俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

小桃

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第五章 ウォード覚醒編

第61話 最後の望み

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§アナスタシア視点§
自爆ボム!」

『ボンッ』

「ウォード!!」

 アズーロは最後の足掻きで自爆をした。それは大規模な爆発ではなく、極小規模なものだったが狙った相手を巻き込むには十分な威力。

『パラパラ……』

 爆発のあとの白煙と塵がゆっくりと薄れていくと、最も大切な人ウォードと思われる人影が見えてきた。周囲にはまだ魔物が残っている為に、迂闊に近寄ることはできない。どうするべきが悩んでいると、ハリエットが声を震わせながらも指示を出す。

「アナ以外の者は魔物を討伐……、周囲の魔物を手早く倒してラミュルさんの元へ連れて行く、そしてウォードを治療するのよ」
「「……はい」」

 心配な想いは全員同じ、駆け寄って無事を確認したいはず。それでもウォードを救うにはお姉ちゃんラミュルの元へ連れて行くしかないので、全員がその為に戦うが、魔力を使い切った私は寄り添い励ますことしかできない。今はできることを全うするだけ、私はウォードに駆け寄り声をかける。

「ウォード……」
「ア、アナ……」

 目の前のウォードは、右眼の眼球と右腕は肘の部分からちぎれ飛んで、全身の至る所に裂傷があり大量の出血をしている。この状態で領主邸に居るお姉ちゃんラミュルの元へ連れて行くなんて無理だと理解した。連れて来るしかないけど、領主邸に行ったとしても領兵達に阻まれるのは間違いない……

 このままではウォードが……、そんなことが脳裏に浮かんだ時、お姉ちゃんラミュルが別れ際に伝えた言葉を思い出した。

『アナ、これを持っていって。もし、お兄ちゃんが瀕死の状態でも生きていたなら、これを飲ませて欲しいの』

 私は慌てて魔法鞄マジックバッグに手を入れて、小袋を取り出して回復薬を取り出す。液体のポーションではなく丸薬だ。

「ウォード、これはお姉ちゃんから渡された回復薬よ。これを飲めば少しは楽になるからね」
「う、うぅ……」

 自力で飲む余裕はない。口に丸薬を入れて水で流し込むしかないと判断して、私は口に水含ませると、ウォードの口に丸薬を押し入れてから口づけをして水で丸薬を流し込んだ。

(お姉ちゃん、お願いウォードを助けて!)

 私は、丸薬に最後の望みを託したの……

§主人公視点§
『ちゃん……お兄ちゃん……』

 懐かしい声が聞こえた。

 小さな頃のラミュルの声に意識を向けると、小さなラミュルが話しかけてきた。

「私がお兄ちゃんを救ってみせるよ」

 笑顔を見せながら言葉をかけると、ラミュルが俺の元へ近づいて来るのだった。
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