家庭的な嫁さん

花森 雲空

文字の大きさ
上 下
4 / 4

一緒に料理は目だけでも

しおりを挟む
初雪が降り始めた今朝。

寒いなあと、カーテンを開けた時だった。

ジャックは吠えて走り回り、スノーはジッとしていた。
彼方は、まだまだ夢の中。



「こりゃ冷えるわ!夜は鍋にしよう」

まだ朝の4時。

私のお決まりの時間になっていた。

彼方の睡眠薬が効いているうちに、24Hスーパーへと向かうのだ。

「頼んだよ!ジャックにスノー」

引き出しの鍵をチェックして、外に出た。

何故ならば、彼方の一言からだった。

「大量服薬(OD)したら死ねるらしいよ」

今の薬は、昔より安全になったものの、致死量というものがあります。

なので、引き出しに薬を入れて、鍵を閉めた。

万が一は0ではないから。

「しかし、よく冷えること!着いた、着いた!」

おでんなんていいんじゃない?

彼方、少しでも食べてくれたらいいな!



「おかえり。ゼリー食べたから、薬もらえる?」

あぁ、一人で食べれたんだ!

引き出しの鍵を開けて、手の平に薬を出した。

ちゃんと飲むまでは見ること。

先生に言われていたので、飲んだか確かめる。

本当はしたくないんだけど。

鍵はいつも、ネックレスにつけていた。

「今日の夕飯は何?」

聞いてくれた!一喜一憂する日々が嬉しい!

「おでんだよ!ジャック用にも作ろう!」

今日は仕事はお休み。

朝からゆで卵を作りながら、おでんの準備。

彼方は、ジャックとスノーと一緒に、アクセサリーを作っていた。

器用で生真面目だからあうんだね。

だから、心が風邪を引いたんだ。

私は、熱い玉子の殻に触れながら笑い泣いた。




「こんにゃくが美味しい」

食べてくれてる!

「今日はね、初雪が降ったんだよ!それにね、道路も凍結しててね」

私のつまらない話を、彼方は頷きながら聞いてくれた。

「あのさ、失業保険なくなる前に仕事探そうと思うんだ」

私はびっくりしてしまって、思わず箸を落としかけた。

「見つけたんだ、母子手帳。俺、父親になるから」


そして、1年半後。

話したら負担になるなんて、夫婦なのに話さなかった私は自分を恥じた。

彼方は、適応障害もあることがあり、陽茉梨(ひまり)もいることから、アクセサリー作りを本格的に家で始めた。

何人何脚になるかわからないけど、勉強に終わりはないことを、私は【うつ病】に教わった気がした。

沢山、沢山の人達がいる。

みんながみんな、違うから楽しいんだ。

そんな毎日を私達は今、噛みしめて歩いている。









しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...