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1章 ユスティニアの森
初戦闘
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「シュルルルルルルル……」
「な、なんだ……こいつ……」
茂みから出てきたモノを一目目にしただけで、全身の血の気が一瞬にして引いていった。
そして同時に、つい先ほど茂みが揺れていた内に一目散に逃げなかったことが、致命的なまでの間違いだったことを理解した。
茂みから出てきたのは全長70センチメートルを超える大きさの蜘蛛だったのだ。
元の世界にいた蜘蛛とは似てもにつかない、まぎれもない化け物がそこにいた。
「フシュルルルルルルルル……」
茂みから出てきた蜘蛛は口の先から消化液とも粘液とも分からない液を垂らしながら、この距離でもはっきりとその形状の分かる凶悪な牙でガチリ、ガチリと警告音を鳴らし続けている。
「なるほど、こういう事か……」
ずっと頭の中で引っ掛かり続けていた『どうせ何割かは直ぐに死ぬ』というロザリアの言葉。
その意味は餓死でも病気でもなく、こういった"化け物"に食われて死ぬということだ。
この世界は、こういう化け物が出てくる世界なのだ。本当に碌でもない世界に送られたらしい。
(こんな化け物を狩るだって?狩られるの間違いだろ?)
つい先ほどまで考えていた、あまりにも楽観的な考えに笑いが込み上げてくる。
「どうする……今から逃げるか?いや、刺激するのは危険か……?」
蜘蛛はというと、こちらを見つめがら牙を鳴らして威嚇する動きを見せている。既にこちらを認識しているということだ。
(背中を見せるのはなんとなく危ない気がする……蜘蛛の方を向いたまま距離を取ろう)
これならば蜘蛛の様子を見ながら距離を取れる。蜘蛛がこちらに襲いかかってくるつもりなら急いで逃げればいい。このまま離れられるならそれが一番だ。
蜘蛛を視線を逸らさずにじりじりと一歩後ろに下がる。
「シュルルルルルルル……プッ!」
後ろへ下がろうと一歩後ずさった瞬間、蜘蛛がこちらに向けて糸とも粘液とも取れない物体をこちらに向けて吐き出してきた。
「うぉっ!?」
蜘蛛の吐いてきた粘液を飛び退いてギリギリ避ける。
(あの大きさで遠距離手段まで持っているのかよ……しかも、かなり速い!)
そして今のではっきりした。
この蜘蛛はこちらに対して明確な敵意を持っている。いや、もしかすると敵意すらなく単なる獲物としか認識していないのかもしれない。
ノコノコと自分の前に現れた獲物が、今度は逃げ出す素振りを見せたからまずは捕獲することにしたのだ。
何にせよ、これからこの化け物が俺の事を捕食しにかかってくるのが確定してしまった。
(やばいな……)
額から流れた汗が、長くなった髪先を伝っていくのを感じる。
おそらくあの粘液は獲物を拘束し、動けなくするためのものだ。
元の世界の蜘蛛の糸ですら粘着力と意外な強度があり、自分の何倍も大きい獲物を捕まえたりもするのだ。ましてあのサイズの蜘蛛が吐き出す糸の粘着力や強度が元の世界の蜘蛛と同等である筈がない。
もし仮にでもあの粘糸に捕まった後のことは……考える必要すらないだろう。
あの糸に捕まることは即ち死を意味する。
(逃げ――駄目だ!背中を向ければあの糸を避けられない!どうする……どうする……?)
