君と空の下

花森 雲空

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仕事をやめて

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10月になり、秋がやってきた。

紅葉狩りはできないけれど、闇家業【ミマワリ】が忙しくなってきたので、千冬は仕事をやめ、私も21歳になったことをきっかけに、ユーチューバーをやめた。

闇狩りになることを決意したのだ。

「なあ、今日のおっさんの葬式荒らしの仕事、まだ楽で良かったよな。かすり傷ですんだし」



かすり傷でも、毒塗られてたらアウトよ。

「今日は休みでしょ?何かしないの?ご飯できたから食べて帰って」

私は夕方から単独の仕事が入っていた。
豪華な立食パーティー会場の【全員】を残さずに仕留めなければいけない。

【江波秋介先生の会】をね。

つまり、蒼空は金に飲まれたブラックダイヤモンドってことになる。
各界の腐った蜜柑が詰まる会場に。



「デートくらい誘わせろよ。いただきます!それに、俺等コンビだぜ?一人でなんでもこなそうとするなよな。仕事もやめたのに」

一緒に食事を取りながら、そんな言葉が出るなんて、高校以来かな?

「陽葵のために、仕事をこなすこと。それに日の当たるうちに食事を一緒にとれるだけ、立派なデートよ」

浮かない顔をした千冬は、ワインを飲んでいた。

夕方になり、動きやすいパーティードレスに着替え、二人で車に乗り、会場に向かった。

「お客様、ご招待状がありませんが?」

千冬は大柄の男性に飛びつくと、顎を持ち上げ、首をへし折った。

「これでいいかよ?馬鹿野郎。行くぞ」

会場内は、悪魔の階段のメロディーが鳴り響き、裸の女達が男を接待していた。

二人は何も言わず、スピーディーにしらみ潰しにへし折っていく。

どうやら話さなくてもわかっていたみたいね、千冬。私は蒼空を殺しても殺しきれない。

壇上の上で高笑いする蒼空を睨みながら、逃げないようにと、私が先に壇上に上がり、蒼空の首に自白剤を打った。

ふと見上げると、
千冬は蒼空の顔面に拳を振りかざそうとしたので、私が拳を止めた。

「瑞樹、惚れたとかいうなよ」

睨みつけるな、怖くないから。

私は震えだした蒼空のみぞおちに拳を落とした。

「千冬。本部連行で。殺しかねないから」

蒼空を肩に担ぎ、車に乗せ、本部に向かった。

麻袋に詰めたせいかと思っていたが、アバラを数本折ったらしい。

人間だもの。ずれることもあるわ。わざと。

血に染まる麻袋を、バックミラーで見ながら千冬に言った。

「舌を噛んでないか見て」

千冬は手早く紐を緩め、蒼空を確認した。

「生きてるよ。パソコン打たせよう」

指示を出して、医者を用意する様に千冬に告げた。

「大切な【陽葵】殺して、VIP待遇とはね」


私は歯ぎしりをしながら、本部まで急いで車を飛ばした。







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