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2巻
2-3
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***
リリスとルーティアがすぐ隣で見守る中、サナトは空間の中央に歩みを進めた。
複数指定を使用し、自分を含めた全員に《光輝の盾》を張った。
何が起こるか分からない以上、対策は必要だ。地形を変えたりする悪魔が出てくることも考えられる。
光り輝く壁が、三人の体を包んだ。
「覚悟はいいな?」
リリスが緊張した顔で頷いた。
サナトが体勢を戻し、虚空をにらむ。
「《悪魔召喚》」
声が壁に反響し、木霊した。
すると、十メートルほど離れた地面に、直径三十センチほどの紫色の輪が浮かび上がった。
小さいな、と思ったが、すぐに思い違いに気付いた。
輪は一つではない。
まばたきをするたびに一つ、また一つと重ねて大きな輪が増えた。読めない奇怪な文字が描かれていて、まさに召喚陣と呼ぶにふさわしいものだ。
不規則に明滅しながら瞬く間に完成した重層の輪の中心が、毒々しい紫色の空気をあとからあとから排出する。
暗くて明るい。得体の知れない靄の中に紫電が数本走り抜けた。
悪魔がその姿を現した。
第六話 ようこそ悪魔よ
「……えっ? これが悪魔ですか?」
リリスが気の抜けた声を漏らした。強張っていた体が弛緩した。
視線の先ではどう見ても普通の猫が、己の前足を舌でなめて毛づくろいをしていた。
黒い体毛、艶やかな毛並。角度のある三角の耳。目は輝くような金色だ。
なぜか黒縁の眼鏡をかけている。サイズを合わせているのか、ずいぶん小さい。
黒猫が毛づくろいをやめて、三人を一人一人じっくりと眺めた。
愛嬌のある仕草は本物の猫と変わらない。
「初めまして、我が主よ。召喚の呼び声によって参上いたしました」
黒猫がサナトをじっと見つめた。
放たれたしゃがれた声に、リリスが体を硬直させる。
「我が名はエイミラ、召喚主様に忠誠を誓います」
「……エイミラね。その忠誠とやらは信用できるのか?」
黒猫が口端をにいっと歪め、金色の瞳を嬉しそうに三日月形に変えた。猫にあるまじき豊かな表情が異常さを示している。
「無論でございます。我々悪魔は召喚主様には絶対の服従を約束いたします」
「悪魔は使役するのに対価が必要だと聞いたことがあるが?」
「そこまでご存じですか……確かに、完全に無償というわけではございません」
「俺の何が欲しいのだ? 命か? 寿命か? 腕か?」
サナトの眼が細められる。黒猫は、それは違うと首を振った。
「魂でございます」
「魂?」
よくあるパターンだな、と内心で苦笑し、サナトは疑問を投げかける。
言葉よりも実際にどうなるのかが重要なのだ。
「その魂とやらは、どうやって俺から奪う?」
「奪うのではありません。死後、私が魔界へ連れていくだけです」
「魔界があるのか……もしも復活の輝石で蘇生した場合はどうなる?」
「それは死と認識いたしません」
「……俺が生きている間の対価は?」
サナトがうさんくさいものを見るように瞳を細める。
「必要ございません。ただ、その間は無償になりますので、多少仕事をえり好みさせていただきます。必ず命令に従うとお約束できないということです」
「忠誠を誓うのではないのか?」
「召喚主様の命に危険が及ぶような場合は命令が無くとも盾となりましょう。しかし、意のままに従うというわけではないということです」
「……要は、俺を守るが後は好き勝手するということだな」
「端的に言えばその通りです」
「悪魔を召喚すると誰でも同じような条件になるのか?」
「いえ、召喚される悪魔によっては、即時の寿命支払いを対価に、完全に命令を聞く場合もありますが、私はあまり束縛を好まないもので」
悪びれる様子もなくさらりと言い切った黒猫が、無表情でサナトを見つめる。
金色の瞳が眼鏡を通して、不気味な光を放っている。
「お前が守る対象として、ここにいるリリスとルーティアを加えることはできるのか?」
「それはできません。私が守るのはスキルを有する召喚主様のみです」
「……そうか。ならば俺の連れには脅迫、教唆、精神操作といったものも含め一切の危害を加えない、という条件は?」
「その程度であれば構いません。お約束いたしましょう」
「ちなみに、俺への危害は?」
「《悪魔召喚》の基本的な条件として、直接、間接を含めた一切の危害は不可能です。もちろん通謀も含みます」
「他人と悪企みをして殺すこともできないということか。意外と、そのあたりはしっかりしているんだな」
「《悪魔召喚》とは召喚主様に絶対の権限がありますので、我々悪魔は多少の我儘を言える立場と認識していただければ問題ありません」
サナトは小さく唸りながら腕組みをし、《光輝の盾》を解除した。
黒猫が「ありがとうございます」と嬉しそうに表情を緩めた。
「召喚主様のお名前を頂戴できますか?」
「サナトだ」
「サナト様……承りました」
「で? お前の名前は?」
黒猫がきょとんとした表情を見せる。
「さきほど申し上げましたが、エイミラでございます」
両隣にいたリリスとルーティアが不思議そうにサナトを見つめた。
サナトは苦虫を噛みつぶしたような顔だ。
「何を考えているのか知らないが、エイミラは猫の時の名前か? ではバールという名前はいつ名乗るのだ?」
黒猫が面食らったようにまばたきをした。
表情に暗いさざ波が走った。
しかし、この展開を予測していたのか、すぐに壊れたような深く酷薄な笑みを浮かべた。
体の表面がドロドロと溶けるように形を失っていく。
たちまち紫色の靄が体を包みこみ、人間の姿を象った。
「ばれていましたか」
薄笑いを浮かべた悪魔が進み出た。スモークの中から現れるような絵になる光景だ。
猫の特徴は何一つ残っていない。
リリスが拘束され、サナトが一度殺された、黒いスーツ姿のくすんだ赤髪の悪魔だ。
男性とも女性とも言えない中性的な顔立ちに細い体。
途方もない存在感が場の空気を一変させた。
「……やはり、私の情報が視えているのですね。確か特殊な眼をお持ちでしたね?」
「そうだ」
《神格眼》のことだと理解したサナトは手短に返事をする。
体を突き刺すような圧迫感を受け、背筋がぞくぞくと震えた。
間違いなく同じ悪魔だ。
サナトの顔が強張ったことに気付いて、バールが謝罪した。
「これは召喚主様に失礼を」
圧迫感が嘘のように消えた。
バールが放出していた何かを抑えたのだろう。
(俺に制御ができないならこの時点で殺されている。言っていた忠誠とやらは本当だな)
サナトが内心で胸を撫で下ろして問いかける。
「なぜ、猫の姿を?」
「いえ、大したことではないのですが、人間は小動物に愛玩性を求める、と聞いたことがありましたので。多少、私に対する認識が甘くなるかと淡い期待をいたしました。申し上げた通り過度な束縛を好まないもので」
「……眼鏡は?」
バールが眼鏡のツルを持って片手で外すと、突如、真横に暗い穴が空いた。
眼鏡を持ってない方の手を突っ込み、すぐに抜いた。似たような形の眼鏡が数種類、指の間に挟まっていた。やれやれと肩をすくめながら言った。
「これらには《鑑定》を妨害する効果があるのです。《悪魔召喚》で呼び出される前に、わざわざ人間の街で効果が高そうなものをいくつか選んできたのですが……こんなものではサナト様の力を妨害できませんでしたね」
「《鑑定》妨害など必要か?」
「人間は一度殺された敵に良い感情を抱きますか?」
バールが片頬を歪めて笑う。
サナトは数秒沈黙した。
そして、あっと気付いて呆れ果てた。
バールはサナトをあっさり殺したのに、自分が召喚されて言うことを聞かなければならなくなったら小細工をしようとした、と言っている。
恨まれてこき使われるのは嫌だ、という主張である。
「……身勝手にもほどがあるな」
「悪魔とはそういうものです。人間も本質は変わらないと思いますが? サナト様は聖人なのでしょうか?」
さらりと言い返したバールが眼鏡を穴に放り込んだ。
サナトの顔が引きつる。開き直りも甚だしかった。
「妙な小細工を重ねるということは、召喚主の権限が絶対だというのは本当ということだな」
「もちろんです。嘘などついておりません。そもそも《悪魔召喚》は悪魔を殺した者にしか使えないスキルです。殺した悪魔が誰であれ、人間にとっては最上級の強さの証明であり、悪魔にとっては遥か格下に負けたという不名誉な結果を表すものです」
「その割には楽しそうに見えるな……」
バールが大仰に両手を広げた。
