俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

小桃

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第五章 ウォード覚醒編

第58話 魔人vs魔人②

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 理性を解放したことで、アズーロの攻撃は本能の赴くままの攻撃となり、幸運の危険察知があっても後手に回るしかない状況だった。

(本当にデタラメな攻撃を仕掛けてくる……)

「ゴルァ!ガゥ!」

 奇声とともに強引な蹴りを放ってくると、次は大きな口を開けて噛み付こうとするので、バックステップで回避する。

 普通なら距離を取れば槍を使ってくるんだけど、強引に距離を詰めて再び噛み付こうとする。

「ガゥ、ガゥ!」
『ガッ、ガキッ』

 相手の攻撃が予測不能なので、なかなか反撃をする機会がなく防戦一方になる。不規則な攻撃でもその特徴を知ることで、対策をとれると信じて猛攻を凌ぎ続けた。

(なるほど、本能の赴くままだからこその弱点がある訳か、これならイケるぞ!)

 それぞれの攻撃の特徴を把握できたので、今度は俺から仕掛けるというより、相手の攻撃に合わせてカウンターで反撃を開始する。

「ゴルァ!」

(蹴りだ)

 瞬時にバックステップで回避をして、次の攻撃がなにかを見極める。噛み付きならカウンターで、それ以外なら回避に徹する。

「ガッ、ガゥ!」

(よし、噛み付きだ)

 攻撃は本能の赴くままなので、予測することは不可能だけど、攻撃前の独特の癖があることが判った。理性があればフェイントの恐れがあるけど、今はその心配はない。俺は噛み付き攻撃に合わせてカウンターの一撃を狙った。

 アズーロは『ガゥ』の奇声の後は、少し頭を下げて口を開けて突進してくる。コンマ数秒の癖を見逃さない集中力が必要だけど、ただそれだけのことだ。

 極限の集中のなか、俺は太刀の剣先をアズーロの口に向けて突きを放った。

「ガゥ!」

『シュッ!』

「ガァアアア!」

 完璧なタイミングのカウンターだったけど、本能だからこそなのか? ギリギリで回避されて頬を掠めることしかできなかった。仕留め損なったのは残念だったけど、攻撃動作に移る前の癖を見極めてからカウンターをいれることが、有効だと判っただけでも十分な収穫だ。

 思わぬ反撃から傷を負ったアズーロは、頬から流れる血を『ペロリ』と舐めると、周囲に向かって大きな声で叫んで呼びかける。

「来れるヤツはここへ来い!」

 先程までの奇声は、なにを言っているのか判らなかったけど、今の叫び声は理解できた。理性が戻ったのかと思った瞬間、再び奇声をあげて襲いかかってきた。言葉の違いは判らないけど、アズーロは理性を失ったままだと認識して、襲いかかる時の癖を見抜いてカウンターのチャンスを伺っていると、呼びかけに反応した魔物がやって来たのだった。

(不味いな……、アズーロの相手をしながらだと他の魔物を相手にする余裕はないぞ)

 そんな考えが脳裏を過った時だ。

『ビシュッ!』

 一筋の矢が魔物の頭を貫いたのだった。
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