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第五章 ウォード覚醒編

第64話 俺が救うのは

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 俺達は領主邸へと向かったが、スタンピードが終わったにも関わらず門は固く閉じられ、領兵達の警戒は続いていた。住民達の中には負傷をした者が多数いたので、領主邸に居るラミュルに治癒を頼む為に訪れる者は後を絶たなかった。

「どうか、ラミュルの治癒で娘を助けてもらえるように領主様に伝えてくれ!」
「街は負傷者で溢れているんだ!ラミュルさんしか治癒ができないんだよ。頼むから門を開けて治癒をしてくれ!」

 様々な声が門の前を守る領兵に訴えるが、槍を構えて門に近寄ろうとするのを牽制する。こんな状況が続けば、住民達が暴動を起こす可能性だってありえる。スタンピードに続いて、暴動の危機があるというのに、領主は何を考えているんだと思う。

 そんな様子を見ながら門を守る領兵へ近づこうとすると、領主邸を囲む壁の見張り台に1人の男が現れた。

「領主様から命令を伝える。領主邸に群がる者達はすぐに解散せよ!従わない者はスタンピードで襲って来た魔物と同じように末路になると思え」

 男の言葉の後に、集まった住民達がザワついた。被害を受けて救いを求める住民に手を差し伸べず、解散しなければ魔物と同じ扱いをすると言ったのだ。住民達の怒りのボルテージが一気に上がったようで、見張り台の男へ向かって一斉に石を投擲した。

「ふざけるな!俺達を舐めるな!」

 激しい石の雨が男に降り注ぎ、至るところに石が当たり流血する。盾を持った領兵が男を庇うと、男の口から信じられない言葉を発せられた。

「あれは、人型の魔物だ!討伐せよ」

 その言葉を聞いた領兵は流石に驚いて、すぐに行動することができなかった。その様子を見た男は領兵に向かってもう一度命令をする。

「何をしている!領主様の命令は絶対だ。従わない者は厳しい罰を与えるぞ」
「「くっ……」」

 表情を強張らせながらも、命令に従うしかない領兵が弓を構えて矢を射った。

『ビジュッ』

「うわぁ~!」
「ぐわぁ~!」

 領地の住民を守るべき存在である領兵が、命令とはいえ次々と住民達を射抜いていく。非常に行動に住民達が黙っている訳もなく、怒りに身を任せ暴徒と化して門を守る領兵へ襲いかかる。

「もう、限界だ!領主に突撃するぞ!」
「「おお~!」」

 スタンピードが終結して落ち着きを取り戻すのかと思ったら、不満を募らせる住民達と、己が大事な領主が衝突する。

『これを見ても人類を救うべきだと思う?』

 あの言葉が頭をよぎる。

(目の前の人類は救うに値しない。今救うべきなのはラミュルのみだ)

「領主邸へ突入してラミュルを救出する。邪魔をする者は倒してでも進むよ」
「「了解!」」

 俺は救うべき人を救う為に、領主邸への突入を決めた。俺が救うのは人類ではない、俺が救うのは救うに値する者だ。
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