「当然でしょう。悪魔が……この私が敗れたのです。長い生の中で初めての経験を楽しまずに何とするのです。レベル8の方が私を殺すなど、夢物語のようだ。悪魔秘話の書にも載っていないことです」
金色の瞳がらんらんと輝き、表情に暑苦しい気配が漂う。
凄みのある眼差しには狂気も見え隠れしている。
ルーティアが「うわぁ」とたじろぐ声を上げた。
「ただ……召喚されると自由が利かなくなるうえに、荒っぽい召喚主に当たると家畜同様の扱いを受ける、と太古に耳にしたことがあります。なのでまずは恨みをぶつけられないように、一度戦った悪魔だと正体をばらさずに、そして猫の姿になり緩い条件で使役してもらえるより二段構えで、ここに参上した次第です」
サナトはとうとう大口を開けた。呆れて物が言えない。
桁違いの強さを持つ悪魔が、なんとずる賢いことを考えるのだろう。
「ですが、早々に正体を看破されてしまいました」
バールが軽く肩をすくめた。
「そんな事まで召喚主に話して良かったのか?」
「ふふふふ……もちろん。目を見ればどういう方かは直感的に分かります。サナト様には、あまり隠し事が無い方が受けが良いだろうな、という判断です。ばれた以上は作戦変更ということで」
「よくもぬけぬけとそんなことを……」
「確かに少々しゃべりすぎたかもしれません。ただ、私はサナト様を、サナト様は私を一度殺した。その結果、私はサナト様に協力することになった。それだけは厳然たる事実です。悪魔は強者には敬意を払います。それが悪魔にとってのルール。遠慮なくご命令を」
朗々と語ったバールが折り目正しく頭を下げた。
まるで熟練の執事のように動作に隙がない。
(気に入らない命令には従わないと宣言したくせに、遠慮なく命令しろだと? 言ってることが勝手すぎる。だが、この感じ……誰かに似ているような気もする)
サナトの顔が渋い表情に変わった。
それを悪魔は鋭敏に察知し、さっさと話をまとめてしまおうとばかりに口を開いた。
「ご理解いただけたようなので条件の再確認をさせていただきます。できれば先ほど誓った条件が良いのですが、今ならば命令する度に寿命を一部頂くという条件で、私をサナト様の完全な指揮下に置くことも可能です。いかがなさいますか?」
「……元々の条件だとお前は俺に長期間使役されるんじゃないのか? 明らかに命令の度に寿命を削った方が早いと思うが、そこはどうだ?」
「我々にとっては人間の寿命など物の数に入りません。少しずつ頂いても、死ぬまで待っても大した違いがないのです」
なるほど、とサナトが頷く。
「ご主人様っ!」
リリスが隣で大きな声を上げた。バールを見ないようにして、サナトを見ている。
「ご主人様の寿命の件は……できれば、毎回取られないようにしてください。私は……ご主人様が早々に亡くなられるのは嫌です」
バルディッシュをぎゅっと握り、サナトに詰め寄る。
そして、勢いよくルーティアを振り返り同意を求めた。
「ルーティアさんもそう思いますよね?」
「えっ? 私は……」
ルーティアは誰にも聞き取れないほどの小声で、ぼそぼそとつぶやいた。
リリスがみるみる表情を曇らせ、悲痛な声を上げた。ポニーテールが勢いよく跳ね、バルディッシュが手から滑り落ちた。
「そんなっ、ご主人様が心配じゃないんですかっ⁉ 寿命を取られたらすぐに死んじゃうかもしれないんですよ!」
「え? えっと……うん……マスターには長生きしてもらいたいかな」
「ですよねっ! やっぱりそうですよねっ!」
リリスが我が意を得たりとばかりに再びサナトに迫った。口調が熱を帯びた。
「命令を出す度に寿命が短くなるなんて間違っていると思いますっ!」
「そう……だよな」
リリスが小さな手を胸の前でぎゅっと握って見上げた。
選択を間違えないようにと、必死になって訴えている。
サナトは思わず抱きしめそうになった。
そして――
「サナト様もご納得のようですし……では、もうその条件といたしましょうか」
やり取りを無言で眺めていた悪魔が、呆れ声で言った。
バール 798歳
レベル89 悪魔
ジョブ:召喚悪魔
《ステータス》
HP:2834 MP:2575
力:1279 防御:1401 素早さ:2462 魔攻:2138 魔防2073
《スキル》
火魔法:達人級 魔攻+500
