244 / 363
第四章 帰郷編
第60話 誤解から和解へ
しおりを挟む
俺は2人に、ウォード.レーカーの記憶を持ったまま転生したことを伝えた。
「ここでは詳しく話せないから場所を移そう。僕の泊まっている宿へ行かないか?」
「それなら、私の家へ行きましょう。本当にお兄ちゃんなら、会わせたい娘がいるから……」
ラミュルがそう言うと、セナの表情が少し曇ったのが判った。俺との間に生まれた娘のことを、どう言い出せば良いのか判らないんだと思った。
「お互いに話したいことが、たくさんありそうだからゆっくりと全てを話し合おう」
「じゃあ、案内するからついて来てね」
しばらく移動してラミュルの家に着くと、リビングに案内され席に座る。2人が俺の方へ顔を向けてので、セナの誤解を解くことにした。
「まず、僕はセナから酷いことを一切受けてない。僕はセナのことを愛していたと断言するよ」
「その言葉を信じていいのよね?」
ラミュルが俺とセナに目を向けて確認をすると、俺は視線を合わせてから頷く、セナは緊張した面持ちで口を開いた。
「あの日、私の方が先に手を出してしまった。だけど拒まずに身を委ねてくれたから、2人で愛し合ったの。周りの人が言うような無理強いはしてないわ」
「その行為を行った翌朝にスタンピードが起こって、僕はセナを守る為に魔物と戦って死んでしまったんだ。そしてイナモンナ村で農家の5男として転生したんだよ」
俺とセナが互いに虐待行為はなかったと伝えると、ラミュルは目を閉じて考え込んだ。そして突然思い出したように口を開いた。
「えっ、イナモンナ村って……」
「あぁ、思い出した?あの時は助けてくれてありがとう。今こうして生きてるのはラミュルのおかげだよ」
「お兄ちゃんに似てる子だと思ったら、転生したお兄ちゃんだったのね。それで、あの時の女の子とパーティーを組んでるの?」
女の子と言ったので、ミリムのことかと思ったので、既に俺のもとから去って行ったことを伝えると、久しぶりにミリムのことを思い出した。
「いやぁ~、あの娘は強さを求めて僕のもとを去っていったんだよ」
「あっ、ごめんなさい……」
「それより、セナと僕との誤解が解けたよね?だとしたら何をすべきか判るよね?」
「うん、お母さん……ごめんなさい……」
誤解が溶けたことで、セナに謝罪するとその瞳からは涙を流していた。ラミュルがセナに近づこうとすると突然うずくまり咳き込んだ。
「けほっ、けほっ……はぁ、はあっ……」
「セナ!」
「お母さん!」
口元を押さえる手には血が付着し、呼吸が荒くなっていた。俺は直ぐに駆け寄って抱き寄せる。
「ラミュル、セナの治療はやはり無理なの?」
「うん、白魔術では死の病は治せないの……」
「けほっ、けほっ……誤解が解けて良かった。もぅ、思い残すことはないわ……最後にウォードに会うこともできたもの」
苦しそうな声で
「そんなことを言わないで、とりあえず横になって休もう。ラミュル!」
「寝室へ案内するわ」
俺は苦しむセナを抱きあげて寝室へと連れて行き、ベッドで休ませたのだった。
(やっと会えたのに……俺にはどうすることもできないのか……)
「ここでは詳しく話せないから場所を移そう。僕の泊まっている宿へ行かないか?」
「それなら、私の家へ行きましょう。本当にお兄ちゃんなら、会わせたい娘がいるから……」
ラミュルがそう言うと、セナの表情が少し曇ったのが判った。俺との間に生まれた娘のことを、どう言い出せば良いのか判らないんだと思った。
「お互いに話したいことが、たくさんありそうだからゆっくりと全てを話し合おう」
「じゃあ、案内するからついて来てね」
しばらく移動してラミュルの家に着くと、リビングに案内され席に座る。2人が俺の方へ顔を向けてので、セナの誤解を解くことにした。
「まず、僕はセナから酷いことを一切受けてない。僕はセナのことを愛していたと断言するよ」
「その言葉を信じていいのよね?」
ラミュルが俺とセナに目を向けて確認をすると、俺は視線を合わせてから頷く、セナは緊張した面持ちで口を開いた。
「あの日、私の方が先に手を出してしまった。だけど拒まずに身を委ねてくれたから、2人で愛し合ったの。周りの人が言うような無理強いはしてないわ」
「その行為を行った翌朝にスタンピードが起こって、僕はセナを守る為に魔物と戦って死んでしまったんだ。そしてイナモンナ村で農家の5男として転生したんだよ」
俺とセナが互いに虐待行為はなかったと伝えると、ラミュルは目を閉じて考え込んだ。そして突然思い出したように口を開いた。
「えっ、イナモンナ村って……」
「あぁ、思い出した?あの時は助けてくれてありがとう。今こうして生きてるのはラミュルのおかげだよ」
「お兄ちゃんに似てる子だと思ったら、転生したお兄ちゃんだったのね。それで、あの時の女の子とパーティーを組んでるの?」
女の子と言ったので、ミリムのことかと思ったので、既に俺のもとから去って行ったことを伝えると、久しぶりにミリムのことを思い出した。
「いやぁ~、あの娘は強さを求めて僕のもとを去っていったんだよ」
「あっ、ごめんなさい……」
「それより、セナと僕との誤解が解けたよね?だとしたら何をすべきか判るよね?」
「うん、お母さん……ごめんなさい……」
誤解が溶けたことで、セナに謝罪するとその瞳からは涙を流していた。ラミュルがセナに近づこうとすると突然うずくまり咳き込んだ。
「けほっ、けほっ……はぁ、はあっ……」
「セナ!」
「お母さん!」
口元を押さえる手には血が付着し、呼吸が荒くなっていた。俺は直ぐに駆け寄って抱き寄せる。
「ラミュル、セナの治療はやはり無理なの?」
「うん、白魔術では死の病は治せないの……」
「けほっ、けほっ……誤解が解けて良かった。もぅ、思い残すことはないわ……最後にウォードに会うこともできたもの」
苦しそうな声で
「そんなことを言わないで、とりあえず横になって休もう。ラミュル!」
「寝室へ案内するわ」
俺は苦しむセナを抱きあげて寝室へと連れて行き、ベッドで休ませたのだった。
(やっと会えたのに……俺にはどうすることもできないのか……)
25
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる