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叔父に真実を・磐城瑞穂
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「このコンパクトは、俺が始めて叔父さんから貰った給料で買ったんだ」
「ちょっと待て、俺は給料なんかやった覚えはないぞ。お小遣いの間違いじゃないか?」
「何言ってるんだ。お小遣いじゃないよ。やだ忘れちゃったの?」
「そうだったか? あっ、思い出した。『さっきみずほちゃんがこのアパートを見ていたような気がする』って言った後だったな」
「そうだよ。俺は『嘘だーい』って言った。でも本当に見ていたようなんだ」
「やはりそうだったか?」
「うん。話し変わるけど、そのコンパクトにこんな文字が書いてあった。その文字が泣いていたんだ。みずほの心を……、みずほの痛みを俺に伝えようとしているかのように……その時俺の霊感が覚醒されたんだ」
「これは酷いな。みずほちゃんは虐められていたのか?」
その質問に首を振る。
叔父さんにはあの事件の真実をまだ話していなかったのだ。
「『今度は誰が死ぬんだろう?』ってクラスメートの町田百合子が言った時、『えっ!? ああ、例の三連続?』そう言ったのは、福田千穂だった』
「三連続?」
「そう三連続なんだ。この殺人ゲームは……このまま続くのか!? って俺は思った」
「殺人ゲームとはまた穏やかじゃないな。もしかしたらみずほちゃんはそれに巻き込まれたのか? 確か三連続で死が発生すると言う迷信があったな」
「所謂こじつけだけどね。一人が死に……次の人が死ぬ。そんな時、死が飛ぶとか言って恐れたのだったね。注意しろと言う暗示らしいけど、それを悪用されてみずほは殺されたんだ」
そう言った途端に涙が溢れてきた。
「ところで瑞穂。さっき福田千穂とか言わなかったか?」
「ごめん、叔父さん。千穂が死んだのは俺の責任なんだ。千穂は俺が好きだったらしい。でも俺はみずほに夢中で、千穂のことは眼中になかったんだ。だから町田百合子の悪巧みに乗ってしまったんだよ」
「町田百合子ってのは千穂ちゃんと一緒に屋上から落ちた娘か?」
「うん。町田百合子はある人のストーカーだったんだ」
「ストーカー! それはまた、穏やかじゃないな」
「そうなんだ。だからソイツの後を付け狙っていたんだ。その時、ソイツは『サッカーの試合に磐城瑞穂が来なければいいな』って言ったのを聞いて、俺を殺す気になったんだ」
「えっ!? 狙いは瑞穂だったのか? それだったら何故みずほちゃんが……」
「千穂が、望んだんだ。平仮名表記のキューピット様でいわきみずほって百合子が強引に書き込んだ時に」
「キューピット様って?」
「あっ、所謂コックリさんだよ」
「へー、懐かしい。ところで、まだそんなのが流行っているんか?」
「いや、町田百合子がいわきみずほって書くために始めたんだ。あれは鉛筆での自由表記だから」
「自由表記って?」
「キューピット様は他の邪悪な占いと違い、鉛筆を使用するんだ。その手軽さが小学生にうけて一気に広まったんだ。はい、いいえ。そのくらいしか要らないから」
「そう言えばコックリさんは確か十円玉だったな。鳥居の下に平仮名を全部書いた気がする」
「うん、そうだよ。それがないからキューピッド様は楽なんだよ。一人の女生徒が、藁半紙の上にハートマークを書く。そのハートの真ん中にへ百合子が矢を足したんだ」
「その時、いわきみずほって書かれたのか?」
「『この次に死ぬのは誰ですか?』って、あまりにも唐突な質問だった。でもみんな、鉛筆の先を見つめていた。そしてその答えが、いわきみずほだったって訳だ」
「いわきみずほって二人いるな」
「だから『そうだ。男なのか女なのか聞いてみて』そう言ったのが千穂だった」
「でも何でそんなことが解るんだ。まさか……」
「そう。みずほのコンパクトが熱をもち、俺に見させてくれたんだよ」
俺は更に泣き出した。
「そして放課後。岩城みずほは屋上へ呼び出されたんだ」
俺は声を詰まらせた。俺の感じた事柄を叔父に話しても良いのか戸惑っていたからだ。もう既に始めてしまったのに……
俺はみずほの返事を聞きたくなって、コンパクトを握り締めた。でも何も答えてはくれなかった。
「『昨日キューピット様を遣ったら、あんたが死のお告げがあったの。だからあんたは死ななきゃならない 』そう言いながら百合子がコンパクトを見せて、『恋人もあんたの死を望んでいる』と、徐々に屋上の柵に追い詰めて行ったんだ。俺は慌ててコンパクトを閉じた。それ以上見るのが怖くなったんだ」
やっと言えた。でもそれで叔父に伝わったかどうかは解らないけどね。
「瑞穂!!」
叔父は俺を抱き締めながら頭に手をやった。
「辞めてよ、叔父さん」
俺は照れくさそうにその手をほどいた。
「キューピッド様。聞こえは良いが、ようするに狐狗狸さんだ。狐に天狗に狸。邪悪な……そう思えてならなかった」