一度死を意識し始めると手足は震え出し、鼓動は早くなっていくのを感じる。
死が近づいているのを、今まで何度も回収しそこなった生を収穫しに、まるで巨大な死神の大鎌が、喉元まで差し掛かってくるのを感じる。
(死神の、大鎌――)
チラリと、手元に握っている先ほど拾った禍々しい大鎌を見る。
(背中を見せて逃げることは不可能……このまま避け続けていればいつかは糸に捕まる……この場を凌ぐには、生き残るには……正面からあの蜘蛛を倒すほかにない)
「――プッ!!」
蜘蛛が放つ糸を避け、三度深呼吸。
「すー、はー……すー、はー……すー、はー……」
(……良し、だいぶ冷静になってきた。蜘蛛が粘糸を放ってからまた粘糸を放ってくるまでには微妙に”間隔”がある。一度粘糸を吐き出して空っぽになった口内に再度体内の粘液を含ませるのに時間がかかるんだろう)
あの蜘蛛を倒すとしたら、粘糸を避けたうえで再び粘液を口内に含ませる前に直接本体を攻撃するしかない。
最悪倒せなくても良い。粘糸を吐き出せないほどダメージを与えられればそれでいい。
「――プッ!!」
(……今だ!)
チャージタイムが終わり、蜘蛛が放ってきた粘糸を避けると全力で蜘蛛に向けて駆け出した。
(良し……!ここまでは上手くいった、問題は次だ。走りながら次の"第二弾"を避ける必要がある。それを避けることができれば、あとは糸を吐き切った本体を――)
「――プッ!!ププッ!!」
「なっ――――!」
再び蜘蛛によって吐き出された粘糸を見て、思考が一瞬止まった。
(粘糸を小分けにして吐いてきた!?)
予想外だったのは、接近する俺に対して思ったよりも早く蜘蛛が対応してきたことだった。
今まで口内に含んでいた粘糸を一度に吐き出していたのを、小さく小分けにして吐き出してきたのだ。
そう、人ひとり捕獲するのに人ほどの大きさの粘糸を当てる必要なんてない。小石ほどの大きさの粘糸でも、手か足にでも掠りでもすればそれだけで十分なのだ。
身体についた粘糸はやがて服や地面にも絡みついて、段々と機動力は落ちていく。
もはや、糸に捕まらずに蜘蛛まで近づくのは不可能になった。
一つだけならまだしも、高速で向かってくる蜘蛛の粘糸の全てを避けきることなんてこと、できるわけがない。
必ずどれか一つに当たってしまう。
(あれ、もしかして。俺、このまま死――)
恐怖と焦りが思考を覆いつくして、上手く考えが纏まらない。
つまり、これから俺は死んで……何もかも、ここで終わる?
終わりのない理不尽も、この下らない人生も……?
……惨めなまま?
「――冗談じゃない……」
思わずそう呟いてから、そんなことを口走った自分自身に驚いた。
本当に怖かったのは、おそらく死ぬことなんかじゃなかった。
理不尽に、不条理に負け続けたまま終わることの方が、遥かに怖かったのだ。
……ああ、今さら、そんな簡単なことに気がつくなんて。
迫る死の間際、最期の最後の刹那。閉じ込め続けていた自分の本音に気がついたその瞬間――
自分を縛り続けていた鎖が、音を立てて砕け散ったような気がした。
思考を覆いつくしていた恐怖も焦りもいつの間にか消え失せて、顔を上げ迫る蜘蛛の糸を見据えれば――
――高速で迫ってきていた筈の蜘蛛の糸は、恐ろしくゆっくりと近づいているように見えた。
「は――――?」
(……蜘蛛の糸が、急に減速した?)