地魔法:神級 無詠唱
闇魔法:神級 精神操作
HP大回復 天使殺し
MP大回復 捕縛術:上級
《ユニークスキル》
悪魔の狂気
悪魔の素体
悪魔の瞳
魔の深淵
時空魔法
第七話 悪魔の恐ろしさ
紫色の複雑怪奇な文字で描かれた召喚陣があっさりと消えた。
「異常すぎるだろ。いくら普通の召喚と違うとはいえ……」
サナトは確かに召喚を解除しようとした。
繋がりを切るつもりで「悪魔召喚解除」と口にした。しかし、黒いスーツの悪魔は一瞬体に力を込めただけでそれに抗っている。
「私ほどになると召喚の解除すら困難なのです。とまあ、冗談はさておき、《魔の深淵》の効果です」
「すごいのは認めるが、はっきり言って迷惑だ。本気で帰らないのか?」
「はい。私もしばらくはサナト様と旅をご一緒しようと決めました」
バールがちらりと白い歯を見せた。
(送還を自力で拒否するだと? どんな悪魔だ。呼び出さない方が良かったかもしれない。召喚魔法の常識はどこにいったんだ……)
サナトは重いため息を吐いた。
「お前が俺に四六時中引っ付いても、何ら楽しくないと思うぞ」
「そんなことはございません。私はこう見えて面白い物を見るのが大好きなのです。珍しい強さを持つサナト様に召喚されるという、またとない機会を得たのですから、すべてをご一緒しようかと」
「帰れ、と言ったら?」
「お断りいたします」
「またどこかで呼ぶから帰ったらどうだ?」
「お断りいたします」
にこりと微笑む悪魔の瞳に邪気は無い。だが、妥協するつもりも無い顔だ。
サナトは苦笑いしながら冗談交じりに言う。
「美人なら苦じゃないが、悪魔に付きまとわれるのはな……」
サナトはそう言ってから、「しまった」と後悔する。
まるで美人ならついて来てもいいというような言い方になってしまった。嫌味を言ってやろうとしたのが裏目に出た。
ぎくしゃくした動きでリリスとルーティアを窺う。
「マスターって女性に弱いタイプ?」
「……」
呆れたようにつぶやくルーティアと、無言でじっと見つめるリリス。
どちらが怖いかは言うまでもない。
何とか弁解しようと口を開けかけ――
「あら? サナト様はこちらの方がお好みですか?」
視線を戻すと、目の前にはサナトよりわずかに身長の低い女がしなを作って立っていた。
(変身したっ⁉)
フリル付きのドレスを着た夜会巻きの女が近付き、はちきれんばかりの胸を軽く揺らしながら手を伸ばして頬に触れる。
「そうならそうとおっしゃってくださればよろしいのに」
美しい顔を近付け、聞くだけでとろけそうになる声で、「出会いの記念に、今夜どうですか?」とつぶやいた。
「ま、待て待てっ、バール! そういう冗談はやめろっ!」
完全にどもりながら後ずさったサナトの前に、ずざっと滑り込む音を立てて、リリスが割って入った。
鬼の形相だ。高レベル冒険者を遥かに上回る速度である。
銀色のバルディッシュの先を、バールの細首に当てて威嚇した。
もはや相手が誰なのかは忘れているらしい。目が怖いほどに据わっている。
「ご主人様から離れなさいっ!」
「ふーん……」
バールが優雅な動きで武器の先を指先で摘んだ。
こちらは余裕の表情だ。
「こんな貧相な武器ではダメ」
くすくすと笑いながら、穂先を人差し指と親指でぐっと握りしめる。
リリスのバルディッシュが動きを止めた。
対する悪魔も規格外の強さなのだ。
「だが以前よりは遥かに強くなっているようだ。さすがに魔人。私を殺したことで大幅にレベルアップしたようですね」
少しばかり驚いた顔のバールが口調を戻し、一瞬で元の姿に戻った。
サナトがため息を吐いて、ようやく声を上げた。
「何でもありだなバール、危害を加えるなよ」
「もちろんです。この人形にも、そちらの変てこな女にも一切手は出しません」
「リリスも、武器を下ろせ」
「……はい」
「まったく……悪ふざけにも程があるぞ。それと、名前はリリスとルーティアだ。以後、きちんと名前で呼べ」
バールが承知しましたとばかりに頭を下げる。
「リリス、守ってもらって悪かったな」
「い、いえっ……当然のことをしただけです」
嬉しそうに笑顔を見せたリリスだが、横から余計なひと言が飛んでくる。
「マスターがあんな女にでれでれしたのが原因じゃん」
「はっ?」
「ご主人様が……でれでれ……でれっ⁉」