「以前何かの雑誌で読んだ事がある。キューピッド様だか解らないけど……。学校で遊んでいた時帰ってくれなくなったらしい。十円玉から指を離すと死が待っている。そう思い誰も帰れなくなったそうだ」
「その話は叔父さんから以前聞いたよ。『余りに帰宅の遅い子供を迎えに学校へ父兄達が集まった時は、みんな半狂乱になって泣きながら机を囲んでいた』と言っていたよ。実はキューピッド様は四人以上でやると厄を招くそうなんだ。あの時はそれ以上いたようだ」
「そんな邪悪な方法で、みずほちゃんの死がもてあそばれたって訳か?」
「そうだよ。だから俺は始めたヤツを許せないと思ったんだ」
「だから見えたのか? その時と同じように、あの男性のゴールドスカルのペンダントヘッドから……」
叔父の質問に頷いた。
不思議だった。
何故見えるのか、解らなかった。
俺が心を込めて贈ったコンパクトはみずほを綺麗にするためではない。
だってみずほは充分美しくセクシーだった。
セクシャルと言った方が正しいのかも知れない。
内面から湧き出す魅力がみずほにはあった。
この叔父の探偵事務所でアルバイトした初めての給料で買った物だった。だからみずほは心から喜んでくれたんだ。
「『瑞穂のためにもっと可愛い女性になるね』ってみずほは言ってくれた」
「いや、みずほちゃんは元々可愛かったよ」
叔父が言ってくれた。
「俺はみずほの残したコンパクトを通して事件の真相を知ろうとした。でも何故俺にそんな能力があるのだろう? それは俺自身も解らないから、きっとみずほの心が見せてくれたのだと思ったんだ」
「瑞穂に真実を伝えるために……かな?」
「でも、そしてそれが……新たなる悲劇への始まりになることなど……俺には知る由もなかった。そうこの事件はこのままでは終わるはずがなかった。三連続で死が発生する。これはまだ序章に過ぎなかったのだ」
「でもまさか千穂ちゃんが……」
「だから誰にも言わないで。全ては千穂を愛さなかった俺の責任なんだから……」
「違うよ瑞穂。千穂ちゃんは双子の兄妹みたいな存在だったからだよ。そんなに自分を責めるな」
叔父が言ってくれた。
「でも千穂の両親には言えないんだ。俺が千穂を愛さなかったためにみずほが殺されたなんて……俺って本当に腑甲斐無いヤツだよね?」
俺は叔父に救ってもらいたかっただけなのかも知れない。
それだけのために千穂も百合子のことも持ち出したのだ。
本当にいい加減なヤツなのだ。
「ちょっと待て、俺は給料なんかやった覚えはないぞ。お小遣いの間違いじゃないか?」
「何言ってるんだ。お小遣いじゃないよ。やだ忘れちゃったの?」
「そうだったか? あっ、思い出した。『さっきみずほちゃんがこのアパートを見ていたような気がする』って言った後だったな」
「そうだよ。俺は『嘘だーい』って言った。でも本当に見ていたようなんだ」
「やはりそうだったか?」
「うん。話し変わるけど、そのコンパクトにこんな文字が書いてあった。その文字が泣いていたんだ。みずほの心を……、みずほの痛みを俺に伝えようとしているかのように……その時俺の霊感が覚醒されたんだ」
「これは酷いな。みずほちゃんは虐められていたのか?」
その質問に首を振る。
叔父さんにはあの事件の真実をまだ話していなかったのだ。
「『今度は誰が死ぬんだろう?』ってクラスメートの町田百合子が言った時、『えっ!? ああ、例の三連続?』そう言ったのは、福田千穂だった』
「三連続?」
「そう三連続なんだ。この殺人ゲームは……このまま続くのか!? って俺は思った」
「殺人ゲームとはまた穏やかじゃないな。もしかしたらみずほちゃんはそれに巻き込まれたのか? 確か三連続で死が発生すると言う迷信があったな」
「所謂こじつけだけどね。一人が死に……次の人が死ぬ。そんな時、死が飛ぶとか言って恐れたのだったね。注意しろと言う暗示らしいけど、それを悪用されてみずほは殺されたんだ」
そう言った途端に涙が溢れてきた。
「ところで瑞穂。さっき福田千穂とか言わなかったか?」
「ごめん、叔父さん。千穂が死んだのは俺の責任なんだ。千穂は俺が好きだったらしい。でも俺はみずほに夢中で、千穂のことは眼中になかったんだ。だから町田百合子の悪巧みに乗ってしまったんだよ」
「町田百合子ってのは千穂ちゃんと一緒に屋上から落ちた娘か?」
「うん。町田百合子はある人のストーカーだったんだ」
「ストーカー! それはまた、穏やかじゃないな」
「そうなんだ。だからソイツの後を付け狙っていたんだ。その時、ソイツは『サッカーの試合に磐城瑞穂が来なければいいな』って言ったのを聞いて、俺を殺す気になったんだ」
「えっ!? 狙いは瑞穂だったのか? それだったら何故みずほちゃんが……」
「千穂が、望んだんだ。平仮名表記のキューピット様でいわきみずほって百合子が強引に書き込んだ時に」
「キューピット様って?」
「あっ、所謂コックリさんだよ」
「へー、懐かしい。ところで、まだそんなのが流行っているんか?」
