俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ（笑）

第四章 帰郷編

第41話 平行展開

　さらに1週間が経って、メルローズはゴブリン相手なら余裕を持って戦えるようになった。これまで戦闘経験がなかった事を考えると、俺の想像を遥かに超える成長を見せてくれた。指導者が俺じゃなければもっと早く成長して、早くもっと強くなっていたのだと思うと、複雑な気分になる。

　討伐以外では、俺は家馬車ルーロットの作成をして、パミュルとハリエットは馬車の操縦を学んでいる。

　2人が馬車の操縦を覚えたら、移動しながら俺達も操縦方法を教えてもらう予定だ。全員が操縦できるようになるのがベストだからね。

　そして家馬車ルーロットの方は、走行に必要なベースは完成したので、後は箱物を組み立てれば雨風を凌げる状態になる。そこまでできれば、後は移動しながら内装を仕上げていくので、近いうちにガレリアを出発できるだろう。

　出発するまでの残りの時間は、メルローズの討伐訓練も少し難易度を上げる事にする。

「今日からは草原ではなくて、森へ入ってゴブリン以外の魔物も討伐するよ。森狼フォレストウルフや暴れ猪ワイルドボアが現れるかな？どちらもゴブリンよりも当たりが強いから、メルローズは正面から受け止めずに、盾を斜めにして受け流す事を意識して欲しい」
「は、はぁ？」
「ちょっと言葉だけじゃ難しいね。森へ入ってどちらかの魔物が現れたら、手本を見せるから装備を貸してね」
「はい、ありがとうございます」

　言葉だけでの説明は難しいみたいなので、実際に森へ入ったら装備を借りて、下手なりにも俺が手本を見せる事にした。イメージをする事ができれば理解してくれるかも知れないからね。

　そして、魔物討伐の為に森を目指して移動すると、草原とは違って魔物との遭遇は早く、願い通りに暴れ猪ワイルドボアが現れた。森狼フォレストウルフのように群れをなさない魔物なので、メルローズの装備を借りて、当たりの強い魔物との戦い方を説明する。

「先ずは他のメンバーへ突進しないように、魔物の注意を引きつける。こんな感じだよ」

　俺は槍で盾を叩く事で、音を鳴らして魔物の注意を引きつける。暴れ猪ワイルドは音のなる方を見て俺を標的にしたようだ。

「こんな感じに僕を標的にして突進してきたら、盾を正面ではなく斜めに向ける。ゴブリンよりも当たりは強いから、その事を意識して盾を構えて欲しい」

　暴れ猪ワイルドボアが猛然と突進してくると、構えた盾にぶつかって来た。説明したけどやはり衝撃は相当なものだ。

『ドカッ！』
「くっ、」

　正面から受けていれば後へ吹き飛ばされていたけど、盾を斜めに向けていた事で、衝突と同時に暴れ猪ワイルドボアは横にズレる。

「斜めにする事でこんな感じにズレるから、動きを封じる為に脚へ突きを入れるんだ。ハリエットはトドメを頼むね」
「OK！」

　俺は言葉の後に、暴れ猪ワイルドボアへ槍の一突きを放つと、スピアヘッドが後ろ脚の太腿に刺さると転倒したのだ、直ぐに前脚へ向けてもう一突き入れて動きを封じると、ハリエットが頭を射抜いて討伐が終了した。