いや、違う。蜘蛛の糸も、蜘蛛も、俺も、全てが遅くなっている。
つまりは、体感時間そのものが遅くなっている
これなら――高速で迫る蜘蛛の糸でさえ、避けることができる。
スローモーションで迫る蜘蛛の糸、四発その全てを避け切ると、本体の蜘蛛に肉薄した。
「キシャアアアアアアアア!!」
遠距離の手段である糸を全て避けられ、接近された蜘蛛が大顎を開けて襲いかかってくる。
毒は持っているかは分からない。
そもそも、このサイズの大顎で噛みつかれてただで済む筈がない。
(……やばい!怖い!ここまで近づいたんだから攻撃しないと!!いやそもそもこんなに軽い鎌で碌なダメージを与えられるのか!?いや、だとしてももうやるしか――)
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
恐怖と焦りと疑念でパニックになる思考の中、そんなこともおかまいなしに大顎で噛みつかんと飛びかかってくる蜘蛛に向かって、半狂乱になりながら無我夢中で深紅の大鎌を振り下ろした。
「グギッ!!」
振り下ろした大鎌が蜘蛛の胴体に触れると、蜘蛛の体はその刃に触れた箇所からスライスチーズのように裂けてった。
深紅の大鎌は蜘蛛の体を何の抵抗もなく切断し、そのまま蜘蛛の胴体を真っ二つに両断した。
「ギ、ギギ、ギ……」
腹を裂かれた蜘蛛は泡を吹いてピクピクと全身を痙攣させた後、やがて動かなくなった。
「はあ……はあ…………勝った……?絶対死んだと思った……は、はは……」
息も絶え絶え、長くなってしまった髪はグシャグシャに、顔は涙でボロボロになっている。
とても人には見せられない有様だ。
それでも、生き残った。
そのまま苔むした地面に仰向けに倒れこむと、気づいた時にはもう笑い出していた。
「は、ははっ、あーっはっはっはっはっはっは!!」
生きている。命がある。
心のなかではありとあらゆる感情が爆発していた。
恐怖、焦燥感から解放され、ありえない程の危機を乗り越えて、理不尽に抗ってやったぞ。
はは、ざまあみろ。時空の魔女ロザリア。
誰がお前のお望みどうりに死んでやるものか。何もかも思い通りに行くと思うなよ。
とっくに笑い方なんて忘れていると思っていたのだが、今はただ、腹の底から湧き上がる高揚感を抑えきれなかった。
枝葉の隙間から木漏れ日が差し込んで、仰向けに寝転んだ顔に陽があたる。
異世界でも空は青かった。
「な、なんだ……こいつ……」
茂みから出てきたモノを一目目にしただけで、全身の血の気が一瞬にして引いていった。
そして同時に、つい先ほど茂みが揺れていた内に一目散に逃げなかったことが、致命的なまでの間違いだったことを理解した。
茂みから出てきたのは全長70センチメートルを超える大きさの蜘蛛だったのだ。
元の世界にいた蜘蛛とは似てもにつかない、まぎれもない化け物がそこにいた。
「フシュルルルルルルルル……」
茂みから出てきた蜘蛛は口の先から消化液とも粘液とも分からない液を垂らしながら、この距離でもはっきりとその形状の分かる凶悪な牙でガチリ、ガチリと警告音を鳴らし続けている。
「なるほど、こういう事か……」
ずっと頭の中で引っ掛かり続けていた『どうせ何割かは直ぐに死ぬ』というロザリアの言葉。
その意味は餓死でも病気でもなく、こういった"化け物"に食われて死ぬということだ。
この世界は、こういう化け物が出てくる世界なのだ。本当に碌でもない世界に送られたらしい。
(こんな化け物を狩るだって?狩られるの間違いだろ?)
つい先ほどまで考えていた、あまりにも楽観的な考えに笑いが込み上げてくる。
「どうする……今から逃げるか?いや、刺激するのは危険か……?」
蜘蛛はというと、こちらを見つめがら牙を鳴らして威嚇する動きを見せている。既にこちらを認識しているということだ。
(背中を見せるのはなんとなく危ない気がする……蜘蛛の方を向いたまま距離を取ろう)
これならば蜘蛛の様子を見ながら距離を取れる。蜘蛛がこちらに襲いかかってくるつもりなら急いで逃げればいい。このまま離れられるならそれが一番だ。
蜘蛛を視線を逸らさずにじりじりと一歩後ろに下がる。
「シュルルルルルルル……プッ!」
後ろへ下がろうと一歩後ずさった瞬間、蜘蛛がこちらに向けて糸とも粘液とも取れない物体をこちらに向けて吐き出してきた。
「うぉっ!?」
蜘蛛の吐いてきた粘液を飛び退いてギリギリ避ける。
(あの大きさで遠距離手段まで持っているのかよ……しかも、かなり速い!)
