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19 光る君、磯から磯へお引越し!?
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自分たちを乗せた船が、今度は反対の方角へと船出する。
今までこちら向きに吹いていた風も、またもや向きを変えて順調に船は進み
仲良くなったおいちゃん達が、
住み慣れた浜が、、
どんどん小さくなってゆく、、、
感慨深く眺めていたが、明石の入道に船内へと案内され、結構に設えられた上座に落ち着いた。
綿の沢山入った上等な絹の褥、ご丁寧に御簾まで用意されている。
用意周到な上に随分と裕福な御仁のようだ。
傍らに惟光達が控える中、改めて丁重な挨拶を受け、思いがけぬ事が伝えられた。
なんと入道によると、遠縁ながら自分の一族の端に列なるとのこと。
えっ親戚なの!?
聞くと入道は前の播磨守で、元は近衛中将だったのにわざわざ地方の国守になり、任期が過ぎた後も都へ帰らずこの片田舎に住み着いた変わり者だ。
先祖は大臣にもなった家柄らしいが、本人は朝廷の人間関係に馴染めなかったんだと。
何だか分かるなあ。
母様、桐壺の更衣は按察の大納言の娘だった。
大納言は入道の叔父に当るらしい。
なるほど入道と母様はいとこ同士になるのか。
確かに親戚だ・・・
なら良かったぁー。
実はいくら困っているからと言っても、身分の低い地方の長官程度だった者の所に身を寄せるなんぞ、どんどん落ちぶれてくみたいで沽券に関わるかな、と、薄っすら思ってたんだ。
あの不思議な波や父様の夢を見なかったら一緒に来るなんて考えなかったろう。
でもまあ、親戚だったなら逗留しても不自然じゃないよね、、。
などと失礼極まりない自分勝手な思いを巡らしてたら、良清が居心地悪そうに後にひっ込んでいるのが目に付いた。
ん?
良清どしたの?
そんな隅っこで小さくなってさ?
すると、入道が良清に会釈して下がっていった。
良清に知り合いだったのかと尋ねるとバツが悪そうに言葉を濁す。
何だかいわくがありそうだ。
その場は知らんぷりして、後から惟光にこっそり訪ねてみた。
惟光が言うには良清がまだこちらに居た時分に、この辺りで大変な美女だと噂の、入道の娘に求婚したことがあったんだと。
良清の父親も播磨守を勤めた事があったため、身分的には釣り合いも取れていた縁談だが、入道が一顧だにせず全く相手にされなかったとのこと。
どうやら入道には自分の身分も顧みず娘を高貴な人物に嫁がせて、家運の隆盛を願う野望があるそうな。
良清だけでなく、近隣の豪族なども軒並み断られていて、大それた願いに龍神に嫁がせたいのかなどと揶揄するものもいたらしい。
へえーそーなんだ。
美しい娘ねえ。
でもまあ親ってのは大体娘の器量を盛って話すもんだし、こんな片田舎じゃ例え容姿が美しくとも教養の方はしれてんじゃないの?
まさか早口の浜言葉は流石に無いと思うけどねぇ・・・
航海は順調で追い風にも助けられ、無事明石に到着した。
明石の浜にほど近い、浜の邸とやらに案内されたが、このような片田舎とは思えないほどの造りに驚いた。
広い敷地内には庭園はもちろん東屋やお堂などもあり、京の都にもこれほどの屋敷はそうそうなかろうと思った程だった。
明石の港も須磨と違い、大きな商館や蔵があちこち建てられていて、活気がある貿易拠点だった。
あののんびりした須磨の浜とは同じ雛の地でもエラい違いだなあ。
港には人の往来も多く賑やかな雰囲気に圧倒されたが、こちらの浜の邸を我々専用にして、他の家族は程近い、別邸の岡部の邸に移したと聞き、大層な気遣いに謝意を示した。
へえー思ったよりすごいじゃん。
これなら気兼ねなく過ごせそうだ。
美人の娘とやらが岡部に行っちゃったのは残念だけどね。
下働きや炊事係も用意してくれていたので惟光達は大喜びだ。
今まで雑事も全部自分達でこなしていたものな。
ご苦労さん。
さて、邸の案内も一段落し、入道も一旦岡部の様子を見てくるとのことで下がったので改めて今までの経緯などを考えてみた。
あの祈祷師を呼んで以降何だかスピリチュアルな雰囲気に流された感があるが、冷静に考えてみるといくらお告げとはいえ、明石の入道が皇太后の手先では無いという証拠もないし、血縁云々もまだ分からぬ。
惟光はいつも通りお気楽な様子で素直に喜んでいるが、しばらくは警戒して過ごす方が良さそうだ。
雑用はともかく食事は手伝いの体で監視させるか、、
惟光達には警戒してるって知らせないほうがいいな。
モロバレするだろ。
「おーい惟光ぅ!
食事はしばらく惟光頑張ってくれなッ。
ほらぁお前の料理メチャうまじゃん?!
これからは厨房男子がイケてるって時代だからさッ!」
・・・ハイ惟光嬉しそうに厨房にすっ飛んでった。
これで毒の心配はしなくて良さそうだ・・
しかし惟光チョロすぎだろ。
このまま側近にしてて大丈夫か?
まあ、ともかくこれだけの準備をして迎えてくれたんだ。
ゆっくり滞在しながら慎重に探るとしよう。
今までこちら向きに吹いていた風も、またもや向きを変えて順調に船は進み
仲良くなったおいちゃん達が、
住み慣れた浜が、、
どんどん小さくなってゆく、、、
感慨深く眺めていたが、明石の入道に船内へと案内され、結構に設えられた上座に落ち着いた。
綿の沢山入った上等な絹の褥、ご丁寧に御簾まで用意されている。
用意周到な上に随分と裕福な御仁のようだ。
傍らに惟光達が控える中、改めて丁重な挨拶を受け、思いがけぬ事が伝えられた。
なんと入道によると、遠縁ながら自分の一族の端に列なるとのこと。
えっ親戚なの!?
聞くと入道は前の播磨守で、元は近衛中将だったのにわざわざ地方の国守になり、任期が過ぎた後も都へ帰らずこの片田舎に住み着いた変わり者だ。
先祖は大臣にもなった家柄らしいが、本人は朝廷の人間関係に馴染めなかったんだと。
何だか分かるなあ。
母様、桐壺の更衣は按察の大納言の娘だった。
大納言は入道の叔父に当るらしい。
なるほど入道と母様はいとこ同士になるのか。
確かに親戚だ・・・
なら良かったぁー。
実はいくら困っているからと言っても、身分の低い地方の長官程度だった者の所に身を寄せるなんぞ、どんどん落ちぶれてくみたいで沽券に関わるかな、と、薄っすら思ってたんだ。
あの不思議な波や父様の夢を見なかったら一緒に来るなんて考えなかったろう。
でもまあ、親戚だったなら逗留しても不自然じゃないよね、、。
などと失礼極まりない自分勝手な思いを巡らしてたら、良清が居心地悪そうに後にひっ込んでいるのが目に付いた。
ん?
良清どしたの?
そんな隅っこで小さくなってさ?
すると、入道が良清に会釈して下がっていった。
良清に知り合いだったのかと尋ねるとバツが悪そうに言葉を濁す。
何だかいわくがありそうだ。
その場は知らんぷりして、後から惟光にこっそり訪ねてみた。
惟光が言うには良清がまだこちらに居た時分に、この辺りで大変な美女だと噂の、入道の娘に求婚したことがあったんだと。
良清の父親も播磨守を勤めた事があったため、身分的には釣り合いも取れていた縁談だが、入道が一顧だにせず全く相手にされなかったとのこと。
どうやら入道には自分の身分も顧みず娘を高貴な人物に嫁がせて、家運の隆盛を願う野望があるそうな。
良清だけでなく、近隣の豪族なども軒並み断られていて、大それた願いに龍神に嫁がせたいのかなどと揶揄するものもいたらしい。
へえーそーなんだ。
美しい娘ねえ。
でもまあ親ってのは大体娘の器量を盛って話すもんだし、こんな片田舎じゃ例え容姿が美しくとも教養の方はしれてんじゃないの?
まさか早口の浜言葉は流石に無いと思うけどねぇ・・・
航海は順調で追い風にも助けられ、無事明石に到着した。
明石の浜にほど近い、浜の邸とやらに案内されたが、このような片田舎とは思えないほどの造りに驚いた。
広い敷地内には庭園はもちろん東屋やお堂などもあり、京の都にもこれほどの屋敷はそうそうなかろうと思った程だった。
明石の港も須磨と違い、大きな商館や蔵があちこち建てられていて、活気がある貿易拠点だった。
あののんびりした須磨の浜とは同じ雛の地でもエラい違いだなあ。
港には人の往来も多く賑やかな雰囲気に圧倒されたが、こちらの浜の邸を我々専用にして、他の家族は程近い、別邸の岡部の邸に移したと聞き、大層な気遣いに謝意を示した。
へえー思ったよりすごいじゃん。
これなら気兼ねなく過ごせそうだ。
美人の娘とやらが岡部に行っちゃったのは残念だけどね。
下働きや炊事係も用意してくれていたので惟光達は大喜びだ。
今まで雑事も全部自分達でこなしていたものな。
ご苦労さん。
さて、邸の案内も一段落し、入道も一旦岡部の様子を見てくるとのことで下がったので改めて今までの経緯などを考えてみた。
あの祈祷師を呼んで以降何だかスピリチュアルな雰囲気に流された感があるが、冷静に考えてみるといくらお告げとはいえ、明石の入道が皇太后の手先では無いという証拠もないし、血縁云々もまだ分からぬ。
惟光はいつも通りお気楽な様子で素直に喜んでいるが、しばらくは警戒して過ごす方が良さそうだ。
雑用はともかく食事は手伝いの体で監視させるか、、
惟光達には警戒してるって知らせないほうがいいな。
モロバレするだろ。
「おーい惟光ぅ!
食事はしばらく惟光頑張ってくれなッ。
ほらぁお前の料理メチャうまじゃん?!
これからは厨房男子がイケてるって時代だからさッ!」
・・・ハイ惟光嬉しそうに厨房にすっ飛んでった。
これで毒の心配はしなくて良さそうだ・・
しかし惟光チョロすぎだろ。
このまま側近にしてて大丈夫か?
まあ、ともかくこれだけの準備をして迎えてくれたんだ。
ゆっくり滞在しながら慎重に探るとしよう。
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