俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ（笑）

第四章 帰郷編

第56話 様変わりした街並み

　俺が倒れたことで、昼夜問わずに家馬車ルーロットを走り続けてヤンカー領を目指した。倒れて以降は胸の痛みは治まっていて、馬車内では普通に過ごすことができていた。

「痛みはないから、そこまで急がなくても良いんじゃない？」
「「それは認めません！」」

　なんて言ってみると、全員から怒られてしまい肩身の狭い思いをしながら移動を続けた。

　そして走り続けること4日が経過すると、遂にヤンカー領が目視で確認できる所まで来て、パミュルが声をかけてくれた。

「ウォード、ヤンカー領が見えてきたわよ」
「少しは様変わりしてるのかな？」
「10年以上経ってるんだもん、変わってるんじゃないかしら？」
「そうだね。スタンピードもあって街はかなり破壊されていたから、屋敷も無くなってるかもね」

　遠目に見えた街並みはあまり変わってるように見えなかった。それでもヤンカー領が近付いてくると、立派な門と街の周りは石壁に囲まれていて、俺の記憶にあるものとは様変わりしていた。

「私の記憶だと、周囲は木造の壁だったわよ？」
「僕の記憶も同じだよ。スタンピードがあって街の防衛線を作り変えたんだね。それにしてもこんな田舎によく予算を回してくれたね？」
「そうね。フォードも予算のやりくりに苦労してたもの」

　俺達の記憶とは違う街になったことを話してると、門に到着して入場する為の審査を受ける。

「止まれ、ヤンカー市へ訪れた理由を教えろ」
「はい、僕達は世界中を旅してるハンターです。次の目的地が決まるまで滞在する予定です。これはパーティーメンバー全員のハンターカードと、僕達のパーティー輝煌星きこうせいのパーティーカードです」

　少し高圧的な門兵に、説明してから身分証代わりにハンターカードを提示すると、本人に間違いがないか確認をした後に、入場を認められた。

「よし、入場を認める。入場税は1人20銀貨だから金貨1枚を納めるように」
「判りました」

　入場税の高さに驚いたけど、入るには支払うしかないので金貨1枚を納めると、許可証を渡された。

「店などを利用する時に、その許可証を提示すれば利用税が半額になるので提示を忘れるなよ」
「利用税がかかるのですね。ご説明ありがとうございました」
「ふっ、お前は常識のある奴だな。他の奴等は何かと文句ばかり言いやがるからな。何かトラブルがあれば俺に声をかけろ。多少は力になってやるからな！」
「はい、感謝します。では、失礼します」

　門兵との会話が終わって、ようやくヤンカー市へと入ることができたが、俺とパミュルの記憶にあるヤンカー領ではなかったので、この日は宿を取ってヤンカー市の状況などを聞くことにした。