リリスが奇妙な声を発して凍りついた。
サナトが慌てて反論する。
リリスとルーティアがすぐ隣で見守る中、サナトは空間の中央に歩みを進めた。
複数指定を使用し、自分を含めた全員に《光輝の盾》を張った。
何が起こるか分からない以上、対策は必要だ。地形を変えたりする悪魔が出てくることも考えられる。
光り輝く壁が、三人の体を包んだ。
「覚悟はいいな?」
リリスが緊張した顔で頷いた。
サナトが体勢を戻し、虚空をにらむ。
「《悪魔召喚》」
声が壁に反響し、木霊した。
すると、十メートルほど離れた地面に、直径三十センチほどの紫色の輪が浮かび上がった。
小さいな、と思ったが、すぐに思い違いに気付いた。
輪は一つではない。
まばたきをするたびに一つ、また一つと重ねて大きな輪が増えた。読めない奇怪な文字が描かれていて、まさに召喚陣と呼ぶにふさわしいものだ。
不規則に明滅しながら瞬く間に完成した重層の輪の中心が、毒々しい紫色の空気をあとからあとから排出する。
暗くて明るい。得体の知れない靄の中に紫電が数本走り抜けた。
悪魔がその姿を現した。
第六話 ようこそ悪魔よ
「……えっ? これが悪魔ですか?」
リリスが気の抜けた声を漏らした。強張っていた体が弛緩した。
視線の先ではどう見ても普通の猫が、己の前足を舌でなめて毛づくろいをしていた。
黒い体毛、艶やかな毛並。角度のある三角の耳。目は輝くような金色だ。
なぜか黒縁の眼鏡をかけている。サイズを合わせているのか、ずいぶん小さい。
黒猫が毛づくろいをやめて、三人を一人一人じっくりと眺めた。
愛嬌のある仕草は本物の猫と変わらない。
「初めまして、我が主よ。召喚の呼び声によって参上いたしました」
黒猫がサナトをじっと見つめた。
放たれたしゃがれた声に、リリスが体を硬直させる。
「我が名はエイミラ、召喚主様に忠誠を誓います」
「……エイミラね。その忠誠とやらは信用できるのか?」
黒猫が口端をにいっと歪め、金色の瞳を嬉しそうに三日月形に変えた。猫にあるまじき豊かな表情が異常さを示している。
「無論でございます。我々悪魔は召喚主様には絶対の服従を約束いたします」
「悪魔は使役するのに対価が必要だと聞いたことがあるが?」
「そこまでご存じですか……確かに、完全に無償というわけではございません」
「俺の何が欲しいのだ? 命か? 寿命か? 腕か?」
サナトの眼が細められる。黒猫は、それは違うと首を振った。
「魂でございます」
「魂?」
よくあるパターンだな、と内心で苦笑し、サナトは疑問を投げかける。
言葉よりも実際にどうなるのかが重要なのだ。
「その魂とやらは、どうやって俺から奪う?」
「奪うのではありません。死後、私が魔界へ連れていくだけです」
「魔界があるのか……もしも復活の輝石で蘇生した場合はどうなる?」
「それは死と認識いたしません」
「……俺が生きている間の対価は?」
サナトがうさんくさいものを見るように瞳を細める。
「必要ございません。ただ、その間は無償になりますので、多少仕事をえり好みさせていただきます。必ず命令に従うとお約束できないということです」
「忠誠を誓うのではないのか?」
「召喚主様の命に危険が及ぶような場合は命令が無くとも盾となりましょう。しかし、意のままに従うというわけではないということです」
「……要は、俺を守るが後は好き勝手するということだな」
「端的に言えばその通りです」
「悪魔を召喚すると誰でも同じような条件になるのか?」
「いえ、召喚される悪魔によっては、即時の寿命支払いを対価に、完全に命令を聞く場合もありますが、私はあまり束縛を好まないもので」
悪びれる様子もなくさらりと言い切った黒猫が、無表情でサナトを見つめる。
金色の瞳が眼鏡を通して、不気味な光を放っている。
「お前が守る対象として、ここにいるリリスとルーティアを加えることはできるのか?」
「それはできません。私が守るのはスキルを有する召喚主様のみです」
「……そうか。ならば俺の連れには脅迫、教唆、精神操作といったものも含め一切の危害を加えない、という条件は?」
「その程度であれば構いません。お約束いたしましょう」
「ちなみに、俺への危害は?」
「《悪魔召喚》の基本的な条件として、直接、間接を含めた一切の危害は不可能です。もちろん通謀も含みます」
