俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ（笑）

第五章 ウォード覚醒編

第10話 アナスタシアの天賦

　ラミュルの診察を終えて宿へ戻った。

　明日からは指示役とはいえ討伐に参加するので、身に着ける防具を取り出して手入れをいていると、パミュルが話しかけてきた。

『凄く嬉しそうね』
『うん、明日はよろしくね』
『まぁ、あと2週間は慣らし運転なんだから、そんなに気負っちゃダメよ？』
『気をつけるけど、そんなに気負ってた？』

　自分では判らないけど、パミュルから見るとかなり気負っているようで、そのことを注意されたけど、どうやって判ったんだろう？

『判るわよ。だって激しく私を突き動かすんだもん。感じない訳ないでしょ？』
『えっと……そんなことできないよ？』

　身に覚えというか、そんなことができる訳がないんだけど……

『してるじゃない、私の中に熱い血流を流して、心臓を激しく突き動かしてるのよ？』
『あははっ、心臓のことか！』
『あの夜のことを想像してたの？』
『うっ……、そうだよ』

『コンコン』

　パミュルと話をしていると、ドアをノックする音が鳴った。アナスタシアが学校帰りに勉強をしに来た。

「どうぞ、開いてるよ」
「ただいま、今日のお姉ちゃんの診察はどうでした？」

　俺の身体のことを気になってたようで、真っ先に診察の結果を聞いてきた。

「おかげさまで、明日から指示役で復帰できるよ」
「良かった！お母さんもきっと喜んでますよ」
「うん、そうだね。あと、ラミュルにあのことを話したよ」

　ヤンカー市を離れたいことを伝えたと言うと、アナスタシアの顔が強張ったのが判った。俺は軽く微笑んでからラミュルと話したことを伝える。

「結果から言えばOKだよ。ラミュルは少し寂しそうな顔をしてたけど、アナちゃんの意思を尊重してくれたよ」
「そうですか。ダメだと言われても出ていくつもりでしたけど、認めてもらえて良かった……」

　俺の言葉を聞いて安心したのか、いつも穏やかな表情に戻っていた。話はこれで終わりではないので、本題に入ることにする。

「ここまで認めたということなんだけど、まだ話には続きがあるからもう少し聞いてね」
「あ、はい、判りました」

　そこからは、現在通っている学校を辞めて、俺達が出発するまでの間は、輝煌星きこうせいと一緒に行動をして、旅に備えてもらうことになると伝えると、悩むことなくふたつ返事を返してきた。

「学校を辞めれるのも嬉しいけど、ウォードさん達と一緒に冒険できるのは、考えただけでワクワクします。よろしくお願いします！」
「うん、よろしくね。それでアナちゃんの天賦を教えてくれるかな？」

　天賦を教えて欲しいと伝えると、少し表情が曇ると申し訳なさそうに口を開いた。

「私の天賦は〚付与魔法〛〚強化魔法〛〚短剣術〛の3つなので、戦闘要因にならような天賦はないので役に立てませんよ。儀式の後に使えない天賦ばかりと言われましたから……」

　アナスタシアは自分の天賦の凄さを理解してなかった。いや、周りにいた誰もこの素晴らしい天賦を認識できてなかったようだった。