俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ（笑）

第五章 ウォード覚醒編

第32話 目のやり場に……

　いとも簡単にゴブリンを討伐したセレーナは、魔石とドロップしたアイテムを回収して、尻尾を振りながら俺の元へ戻ってきた。

「ウォード様、討伐完了しました」
「うん、お疲れさまっ？」

　満面の笑顔を見せて俺の前の立つセレーナの姿を見て驚く。召喚した時は気づかなかったけど、確かに美しい毛に覆われてはいるけど、それは体の後方だけで前方に関しては、殆ど俺達と変わらないものだったので、思わず目のやり場に困ってしまったのだった。

　俺がセレーナから目を背けると、そのことに気づいたハリエット達が追いついた。そこで俺が目を背けた理由が判ったようで、慌てて羽織る物をセレーナに被せた。

「ちょっと、その姿！」

『バサッ』

「どうかしました？」

　突然ハリエットに声をかけられ、さらに毛布で身体を覆われたことが理解できずに、首をかしげながら質問したのだった。元々は幻獣種の魔物なので、服を着るという習慣なんてなかった訳だから仕方ない。それ以上にセレーナが言葉を発したことにハリエット達はさらに驚いたので、俺は間に入って両方に事情を説明したのだった。

「そ、そうなんだ……。ウォードとパミュルの愛情を糧にその姿に成長したのね。そう言われると確かに愛の結晶よね」
「「愛の結晶。いつかは……」」

　先ずは、セレーナの姿と言葉を使うことを理解してくれたけど、最後にみんなが小さな声で呟いていたけどよく聞こえなかった。

「ウォード様が目を背けたのは、そのような理由だったのですね。私の容姿になにか問題があったのかと思ったので、安心しました」
「問題がない訳じゃなかったけどね」
「……、不快にさせてすみません」
「いや、謝らないで。セレーナはとっても綺麗な容姿だからさ、露わもない姿を見せられると異性としては……」

　うまく説明することができずに困っていると、セレーナは首をかしげて言葉の続きを待つ。なかなか言葉が出ない俺に変わって、アナスタシアが簡潔に説明をした。

「セレーナは魅力的だから困ってるんだよ」
「はぁ？　よく判りませんが気をつけます」

　種族が違って生活環境が異なる訳だから、その辺りは機会を見つけて教えるしかないね。そこで、普段のセレーナはどう過ごしてるのかを聞いてみることにした。

「セレーナはこの印で召喚するけどさ、普段はどう過ごしてるの？」
「私はウォード様の潜在意識と繋がっています。この印は契約の証なだけです」
「それならパミュルと話したりできるのかな？」
「はい、可能です」
「じゃあ、僕達の習慣について学ぶと良いよ。僕からもパミュルに伝えておくからね」
「かしこまりました」
「じゃあ、戻すね〚帰還リターン！〛」

　教育はパミュルに任せることにして、セレーナを戻してからマッピングを再開したのだった。