325 / 363
第五章 ウォード覚醒編
第67話 秘術の代償
しおりを挟む
「ラミュル、ここに居るのか!」
「う~、う~」
部屋に踏み入ると同時に声を掛けると、部屋の片隅から唸るような声が聞こえたので、視線を向けると変わり果てたラミュルの姿があった……。
「ラミュル!」
俺は口に押し込まれていた布を取り出して、縛られていた縄を解いた。
「お、お兄ちゃん……、無事なのね」
「ラミュル……、その姿は……」
俺の目の前には、白髪交じりで顔にはシワが目立ち声はかすれて、誰もが知るラミュルの姿ではなかった。
「これは聖命丸を使った秘術の代償だよ」
「そんな……、どうして!」
「お兄ちゃんが命を懸けて守ってくれたお母さんを、私は守れなかった……。お母さんとアナが愛するお兄ちゃんだけは守りたかったの」
「ラミュル……」
俺はラミュルの手を取って抱き寄せると、メルローズを周囲の警戒に残してみんなが離れに入ってくる。変わり果てた姉の姿を目の当たりにしたアナスタシアは、体を震わせながら歩み寄ってきた。
「そんな……、お姉ちゃん!」
「アナ、無事なのね良かった」
「どうして!どうしてなの?」
「私は人を救う為の力を得たのに、この国はそれを許してくれない……。お兄ちゃんがこの街を救う為に命を懸けたのなら、私も命を懸けて救うと決めたの。アナの愛する人でもあったしね……」
「おねぇぢゃん……」
「お母さんもちょっとは褒めてくれるかな……」
その言葉を最後にラミュルは目を閉じ、秘術の代償としてのその生涯を終えたのだった。
「ラミュル……、きっと褒めてくれるよ」
天国でセナに褒めてもらえると伝えたあと、ラミュルを強く抱きしめる。
「お姉ちゃん!」
「「……」」
「ウォード、住民が門を破壊したみたい!暴徒化した住民が流れ込んでくるよ」
「判った。領主邸を離れよう」
領主と住民の争いに介入するつもりはない。俺はラミュルの亡骸を抱き上げて、非常用の門をから出て領主邸から離れた。セナと一緒に埋葬しようと思い墓地を目指そうとすると、アナスタシアから声をかけられた。
「ウォードは、パミュルさんの力を持ってるんだよね?」
「うん、それがどうかしたの?」
「お姉ちゃんを吸収して欲しいの。この街を離れたら戻ることはないと思うから、埋葬したお母さんは仕方ないけど、お姉ちゃんは連れて行ってあげたい」
「そうね、国の束縛から解放されたんだもん、私達と一緒に世界を回れれば喜ぶと思う」
アナスタシアの言葉の後に、ハリエットも吸収することに同意すると、サーシャとメルローズも頷いた。みんながそれを求めるのなら断る理由はないので、俺はパミュルに話しかけて、ラミュルを吸収することにした。
『パミュル』
『聞いていたわ。そのまま抱きしめていてね』
『うん』
「ラミュル、3度も命を救ってくれてありがとう。これからは一緒に世界を旅して回ろう」
俺の胸に抱かれていたラミュルが、少しずつ体の中に沈むように吸収していく。時間にしてほんの数十秒のことだったけど、俺達にとっては数時間に感じるのだった。
「う~、う~」
部屋に踏み入ると同時に声を掛けると、部屋の片隅から唸るような声が聞こえたので、視線を向けると変わり果てたラミュルの姿があった……。
「ラミュル!」
俺は口に押し込まれていた布を取り出して、縛られていた縄を解いた。
「お、お兄ちゃん……、無事なのね」
「ラミュル……、その姿は……」
俺の目の前には、白髪交じりで顔にはシワが目立ち声はかすれて、誰もが知るラミュルの姿ではなかった。
「これは聖命丸を使った秘術の代償だよ」
「そんな……、どうして!」
「お兄ちゃんが命を懸けて守ってくれたお母さんを、私は守れなかった……。お母さんとアナが愛するお兄ちゃんだけは守りたかったの」
「ラミュル……」
俺はラミュルの手を取って抱き寄せると、メルローズを周囲の警戒に残してみんなが離れに入ってくる。変わり果てた姉の姿を目の当たりにしたアナスタシアは、体を震わせながら歩み寄ってきた。
「そんな……、お姉ちゃん!」
「アナ、無事なのね良かった」
「どうして!どうしてなの?」
「私は人を救う為の力を得たのに、この国はそれを許してくれない……。お兄ちゃんがこの街を救う為に命を懸けたのなら、私も命を懸けて救うと決めたの。アナの愛する人でもあったしね……」
「おねぇぢゃん……」
「お母さんもちょっとは褒めてくれるかな……」
その言葉を最後にラミュルは目を閉じ、秘術の代償としてのその生涯を終えたのだった。
「ラミュル……、きっと褒めてくれるよ」
天国でセナに褒めてもらえると伝えたあと、ラミュルを強く抱きしめる。
「お姉ちゃん!」
「「……」」
「ウォード、住民が門を破壊したみたい!暴徒化した住民が流れ込んでくるよ」
「判った。領主邸を離れよう」
領主と住民の争いに介入するつもりはない。俺はラミュルの亡骸を抱き上げて、非常用の門をから出て領主邸から離れた。セナと一緒に埋葬しようと思い墓地を目指そうとすると、アナスタシアから声をかけられた。
「ウォードは、パミュルさんの力を持ってるんだよね?」
「うん、それがどうかしたの?」
「お姉ちゃんを吸収して欲しいの。この街を離れたら戻ることはないと思うから、埋葬したお母さんは仕方ないけど、お姉ちゃんは連れて行ってあげたい」
「そうね、国の束縛から解放されたんだもん、私達と一緒に世界を回れれば喜ぶと思う」
アナスタシアの言葉の後に、ハリエットも吸収することに同意すると、サーシャとメルローズも頷いた。みんながそれを求めるのなら断る理由はないので、俺はパミュルに話しかけて、ラミュルを吸収することにした。
『パミュル』
『聞いていたわ。そのまま抱きしめていてね』
『うん』
「ラミュル、3度も命を救ってくれてありがとう。これからは一緒に世界を旅して回ろう」
俺の胸に抱かれていたラミュルが、少しずつ体の中に沈むように吸収していく。時間にしてほんの数十秒のことだったけど、俺達にとっては数時間に感じるのだった。
20
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる
ゆる弥
ファンタジー
転生した体はなんと骨だった。
モンスターに転生してしまった俺は、たまたま助けたテイマーにテイムされる。
実は前世が剣聖の俺。
剣を持てば最強だ。
最弱テイマーにテイムされた最強のスケルトンとの成り上がり物語。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる