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第四章 帰郷編

第35話 職人との会話

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 担当者は手のひらを返すように丁寧な対応で、客車を製造する職人の元へ案内してくれた。

 製造現場は別の建物にあって、商会の建物から歩いて10分ほどの場所にあった。作業現場に入って行くと、客車を作るのに必要な木材がたくさん保管されていて、木独特の良い香りが漂っていた。

 担当者はさらに現場の中を進んで、大きな客車に向かって作業をしてる所で足を止めた。

「ゲン爺、こちらのウォード様が家馬車ルーロットの購入を検討されてるので、どういう物か教えて欲しいと言われてるんだ。説明してもらっても良いかな?」

 担当者が声をかけると、客車の中から1人の男性が出てきて、作業服に付いたホコリを払いながらこちらへやってきた。

「あぁ、良いぜ、俺は客車職人のゲンドーだ。客車の事なら俺はここで一番詳しいから、なんでも聞いてくれ」
「ウォードです。貴重な時間を頂いてありがとうございます」

 作業中にも係わらず、嫌な顔一つもせずに笑顔で挨拶をして手を出して来たので、俺も返事をしてから手を出して握手をした。

「では私は戻りますが、適当な時間を見計らって迎えに来ましょうか?」
「いいえ、自分で戻れるのでご心配なく」
「かしこまりました。では失礼します」

 担当者が案内を終えたので、店舗の建物へと戻って行くと、俺はゲン爺と一緒に客車の周りを眺めながら話を始めた。

「パーティーメンバー5人で世界を旅してるんですよ。毎回乗り合い馬車を使うのなら、思い切って馬車を所有しようかと思ってるんです」
家馬車ルーロットを考えたのはテントでの野営を省く為か?」
「そうですね。乗り合い馬車だと外でテントを張って野営になりますから、その辺りを考慮すると最初にかかるお金は大きいけど、メリットの方が大きいと思うんですよ。パーティーメンバーには女性が居るので、快適に過ごして欲しいですしね」
「はっ~、その若さで考えてる事は大人だな。気に入った最高のアドバイスをするぜ」

 その後は、基本的に車内で寝るのは見張りを除く4人で、簡単な調理場と収納が欲しい事を伝えると、簡単な間取り図を手書きで書いてくれた。他にも馬車の駆動部分による乗り心地や、耐久性など事細かに説明をしてくれた。俺もメモを取って色々と質問をしてると『あっ』という間に時間が経ってしまい、待ちくたびれたハリエットとサーシャが製造現場までやって来た。

「ウォード、馬の事は色々聞いてきたけど、そっちはまだまだ掛かりそうなの?」
「えっと、聞きたい事は全て聞けたかな?」
「聞いたというか、まるで家馬車ルーロットを自作するのかと思うほど話し込んだんじゃないか?」

 ゲン爺が大笑いしながら言った言葉に、一瞬『ギクッ』としてしまった。だって、まさにその通りだったからね。隣にいたパミュルも『クスクス』と笑っていたので、顔見合わせてウインクして合図を送りあった。

「ゲン爺、長々と話し込んで済みませんでした。今日の話を元に前向きに考えますね」
「おぅ、その時は最高の物を作ってやるよ」

 心の中で『ごめん』と謝りながら、馬運商会を後にしてハンター協会へと向かって行った。

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