[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

花と石鹸（おまけ）

 月明かりが照らす秋の夜。



「……thank you for calling .good-bye」
 
 牧野  亮は慣れない挨拶で電話を切り、ため息をついた。

 亮は今、恋人のマンションにいる。
 明日には海外出張でロンドンに行く為、泊まらせてもらっている。急な宿泊だ。本当はあさって日本を旅立つ予定になっていたが、トラブルがあり2日前倒しになってしまった。
 出張は6日間。恋人ともしばしの別れとなる。亮は明日直接空港に向かえるよう出張の荷物も持ってきていた。

 亮はメンズモデルのエージェントをしている。さっきの電話も、協力会社の人間からだった。
 ロンドンのファッションウィーク期間中、現地でモデルのサポートをするのが彼の仕事である。しかし約束していたオートクチュール ブランドが今になってモデル使用のキャンセルを出してきた。
 相手は大手なだけにぶら下がっても交渉をしたかった。同時に急いで他のオーディションを受けていかなければいけない。亮は今すぐにでも現地に行きたかった。

 「……はあ、滑ってるかあ……」

 亮は自前のモードリストを睨み付ける。
 スベるというのは、モデルの雰囲気と今期のモードのイメージがズレているという意味だ。専属モデルのイメージ戦略も練り直しが必要だった。亮は急いでsnsの検索ワードにrfwと入力する。開いた先にはロンドンファッションウィークの写真がアップされている。


 一瞬スマホの画面が乱れ、手元から抜けた。取り上げられた手には何もない。

 スマホを取り上げたのはこの部屋の住人でもあり、恋人の高瀬 優璃だった。