「いや、町田百合子がいわきみずほって書くために始めたんだ。あれは鉛筆での自由表記だから」
「自由表記って?」
「キューピット様は他の邪悪な占いと違い、鉛筆を使用するんだ。その手軽さが小学生にうけて一気に広まったんだ。はい、いいえ。そのくらいしか要らないから」
「そう言えばコックリさんは確か十円玉だったな。鳥居の下に平仮名を全部書いた気がする」
「うん、そうだよ。それがないからキューピッド様は楽なんだよ。一人の女生徒が、藁半紙の上にハートマークを書く。そのハートの真ん中にへ百合子が矢を足したんだ」
「その時、いわきみずほって書かれたのか?」
「『この次に死ぬのは誰ですか?』って、あまりにも唐突な質問だった。でもみんな、鉛筆の先を見つめていた。そしてその答えが、いわきみずほだったって訳だ」
「いわきみずほって二人いるな」
「だから『そうだ。男なのか女なのか聞いてみて』そう言ったのが千穂だった」
「でも何でそんなことが解るんだ。まさか……」
「そう。みずほのコンパクトが熱をもち、俺に見させてくれたんだよ」
俺は更に泣き出した。
「そして放課後。岩城みずほは屋上へ呼び出されたんだ」
俺は声を詰まらせた。俺の感じた事柄を叔父に話しても良いのか戸惑っていたからだ。もう既に始めてしまったのに……
俺はみずほの返事を聞きたくなって、コンパクトを握り締めた。でも何も答えてはくれなかった。
「『昨日キューピット様を遣ったら、あんたが死のお告げがあったの。だからあんたは死ななきゃならない 』そう言いながら百合子がコンパクトを見せて、『恋人もあんたの死を望んでいる』と、徐々に屋上の柵に追い詰めて行ったんだ。俺は慌ててコンパクトを閉じた。それ以上見るのが怖くなったんだ」
やっと言えた。でもそれで叔父に伝わったかどうかは解らないけどね。
「瑞穂!!」
叔父は俺を抱き締めながら頭に手をやった。
「辞めてよ、叔父さん」
俺は照れくさそうにその手をほどいた。
「キューピッド様。聞こえは良いが、ようするに狐狗狸さんだ。狐に天狗に狸。邪悪な……そう思えてならなかった」
「以前何かの雑誌で読んだ事がある。キューピッド様だか解らないけど……。学校で遊んでいた時帰ってくれなくなったらしい。十円玉から指を離すと死が待っている。そう思い誰も帰れなくなったそうだ」
「その話は叔父さんから以前聞いたよ。『余りに帰宅の遅い子供を迎えに学校へ父兄達が集まった時は、みんな半狂乱になって泣きながら机を囲んでいた』と言っていたよ。実はキューピッド様は四人以上でやると厄を招くそうなんだ。あの時はそれ以上いたようだ」
「そんな邪悪な方法で、みずほちゃんの死がもてあそばれたって訳か?」
「そうだよ。だから俺は始めたヤツを許せないと思ったんだ」
「だから見えたのか? その時と同じように、あの男性のゴールドスカルのペンダントヘッドから……」
叔父の質問に頷いた。
不思議だった。
何故見えるのか、解らなかった。
俺が心を込めて贈ったコンパクトはみずほを綺麗にするためではない。
だってみずほは充分美しくセクシーだった。
セクシャルと言った方が正しいのかも知れない。
内面から湧き出す魅力がみずほにはあった。
この叔父の探偵事務所でアルバイトした初めての給料で買った物だった。だからみずほは心から喜んでくれたんだ。
「『瑞穂のためにもっと可愛い女性になるね』ってみずほは言ってくれた」
「いや、みずほちゃんは元々可愛かったよ」
叔父が言ってくれた。
「俺はみずほの残したコンパクトを通して事件の真相を知ろうとした。でも何故俺にそんな能力があるのだろう? それは俺自身も解らないから、きっとみずほの心が見せてくれたのだと思ったんだ」
「瑞穂に真実を伝えるために……かな?」
「でも、そしてそれが……新たなる悲劇への始まりになることなど……俺には知る由もなかった。そうこの事件はこのままでは終わるはずがなかった。三連続で死が発生する。これはまだ序章に過ぎなかったのだ」
「でもまさか千穂ちゃんが……」
「だから誰にも言わないで。全ては千穂を愛さなかった俺の責任なんだから……」
「違うよ瑞穂。千穂ちゃんは双子の兄妹みたいな存在だったからだよ。そんなに自分を責めるな」
叔父が言ってくれた。
「でも千穂の両親には言えないんだ。俺が千穂を愛さなかったためにみずほが殺されたなんて……俺って本当に腑甲斐無いヤツだよね?」
俺は叔父に救ってもらいたかっただけなのかも知れない。
それだけのために千穂も百合子のことも持ち出したのだ。
本当にいい加減なヤツなのだ。
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この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
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