そして今のではっきりした。
この蜘蛛はこちらに対して明確な敵意を持っている。いや、もしかすると敵意すらなく単なる獲物としか認識していないのかもしれない。
ノコノコと自分の前に現れた獲物が、今度は逃げ出す素振りを見せたからまずは捕獲することにしたのだ。
何にせよ、これからこの化け物が俺の事を捕食しにかかってくるのが確定してしまった。
(やばいな……)
額から流れた汗が、長くなった髪先を伝っていくのを感じる。
おそらくあの粘液は獲物を拘束し、動けなくするためのものだ。
元の世界の蜘蛛の糸ですら粘着力と意外な強度があり、自分の何倍も大きい獲物を捕まえたりもするのだ。ましてあのサイズの蜘蛛が吐き出す糸の粘着力や強度が元の世界の蜘蛛と同等である筈がない。
もし仮にでもあの粘糸に捕まった後のことは……考える必要すらないだろう。
あの糸に捕まることは即ち死を意味する。
(逃げ――駄目だ!背中を向ければあの糸を避けられない!どうする……どうする……?)
一度死を意識し始めると手足は震え出し、鼓動は早くなっていくのを感じる。
死が近づいているのを、今まで何度も回収しそこなった生を収穫しに、まるで巨大な死神の大鎌が、喉元まで差し掛かってくるのを感じる。
(死神の、大鎌――)
チラリと、手元に握っている先ほど拾った禍々しい大鎌を見る。
(背中を見せて逃げることは不可能……このまま避け続けていればいつかは糸に捕まる……この場を凌ぐには、生き残るには……正面からあの蜘蛛を倒すほかにない)
「――プッ!!」
蜘蛛が放つ糸を避け、三度深呼吸。
「すー、はー……すー、はー……すー、はー……」
(……良し、だいぶ冷静になってきた。蜘蛛が粘糸を放ってからまた粘糸を放ってくるまでには微妙に”間隔”がある。一度粘糸を吐き出して空っぽになった口内に再度体内の粘液を含ませるのに時間がかかるんだろう)
あの蜘蛛を倒すとしたら、粘糸を避けたうえで再び粘液を口内に含ませる前に直接本体を攻撃するしかない。
最悪倒せなくても良い。粘糸を吐き出せないほどダメージを与えられればそれでいい。
「――プッ!!」
(……今だ!)
チャージタイムが終わり、蜘蛛が放ってきた粘糸を避けると全力で蜘蛛に向けて駆け出した。
(良し……!ここまでは上手くいった、問題は次だ。走りながら次の"第二弾"を避ける必要がある。それを避けることができれば、あとは糸を吐き切った本体を――)
「――プッ!!ププッ!!」
「なっ――――!」
再び蜘蛛によって吐き出された粘糸を見て、思考が一瞬止まった。
(粘糸を小分けにして吐いてきた!?)
予想外だったのは、接近する俺に対して思ったよりも早く蜘蛛が対応してきたことだった。
今まで口内に含んでいた粘糸を一度に吐き出していたのを、小さく小分けにして吐き出してきたのだ。
そう、人ひとり捕獲するのに人ほどの大きさの粘糸を当てる必要なんてない。小石ほどの大きさの粘糸でも、手か足にでも掠りでもすればそれだけで十分なのだ。
身体についた粘糸はやがて服や地面にも絡みついて、段々と機動力は落ちていく。
もはや、糸に捕まらずに蜘蛛まで近づくのは不可能になった。
一つだけならまだしも、高速で向かってくる蜘蛛の粘糸の全てを避けきることなんてこと、できるわけがない。
必ずどれか一つに当たってしまう。
(あれ、もしかして。俺、このまま死――)
恐怖と焦りが思考を覆いつくして、上手く考えが纏まらない。
つまり、これから俺は死んで……何もかも、ここで終わる?
