上 下
11 / 49

想いは箱の中に2

しおりを挟む
 中学の時の亮は、ずっと高瀬の妄想の中で生きてきた。
 自身の生活の中で、思わず声の出るような美しい景色に出会えた時、彼が隣にいてくれたらいいのにと感じた。
 好きな音楽に出会えた時、すぐさま彼と共有したいと思った。

 亮の眼下に大都会の眺望が広がる。

(こんなに遠くまで来たのに、まだこんな酸っぱい想いを感じるなんて…)

 亮は、この都会の空が若き思い出の詰まった中学の校舎まで繋がっているような錯覚すら覚えた。



「牧野さんお待たせ!」

(…!)

「…おう」

 目の前にすらりとした少年が立っている。

(…スバル…相変わらず決まってるよな…)

 はにかんだ美しい少年は、担当の新人モデルのスバルだった。

「…明日何時だ?…オーディションだろ?」

「…うん」

 アメリカと日本のハーフで、モデル歴も浅い。ポージングもまだぎこちない新人だが、見た目の存在感は他より群を抜いている。

 スバルと同じエレベーターに乗り込む。
 そして、亮はスバルの違和感に気づいた。

(…こいつ……)

 窓を眺めるスバルの様子から察するに、前回落ちたオーディションを引きずっているのだろう。今日のプロフィール撮りの撮影もわりとナーバスになっていた。

 エレベーターが各階に停まり、人が出入りする。
 スバルは直帰の為、駅方面の2階で降りる。亮とはその階で別れる予定だ。
降下するエレベーター内は満員にもかかわらず、とても静かだった。亮はスバルの腰にそっと手をやる。

「大丈夫」

「絶対に上手くいく!」

 亮は思ったままの言葉を呟いた。

 エレベーターが2階に止まり、扉が開く。
どっと乗客が出口に流れだす。

「…知ってるよ…」

 スバルは笑って答えた。
 美人が一層際立つ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡くんの憂鬱

BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。 ――――――‥ ――… もう、うんざりしていた。 俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど… こうも、 堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの- 『別れてください』 だから、俺から別れを切り出した。 それから、 俺の憂鬱な日常は始まった――…。

おれの大好きなイケメン幼なじみは、何故だか毎回必ず彼女にフラれてしまうんです。

そらも
BL
周囲(主に彼女)に被害をまき散らしまくる、鈍感幼なじみの恵ちゃんとりょうくんのある日のお話。 「これ、絶対、モグ、んっ迷宮入りの大事件だよねっモグモグっ」 「な~…俺チャラく見えて、結構尽くすほうだってのに…っと、まぁたほっぺにパンくずつけてんぞ。ほらっこっち向け」 「んむっ、ありがと~恵ちゃん。へへっ」 「ったく、ほんとりょうは俺がついてないとダメだなぁ♡」 「え~♡」 ……終始こんな感じの、(彼女にとって)悪魔のような二人組の惚気全開能天気会話劇であります。 今回はまさかの初めてのR-18じゃない普通のBL話です。連載ものですが短編予定ですので、多分すぐに終わります。 ぶっちゃけ言うと、ちゅうさえもしません(マジかい)最後まで鈍感です。 それでもオッケーという方は、どうぞお暇つぶしに読んでやってくださいませ♪ ※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。 浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。 攻め:浅宮(16) 高校二年生。ビジュアル最強男。 どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。 受け:三倉(16) 高校二年生。平凡。 自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

処理中です...