してたんだ。ホラ良くロッカーはヘッド何とかってやるだろう?」
「あぁ、ヘッドバンキングか?」
「あれやりながら、それでも必死に鬘を押さえてる兄貴を思い浮かべて……」
何処からか噛み殺したような笑い声が聞こえた。
良く見ると、それは木暮だった。
木暮の肩が小刻みに震えていた。
泣いている訳ではないのだ。
俺もそれを見ながら、遂に笑い出していた。
「写真見る?」
一頻り笑った後で、タイミング良く木暮が言ってくれた。
実は俺は写真の中身を確かめたくて此処に来たのだった。
そう……
金髪かどうか、自分の目で見て納得させるつもりだったのだ。
俺は中身が見たくて仕方なかった。
だから、すぐに表紙を開けた。
でも木暮が用意したアルバムの中にはこれと言った物はなかった。
(一体何を探すつもりなんだ? いや、判らない。でも何かしらあるはずだ)
俺は自問自答を繰り返していた。
「兄貴はロッカーになっても、茶髪には躊躇していたらしいんだ」
「ん、何で?」
「兄貴は又介護ヘルパーの仕事に戻るつもりだったって」
木暮の言葉を受け、俺は頷いた。
(そうだよな。奥さんのことを考えるとな)
俺は木暮の兄貴の気持ちが解った気でいた。
彼は茶髪も躊躇していた。
なのに金髪で……
しかも亡くなる時はスキンヘッドだった。
ボンドー原っぱもそうだったよな。
亡くなる直前に二人ともスキンヘッドになっていたんだ。
木暮の兄貴は確かに自分の遺志だ。
でもボンドー原っぱは違う。
ボンドー原っぱは一体誰にツルツル頭にさせられたのだろうか?
俺が考え事をしているの見て、木暮が肩を叩いた。
「兄貴が使っていた携帯電話があるけど見る?」
待ってましたとばかりに俺は頷いた。
「でもな……、中に写真は無いよ」
木暮が妙なことを言った。
「どう言うことがそれ?」
「だから削除されていたんだ」
「えっ、削除!?」
「うん、それしか考えられないんだ。それに記憶媒体も無くなっていたんだ」
「記憶媒体って、マイクロSDのことか?」
木暮は頷きながら席を外し、別のアルバムを持って来た。
でもその中にも変わった写真は無かった。
俺は結局、木暮の兄貴の携帯を手に取っていた。
削除されたと言う写真が物凄く気になったからだった。
削除された画像などあるはずもないのに。
まず電池パック上のカバーを外しマイクロSDを取り出そうとした。
でも其処には入っていなかった。
「おいお前、なにやってるんだ?」
木暮が言う。
「マイクロSDがないかと思って」
「そんな場所にはないよ。入り口は確か側面に付いていたかな?」
木暮が答えた。
俺は携帯電話の側面に付いているはずのマイクロSDの挿入口を見せてもらった。
確かに何も無かった。
幾ら指先で強く押してみてもマイクロSDは持ち上がっても来なかった。
その上、本体のカメラにも何も残されてはいなかった。
「でも普通撮るよね?」
俺の質問に木暮は頷いた。
俺はもう一度許可をもらって携帯を触ってみた。
売り出し中のロックグループのボーカルにしては古いタイプのを使用していた。
まずデータBOXを押す。
次にマイピクチャ。
次に上から検索開始。
カメラ。
インターネットモード。
デコメピクチャと来た時ヒットした。
映像が一枚だけ残っていたのだ。
「あ、アルバムか?」
俺は思い出したように言った。
「何だいそりゃ?」
「ホラ大切な写真をしまっておける機能だよ」
俺はそう言いながら、木暮の兄貴の携帯を触り始めた。
「ちょっと実験してみていい?」
俺の言葉に、木暮はしぶしぶ頷いた。
「いい? まず写真を撮って保存する」
俺はそう言いながら、携帯を木暮に向けて撮影した。
「メニューからデータBOX押して、マイピクチャーに合わせて又押す。ホラ、カメラって表示されるだろ?」
「そんなこと知ってるよ」
木暮が俺の説明にケチを付けた。
それでも俺は構わず続けた。
「そのカメラを押す。そうすればさっきの映像だ」
「それも知ってる」
「ちょっと黙って聞いてよ。それでさっきの映像を表示するだろう。その後メニューを押して、移動スラッシュコピーだ。ホラ一番上にアルバムへの移動が出るだろう。これを押すとデコメピクチャーになる」