終わりのない理不尽も、この下らない人生も……?
……惨めなまま?
「――冗談じゃない……」
思わずそう呟いてから、そんなことを口走った自分自身に驚いた。
本当に怖かったのは、おそらく死ぬことなんかじゃなかった。
理不尽に、不条理に負け続けたまま終わることの方が、遥かに怖かったのだ。
……ああ、今さら、そんな簡単なことに気がつくなんて。
迫る死の間際、最期の最後の刹那。閉じ込め続けていた自分の本音に気がついたその瞬間――
自分を縛り続けていた鎖が、音を立てて砕け散ったような気がした。
思考を覆いつくしていた恐怖も焦りもいつの間にか消え失せて、顔を上げ迫る蜘蛛の糸を見据えれば――
――高速で迫ってきていた筈の蜘蛛の糸は、恐ろしくゆっくりと近づいているように見えた。
「は――――?」
(……蜘蛛の糸が、急に減速した?)
いや、違う。蜘蛛の糸も、蜘蛛も、俺も、全てが遅くなっている。
つまりは、体感時間そのものが遅くなっている
これなら――高速で迫る蜘蛛の糸でさえ、避けることができる。
スローモーションで迫る蜘蛛の糸、四発その全てを避け切ると、本体の蜘蛛に肉薄した。
「キシャアアアアアアアア!!」
遠距離の手段である糸を全て避けられ、接近された蜘蛛が大顎を開けて襲いかかってくる。
毒は持っているかは分からない。
そもそも、このサイズの大顎で噛みつかれてただで済む筈がない。
(……やばい!怖い!ここまで近づいたんだから攻撃しないと!!いやそもそもこんなに軽い鎌で碌なダメージを与えられるのか!?いや、だとしてももうやるしか――)
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
恐怖と焦りと疑念でパニックになる思考の中、そんなこともおかまいなしに大顎で噛みつかんと飛びかかってくる蜘蛛に向かって、半狂乱になりながら無我夢中で深紅の大鎌を振り下ろした。
「グギッ!!」
振り下ろした大鎌が蜘蛛の胴体に触れると、蜘蛛の体はその刃に触れた箇所からスライスチーズのように裂けてった。
深紅の大鎌は蜘蛛の体を何の抵抗もなく切断し、そのまま蜘蛛の胴体を真っ二つに両断した。
「ギ、ギギ、ギ……」
腹を裂かれた蜘蛛は泡を吹いてピクピクと全身を痙攣させた後、やがて動かなくなった。
「はあ……はあ…………勝った……?絶対死んだと思った……は、はは……」
息も絶え絶え、長くなってしまった髪はグシャグシャに、顔は涙でボロボロになっている。
とても人には見せられない有様だ。
それでも、生き残った。
そのまま苔むした地面に仰向けに倒れこむと、気づいた時にはもう笑い出していた。
「は、ははっ、あーっはっはっはっはっはっは!!」
生きている。命がある。
心のなかではありとあらゆる感情が爆発していた。
恐怖、焦燥感から解放され、ありえない程の危機を乗り越えて、理不尽に抗ってやったぞ。
はは、ざまあみろ。時空の魔女ロザリア。
誰がお前のお望みどうりに死んでやるものか。何もかも思い通りに行くと思うなよ。
とっくに笑い方なんて忘れていると思っていたのだが、今はただ、腹の底から湧き上がる高揚感を抑えきれなかった。
枝葉の隙間から木漏れ日が差し込んで、仰向けに寝転んだ顔に陽があたる。
異世界でも空は青かった。
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