俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

小桃

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第五章 ウォード覚醒編

第67話 秘術の代償

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「ラミュル、ここに居るのか!」
「う~、う~」

 部屋に踏み入ると同時に声を掛けると、部屋の片隅から唸るような声が聞こえたので、視線を向けると変わり果てたラミュルの姿があった……。

「ラミュル!」

 俺は口に押し込まれていた布を取り出して、縛られていた縄を解いた。

「お、お兄ちゃん……、無事なのね」
「ラミュル……、その姿は……」

 俺の目の前には、白髪交じりで顔にはシワが目立ち声はかすれて、誰もが知るラミュルの姿ではなかった。

「これは聖命丸を使った秘術の代償だよ」
「そんな……、どうして!」
「お兄ちゃんが命を懸けて守ってくれたお母さんを、私は守れなかった……。お母さんとアナが愛するお兄ちゃんだけは守りたかったの」
「ラミュル……」

 俺はラミュルの手を取って抱き寄せると、メルローズを周囲の警戒に残してみんなが離れに入ってくる。変わり果てた姉の姿を目の当たりにしたアナスタシアは、体を震わせながら歩み寄ってきた。

「そんな……、お姉ちゃん!」
「アナ、無事なのね良かった」
「どうして!どうしてなの?」
「私は人を救う為の力を得たのに、この国はそれを許してくれない……。お兄ちゃんがこの街を救う為に命を懸けたのなら、私も命を懸けて救うと決めたの。アナの愛する人でもあったしね……」
「おねぇぢゃん……」
「お母さんもちょっとは褒めてくれるかな……」

 その言葉を最後にラミュルは目を閉じ、秘術の代償としてのその生涯を終えたのだった。

「ラミュル……、きっと褒めてくれるよ」

 天国でセナに褒めてもらえると伝えたあと、ラミュルを強く抱きしめる。
 
「お姉ちゃん!」
「「……」」

「ウォード、住民が門を破壊したみたい!暴徒化した住民が流れ込んでくるよ」
「判った。領主邸を離れよう」

 領主と住民の争いに介入するつもりはない。俺はラミュルの亡骸を抱き上げて、非常用の門をから出て領主邸から離れた。セナと一緒に埋葬しようと思い墓地を目指そうとすると、アナスタシアから声をかけられた。

「ウォードは、パミュルさんの力を持ってるんだよね?」
「うん、それがどうかしたの?」
「お姉ちゃんを吸収して欲しいの。この街を離れたら戻ることはないと思うから、埋葬したお母さんは仕方ないけど、お姉ちゃんは連れて行ってあげたい」
「そうね、国の束縛から解放されたんだもん、私達と一緒に世界を回れれば喜ぶと思う」

 アナスタシアの言葉の後に、ハリエットも吸収することに同意すると、サーシャとメルローズも頷いた。みんながそれを求めるのなら断る理由はないので、俺はパミュルに話しかけて、ラミュルを吸収することにした。

『パミュル』
『聞いていたわ。そのまま抱きしめていてね』
『うん』

「ラミュル、3度も命を救ってくれてありがとう。これからは一緒に世界を旅して回ろう」

 俺の胸に抱かれていたラミュルが、少しずつ体の中に沈むように吸収していく。時間にしてほんの数十秒のことだったけど、俺達にとっては数時間に感じるのだった。



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