俺はそう言いながら、画像を移動しますか? の《はい》を押した。
「さあ、画像点検だ」
俺はそう言いながらスイッチを切り、又さっきの順番通りに操作してデコメピクチャーにカーソルを移動させた。
あの女性と兄貴のツーショットの横に、木暮の写真が表示された。
「これが俺が言ったアルバムな意味だよ」
俺はその時、少し得意になっていた。
「そんな御託はいい。早くそのアルバムとかを見せろよ!」
木暮は急に怒り出した。
「あ、ごめん。まだ映像見せてなかったんだ」
俺は頭を掻きながら、携帯の画面を木暮に向けた。
木暮の兄貴はあの女性と笑っていた……。
「へー、この人が兄貴の奥さんか?」
木暮が言った。
「知らなかったのか?」
俺の質問に木暮は首を振った。
その時俺はスキンヘッドの男性の携帯にあったマイクロSDの画像を撮り込んでいたことを思い出していた。
自分の携帯でその画像をアップさせた。
二つに画面を見比べる。
やはり女性は同一人物だと思われた。
俺はそれを確認のために木暮にも見せていた。
「確か、全部削除されてたんだな?」
そう言った途端歯がガチガチと鳴り出した。
「瑞穂どうした?」
木暮が言う。
「お前の兄貴と同じ頭をしたヤツのことを思い出したんだ」
俺はワナワナと震えながら、此処を訪ねた本当の目的を語り始めた。
勿論しどろもどろだ。
自分で何を言ったのかさえ判らない。
それでも俺は必死だった。
何としてでも木暮に事件の真相を伝えなくてはいけないと思って……
「もしかしたら、原田とか言わなかった?」
木暮が言った。
(えっ、何故名前を知っているんだ。もしかしたら兄貴の知り合いか何かか?)
俺はそう思いながら、木暮の次の言葉を待った。
「もしソイツだったら、この前電話をくれた人だ」
木暮はそう言いながら、その時書いたと言うメモを固定電話の傍から持ってきた。
スキンヘッド……? ストーカー……?
そう読める走り書き。
木暮もきっと震えていたのだろうか?
その文字は乱れていた。
この探偵事務所のことは調べているようだった。
何処から噂を聞いたのだろうか?
叔父さんが元刑事だったことまで知っていた。
きっと、叔父さんを良く知っている人に紹介されたんだ。
俺はあの時勝手にそう思い込んでいた。
(そうか!? そうだったのか!? 木暮が教えたのか!?)
俺はあの日自転車で木暮の通っている高校を目指した。
その時、みずほの殺された真相や叔父さんが元刑事だったことを話してしたのだった。
でも木暮は電話をくれた男性が殺されたボンドー原っぱだとは知らなかった。
「ボンドー原っぱ!? えー、兄貴のことじゃ無かったのか!?」
やっと気付いた木暮は自分の書いたメモを見ながら震えだした。
「やっぱり……」
木暮が兄貴の携帯を見ながら言った。
「やっぱりって?」
「ほら此処」
木暮が指し示した携帯の履歴には原田学の文字があった。
木暮は兄貴の携帯電話を固定電話の傍に置いておいた。
もしかしたら木暮敦士に纏わる情報が入って来るかも知れないと思ったからだった。
「もしかしたら、原田学は兄貴の仲間なのかな?」
その質問に頷いた。
「そうだよ。原田はきっと仲間なんだ。だから名前が登録されていたんだ」
木暮はそう言った。
「さっき瑞穂がスキンヘッドだと言った時、もしかしたら兄貴のことか? なんて思ったんだ。だけど、その原田ってヤツが本当にスキンヘッドだったとは……」
(そうだった。本当はお前に話さなければいけないことがあったんだ)
俺は震え出した。
木暮を見ると、兄貴と俺の携帯の写真を交互に見ていた。
兄貴は確かにこの時は金髪だった。
照れくさそうでいて、優しさ溢れる笑顔だった。
「兄貴のこんな顔初めて見たよ」
木暮がポツリと言った。
そんな奴に、過酷な現実を告げなければいけない。
俺は身構えていた。
《俺はロックグループのボーカルだった。売れない時代から支えてくれた彼女が、俺の好みのちょいっとロングなチェーンを探してくれたんだ。しかも、ゴールドスカル付き。こんなカッコいいペンダントヘッドなんてそうざらにあるもんじゃない。》
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