俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

小桃

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最終章 世界の夜明け

閑話 異端者を負う者

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 私はさらなる成長をする為に、ラズガト市を離れて王都にたどり着いてからも、棒術を極める為の修行に励んだ。

 自分で言うのも何だけど、武術の才能だけなら王国随一じゃないかと思っている。ただ、頭を使うことはからきしダメで、家賃や日用品の買い物程度の計算すら怪しい。自分は武の道で生きていくつもりなので、その辺りは気にする必要はないと思っていた。が……、世の中はそんなに甘くなかった。

 王都にある道場でもメキメキと腕を上げて、無心流棒術の四天王まで登り詰めた。そんなある日、とても人当たりの良い男性と知り合った。常識の無い私の為に、親身になって尽くしてくれる様は、心の奥底で懐かしさを感じて、彼のことを完全に信頼した。だが、それは間違いだった……

 私は彼のことを信じていたので、何かを勧められても自分で確認せずに『はい』『良いよ』と答えていて、その中の1つに軍属になる契約があったらしく、私の知らぬところで軍人となった。

 私を軍に売り渡し、巨額の金を手にした彼はもう居ない。後から判ったことだけど多額の借金も背負わされていて、軍の中でも最も汚い特務隊に所属して、要人等を暗殺する仕事を引き受けて、その高額な報酬の殆どを返済に当てていた。元はと言えば、誰かを守る為に力を得ようとしていたが、その力を暗殺の為に使うようになり、いつの間にか『殺人マシーン』と呼ばれるようになっていた。

 そして今日も軍からの暗殺命令を受ける為に、存在しない部屋を訪れる。部屋の中は真っ暗で何も見えず、感情のない声で命令が下される。

「お前も耳にしていると思うが、異端者が王都憲兵隊が守る門を強行突破して、クルーズ共和国へ逃亡した案件だ」
「あぁ、なんか王都で騒ぎがあったね?」
「もっと世間を知ろうとしろ。その異端者により多数の犠牲者が出ているから、クルーズ共和国へ逃げ切られる前に暗殺しろ」
「居場所は判るの?」
「追跡部隊が消えた。粒揃いの精鋭が全滅したからそこで間違いない。進むと思われる進行方向と異端者の情報は、お前の部屋に届けておいた。Cランクハンターのようだが、ランクを偽っている疑いがあって、Aランク以上の強者の可能性が高いが、お前なら大丈夫だな?」
「多分ね。話は終わり? 帰るよ?」
「……」

 存在しない部屋を出て、部屋に戻ると2つの資料が置かれていた。速い馬で追いかければギリギリ追いつくかな? 暗殺対象はヒューマンが4人に半森人ハーフエルフが2人、どんな相手でもいつも通りに殺すだけ。

 必要な物を魔法鞄マジックバッグへ収めると、暗殺対象を追う為に馬を走らせたのだった。

§小桃の呟き§
 ラズガト市に無心流棒術と言えば、懐かしの彼女でしょうか? 裏切るような形で袂を分かち合ってからかなりの時間が経って、負う者と追われる者の関係で再会することになるのかな?

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