「他人と悪企みをして殺すこともできないということか。意外と、そのあたりはしっかりしているんだな」
「《悪魔召喚》とは召喚主様に絶対の権限がありますので、我々悪魔は多少の我儘を言える立場と認識していただければ問題ありません」
サナトは小さく唸りながら腕組みをし、《光輝の盾》を解除した。
黒猫が「ありがとうございます」と嬉しそうに表情を緩めた。
「召喚主様のお名前を頂戴できますか?」
「サナトだ」
「サナト様……承りました」
「で? お前の名前は?」
黒猫がきょとんとした表情を見せる。
「さきほど申し上げましたが、エイミラでございます」
両隣にいたリリスとルーティアが不思議そうにサナトを見つめた。
サナトは苦虫を噛みつぶしたような顔だ。
「何を考えているのか知らないが、エイミラは猫の時の名前か? ではバールという名前はいつ名乗るのだ?」
黒猫が面食らったようにまばたきをした。
表情に暗いさざ波が走った。
しかし、この展開を予測していたのか、すぐに壊れたような深く酷薄な笑みを浮かべた。
体の表面がドロドロと溶けるように形を失っていく。
たちまち紫色の靄が体を包みこみ、人間の姿を象った。
「ばれていましたか」
薄笑いを浮かべた悪魔が進み出た。スモークの中から現れるような絵になる光景だ。
猫の特徴は何一つ残っていない。
リリスが拘束され、サナトが一度殺された、黒いスーツ姿のくすんだ赤髪の悪魔だ。
男性とも女性とも言えない中性的な顔立ちに細い体。
途方もない存在感が場の空気を一変させた。
「……やはり、私の情報が視えているのですね。確か特殊な眼をお持ちでしたね?」
「そうだ」
《神格眼》のことだと理解したサナトは手短に返事をする。
体を突き刺すような圧迫感を受け、背筋がぞくぞくと震えた。
間違いなく同じ悪魔だ。
サナトの顔が強張ったことに気付いて、バールが謝罪した。
「これは召喚主様に失礼を」
圧迫感が嘘のように消えた。
バールが放出していた何かを抑えたのだろう。
(俺に制御ができないならこの時点で殺されている。言っていた忠誠とやらは本当だな)
サナトが内心で胸を撫で下ろして問いかける。
「なぜ、猫の姿を?」
「いえ、大したことではないのですが、人間は小動物に愛玩性を求める、と聞いたことがありましたので。多少、私に対する認識が甘くなるかと淡い期待をいたしました。申し上げた通り過度な束縛を好まないもので」
「……眼鏡は?」
バールが眼鏡のツルを持って片手で外すと、突如、真横に暗い穴が空いた。
眼鏡を持ってない方の手を突っ込み、すぐに抜いた。似たような形の眼鏡が数種類、指の間に挟まっていた。やれやれと肩をすくめながら言った。
「これらには《鑑定》を妨害する効果があるのです。《悪魔召喚》で呼び出される前に、わざわざ人間の街で効果が高そうなものをいくつか選んできたのですが……こんなものではサナト様の力を妨害できませんでしたね」
「《鑑定》妨害など必要か?」
「人間は一度殺された敵に良い感情を抱きますか?」
バールが片頬を歪めて笑う。
サナトは数秒沈黙した。
そして、あっと気付いて呆れ果てた。
バールはサナトをあっさり殺したのに、自分が召喚されて言うことを聞かなければならなくなったら小細工をしようとした、と言っている。
恨まれてこき使われるのは嫌だ、という主張である。
「……身勝手にもほどがあるな」
「悪魔とはそういうものです。人間も本質は変わらないと思いますが? サナト様は聖人なのでしょうか?」
さらりと言い返したバールが眼鏡を穴に放り込んだ。
サナトの顔が引きつる。開き直りも甚だしかった。
「妙な小細工を重ねるということは、召喚主の権限が絶対だというのは本当ということだな」
「もちろんです。嘘などついておりません。そもそも《悪魔召喚》は悪魔を殺した者にしか使えないスキルです。殺した悪魔が誰であれ、人間にとっては最上級の強さの証明であり、悪魔にとっては遥か格下に負けたという不名誉な結果を表すものです」
「その割には楽しそうに見えるな……」
バールが大仰に両手を広げた。
「当然でしょう。悪魔が……この私が敗れたのです。長い生の中で初めての経験を楽しまずに何とするのです。レベル8の方が私を殺すなど、夢物語のようだ。悪魔秘話の書にも載っていないことです」
