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第四章 帰郷編

第52話 泉の主④

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 地面に頭がついた水トカゲの首を刎ねようと、絆の太刀を振り下ろそうとした瞬間、俺の胸に『ズキッ』と痛みが走って動きが止まってしまった。

「うっ……」
「ウォード!どうしたの?」

 パミュルは動きが止まったことに気づいて、俺に声をかけたけど痛みのせいで返事ができない。後ろから様子を見てたハリエットも俺の異変に気づいたようで、メルローズとサーシャに指示を出す。

「ウォードの様子がおかしい、メルはそのまま抑え続けて、サーシャはもう1度植物魔法で拘束をして。私は弓を取ってくる」
「「はい」」

 俺は太刀を杖代わりになんとか立ちながら、片方の手で胸を押さえ痛みが治まるのを待つと、水トカゲが口を開けて水弾を吐いた。

「させない!」

 パミュルは人型に戻って俺を抱きしめると、水弾を背中で受けて俺を庇った。

『ビジュ!』
「くっ……あっ」

 俺はパミュルの声を聞いて我に返った。俺を見つめる顔は激痛で顔を歪めていたが、そんな状態にも関わらずパミュルの口からは、俺を心配する言葉の後に庇った状態のままで気を失った。

「ウォード……、大丈夫なのっ……」
「パミュル!どうしてっ!」

 俺のせいでパミュルが傷を負った。

 胸の痛みがどうだとか言ってる場合ではない、俺はパミュルを抱きあげて、安全な場所へ運ぼうとすると水トカゲが再び口を開いた。

『ビジュッ!』
「グワァーーーッ!」

 ハリエットの放った矢が水トカゲの右目を貫いて、水弾を吐かずに大きな叫び声をあげると、サーシャが俺の元へやって来た。

「サーシャ、今のうちにパミュルを安全な場所へ!メルは魔力が続く限り抑え込んでね」
「「はい」」

 なんとかパミュルを家馬車ルーロットの近くへ運ぶと、俺はサーシャに手当を頼んでハリエット達の元へ戻る。

「ごめん……メルローズはもう少し頑張ってね。ハリエットは水トカゲの右側に回って、僕が合図したら特製の矢で前足を撃ち抜いて欲しい」
「はい」
「判ったけど、ウォードは大丈夫なの?」
「大丈夫とかは関係ない!今は目の前の水トカゲを必ず倒すんだ!」

 2人へ指示を出してからは、水トカゲの注意を引きつける為に前にでる。残った左目で俺を追えばハリエットは視界から消えるから。

 ハリエットが右側に回ったのを確認したので、アイコンタクトで合図を送ると、『コクリ』と頷いてから特製の矢を放った。

『バシュッン!』
「グギャアァアアーーー!」

 水トカゲは両足を撃ち抜かれると、踏ん張ることができなくなり頭が地面に着いた。俺は絆の太刀を強く握りしめると、水トカゲの太い首へ全力の一撃を入れた。

「くっ、うぉおおおおおっ!」

 俺が思い切り振り下ろすと、絆の太刀は応えるように刀身が長くなり、水トカゲの首を簡単に斬り落としたのだった。

 
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