俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

小桃

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第五章 ウォード覚醒編

第50話 アナスタシアの絶望

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§アナスタシア視点§
 私はお姉ちゃんの元へと急いだ。

 こうしてる今もウォードは、たった1人でスタンピードに立ち向かっている。私は治療する天賦を持っていないけど、お姉ちゃんならどんな傷でも治療することができる。

 モンスタールームを乗り切ったウォードなら、スタンピードを乗り切れるかも知れない。その時はきっと傷だらけになっているはずだから、お姉ちゃんに頼るしかない。

「お姉ちゃん!緑門でスタンピードが起こったの!私達はそのことを伝えに戻ったんだけど、魔物の大群に追い付かれそうになって……、ウォードが1人で足止めをしてくれたの」
「お母さんを助けた時と同じ状況……」

 お姉ちゃんは言葉の途中で声を詰まらせた。そして、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせて、再び言葉を発した。

「前回のスタンピードではお母さんを守る為、今回のスタンピードは私達を守る為に、押し寄せる魔物に立ち向かうなんて、やっぱりお兄ちゃんは凄い人だね。でも、今回は私が居るからどんなに酷い怪我をしても必ず救ってみせるわ」
「うん、お姉ちゃんしか頼れる人は居ない。どうかウォードを助けて、彼の居ない人生なんて考えられないの……」
「本当に愛しているんだね。そして愛されているんだね。すぐに城塞に向かうわよ」
「うん」

 私とお姉ちゃんは急いで城塞に向かう途中に、領兵から呼び止められた。スタンピードで怪我人がでた時の医療体制のことだと思ったけど、領兵から伝えられてた言葉に絶望したの。

「ラミュル様は領主邸へ移動をしてもらいます。援軍が来るまでは重要人物を避難させろとの命令が出ました」
「城塞で魔物と戦い、傷を負った人達を救うことが私の役目なのよ。避難をするのは戦えない女性や子供達じゃない!」
「これは領主命令です。多大な被害が出ても、必要な人材がいれば復興できるとの判断です。従わない場合は強制的に連れていきます」

 領兵は言葉の後に剣に手を当て脅す。戦うすべのないお姉ちゃんは従うことしかなかった。連れて行かれる前に、悲しそうな表情で私に声をかける。

「また、お兄ちゃんを救えない……。アナ、これを持っていって。もし、お兄ちゃんが瀕死の状態でも生きていたなら、これを飲ませて欲しいの」
「これは?」
「強力なポーションの一種よ。どんなポーションよりも効果があるはずだから託すわね」
「うん、ありがとう。私は城塞へ向かうね」
「えぇ、ご武運を」

 会話が終わると、お姉ちゃんは俯いたまま領兵に連れられ領主邸へと向かって行った。あまりにも身勝手な判断を下したヤンカー市の領主に、私は絶望したのだった。

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