金色の瞳がらんらんと輝き、表情に暑苦しい気配が漂う。
凄みのある眼差しには狂気も見え隠れしている。
ルーティアが「うわぁ」とたじろぐ声を上げた。
「ただ……召喚されると自由が利かなくなるうえに、荒っぽい召喚主に当たると家畜同様の扱いを受ける、と太古に耳にしたことがあります。なのでまずは恨みをぶつけられないように、一度戦った悪魔だと正体をばらさずに、そして猫の姿になり緩い条件で使役してもらえるより二段構えで、ここに参上した次第です」
サナトはとうとう大口を開けた。呆れて物が言えない。
桁違いの強さを持つ悪魔が、なんとずる賢いことを考えるのだろう。
「ですが、早々に正体を看破されてしまいました」
バールが軽く肩をすくめた。
「そんな事まで召喚主に話して良かったのか?」
「ふふふふ……もちろん。目を見ればどういう方かは直感的に分かります。サナト様には、あまり隠し事が無い方が受けが良いだろうな、という判断です。ばれた以上は作戦変更ということで」
「よくもぬけぬけとそんなことを……」
「確かに少々しゃべりすぎたかもしれません。ただ、私はサナト様を、サナト様は私を一度殺した。その結果、私はサナト様に協力することになった。それだけは厳然たる事実です。悪魔は強者には敬意を払います。それが悪魔にとってのルール。遠慮なくご命令を」
朗々と語ったバールが折り目正しく頭を下げた。
まるで熟練の執事のように動作に隙がない。
(気に入らない命令には従わないと宣言したくせに、遠慮なく命令しろだと? 言ってることが勝手すぎる。だが、この感じ……誰かに似ているような気もする)
サナトの顔が渋い表情に変わった。
それを悪魔は鋭敏に察知し、さっさと話をまとめてしまおうとばかりに口を開いた。
「ご理解いただけたようなので条件の再確認をさせていただきます。できれば先ほど誓った条件が良いのですが、今ならば命令する度に寿命を一部頂くという条件で、私をサナト様の完全な指揮下に置くことも可能です。いかがなさいますか?」
「……元々の条件だとお前は俺に長期間使役されるんじゃないのか? 明らかに命令の度に寿命を削った方が早いと思うが、そこはどうだ?」
「我々にとっては人間の寿命など物の数に入りません。少しずつ頂いても、死ぬまで待っても大した違いがないのです」
なるほど、とサナトが頷く。
「ご主人様っ!」
リリスが隣で大きな声を上げた。バールを見ないようにして、サナトを見ている。
「ご主人様の寿命の件は……できれば、毎回取られないようにしてください。私は……ご主人様が早々に亡くなられるのは嫌です」
バルディッシュをぎゅっと握り、サナトに詰め寄る。
そして、勢いよくルーティアを振り返り同意を求めた。
「ルーティアさんもそう思いますよね?」
「えっ? 私は……」
ルーティアは誰にも聞き取れないほどの小声で、ぼそぼそとつぶやいた。
リリスがみるみる表情を曇らせ、悲痛な声を上げた。ポニーテールが勢いよく跳ね、バルディッシュが手から滑り落ちた。
「そんなっ、ご主人様が心配じゃないんですかっ⁉ 寿命を取られたらすぐに死んじゃうかもしれないんですよ!」
「え? えっと……うん……マスターには長生きしてもらいたいかな」
「ですよねっ! やっぱりそうですよねっ!」
リリスが我が意を得たりとばかりに再びサナトに迫った。口調が熱を帯びた。
「命令を出す度に寿命が短くなるなんて間違っていると思いますっ!」
「そう……だよな」
リリスが小さな手を胸の前でぎゅっと握って見上げた。
選択を間違えないようにと、必死になって訴えている。
サナトは思わず抱きしめそうになった。
そして――
「サナト様もご納得のようですし……では、もうその条件といたしましょうか」
やり取りを無言で眺めていた悪魔が、呆れ声で言った。
バール 798歳
レベル89 悪魔
ジョブ:召喚悪魔
《ステータス》
HP:2834 MP:2575
力:1279 防御:1401 素早さ:2462 魔攻:2138 魔防2073
《スキル》
火魔法:達人級 魔攻+500
地魔法:神級 無詠唱
闇魔法:神級 精神操作
HP大回復 天使殺し
MP大回復 捕縛術:上級
《ユニークスキル》
悪魔の狂気
悪魔の素体
悪魔の瞳
魔の深淵
時空魔法
