俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

小桃

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最終章 世界の夜明け

第22話 一つの提案

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 タタンの家族が水場で暮らさざるを得ない理由を聞いて、今の俺にできることを考える。まぁ、考えるというよりも、決断をしたという方が正しくて、タタンに一つの提案をする。

「ここでの出会いは偶然ではなく必然。どうだろう、僕達と一緒に共和国へ行かないか?」
「「!?」」
「ははっ、驚くのも当然だね。これでも僕の娘以外は全員がハンターでさ、魔物との戦闘はベテランクラスなんだよ。ただ僕達は異端者だから、ラグーン王国から追手がくるリスクがあるんだけどね。急な決断を迫ることになるのは申し訳ないけどね」
「「……」」
「明日の朝には出発するから、一緒に行くなら声をかけて欲しい」
「……、判った」

 言葉少なに頷いたタタン。本当ならゆっくりと考えてもらいたいけど、追手が迫る可能性を考えると悠長なことは言ってられない。なので、タタン達の判断に任せることにして、俺は家族が休んでいる家馬車ルーロットへと戻った。

§タタンの視点§
「ここでの出会いは偶然ではなく必然。どうだろう、僕達と一緒に共和国へ行かないか?」

「明日の朝には出発するから、一緒に行くなら声をかけて欲しい」

 ウォードの提案は、俺達には魅力的過ぎる内容のものだった。普通に考えれば『頼む』と即答していたが、そんな簡単に答えることができなかったのには2つの理由がある。

 1つ目はウォード達が異端者と認定されていること。もし、ラグーン王国から追手が迫っているのなら共和国への道のりは危険を伴うだろう。追いつかれた場合は即座に処刑されるはずで、同行してる俺達も同じ目に遭ってしまう。ただ、残っていても他種族への迫害の恐れはあるので、同行するほうがメリットは多いかも知れない。

 2つ目はさらに深刻な問題で、魚人フィシャーは身体的な問題があり陸上での生活に適していないのだ。身体を覆う鱗は乾燥に弱く、乾くと鱗が剥がれてしまい死に至る。今は乾季の季節で、移動中の降雨と水溜りは期待できない。

(この2つを考慮すると、ウォードに同行するのは厳しいと判断するのが妥当か……)

 俺の考えはまとまった。そのことを家族に伝えようとすると、母が先に口を開いた。

「モモンとナナリの将来を考えれば、危険は承知で付いていくべきよ」
「母さんの言う通り。私達が居なくなったら兄妹だが残されるのは可哀想だもの」

 母に続いてママリも、子供達の将来の為にも共和国を目指すべきだと言った。

(そうか、俺達じゃなく子供達の将来を考えるべきだったのか……)

「判った。ウォードと一緒に共和国を目指そう。夜が明けたらそのことを伝えるから、いつでも発てるように準備をしよう」
「「コクリ」」

 モモンとナナリ、俺は2人の将来のことを最優先に考えて、共和国を目指すことを決意した。

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