第七話 悪魔の恐ろしさ
紫色の複雑怪奇な文字で描かれた召喚陣があっさりと消えた。
「異常すぎるだろ。いくら普通の召喚と違うとはいえ……」
サナトは確かに召喚を解除しようとした。
繋がりを切るつもりで「悪魔召喚解除」と口にした。しかし、黒いスーツの悪魔は一瞬体に力を込めただけでそれに抗っている。
「私ほどになると召喚の解除すら困難なのです。とまあ、冗談はさておき、《魔の深淵》の効果です」
「すごいのは認めるが、はっきり言って迷惑だ。本気で帰らないのか?」
「はい。私もしばらくはサナト様と旅をご一緒しようと決めました」
バールがちらりと白い歯を見せた。
(送還を自力で拒否するだと? どんな悪魔だ。呼び出さない方が良かったかもしれない。召喚魔法の常識はどこにいったんだ……)
サナトは重いため息を吐いた。
「お前が俺に四六時中引っ付いても、何ら楽しくないと思うぞ」
「そんなことはございません。私はこう見えて面白い物を見るのが大好きなのです。珍しい強さを持つサナト様に召喚されるという、またとない機会を得たのですから、すべてをご一緒しようかと」
「帰れ、と言ったら?」
「お断りいたします」
「またどこかで呼ぶから帰ったらどうだ?」
「お断りいたします」
にこりと微笑む悪魔の瞳に邪気は無い。だが、妥協するつもりも無い顔だ。
サナトは苦笑いしながら冗談交じりに言う。
「美人なら苦じゃないが、悪魔に付きまとわれるのはな……」
サナトはそう言ってから、「しまった」と後悔する。
まるで美人ならついて来てもいいというような言い方になってしまった。嫌味を言ってやろうとしたのが裏目に出た。
ぎくしゃくした動きでリリスとルーティアを窺う。
「マスターって女性に弱いタイプ?」
「……」
呆れたようにつぶやくルーティアと、無言でじっと見つめるリリス。
どちらが怖いかは言うまでもない。
何とか弁解しようと口を開けかけ――
「あら? サナト様はこちらの方がお好みですか?」
視線を戻すと、目の前にはサナトよりわずかに身長の低い女がしなを作って立っていた。
(変身したっ⁉)
フリル付きのドレスを着た夜会巻きの女が近付き、はちきれんばかりの胸を軽く揺らしながら手を伸ばして頬に触れる。
「そうならそうとおっしゃってくださればよろしいのに」
美しい顔を近付け、聞くだけでとろけそうになる声で、「出会いの記念に、今夜どうですか?」とつぶやいた。
「ま、待て待てっ、バール! そういう冗談はやめろっ!」
完全にどもりながら後ずさったサナトの前に、ずざっと滑り込む音を立てて、リリスが割って入った。
鬼の形相だ。高レベル冒険者を遥かに上回る速度である。
銀色のバルディッシュの先を、バールの細首に当てて威嚇した。
もはや相手が誰なのかは忘れているらしい。目が怖いほどに据わっている。
「ご主人様から離れなさいっ!」
「ふーん……」
バールが優雅な動きで武器の先を指先で摘んだ。
こちらは余裕の表情だ。
「こんな貧相な武器ではダメ」
くすくすと笑いながら、穂先を人差し指と親指でぐっと握りしめる。
リリスのバルディッシュが動きを止めた。
対する悪魔も規格外の強さなのだ。
「だが以前よりは遥かに強くなっているようだ。さすがに魔人。私を殺したことで大幅にレベルアップしたようですね」
少しばかり驚いた顔のバールが口調を戻し、一瞬で元の姿に戻った。
サナトがため息を吐いて、ようやく声を上げた。
「何でもありだなバール、危害を加えるなよ」
「もちろんです。この人形にも、そちらの変てこな女にも一切手は出しません」
「リリスも、武器を下ろせ」
「……はい」
「まったく……悪ふざけにも程があるぞ。それと、名前はリリスとルーティアだ。以後、きちんと名前で呼べ」
バールが承知しましたとばかりに頭を下げる。
「リリス、守ってもらって悪かったな」
「い、いえっ……当然のことをしただけです」
嬉しそうに笑顔を見せたリリスだが、横から余計なひと言が飛んでくる。
「マスターがあんな女にでれでれしたのが原因じゃん」
「はっ?」
「ご主人様が……でれでれ……でれっ⁉」
リリスが奇妙な声を発して凍りついた。
サナトが慌てて反論する。
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