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第四章 帰郷編

第5話 サーシャの転機

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 サーシャの植物魔法を試す為に魔物を探していると、いい感じに暴猪ワイルドボアが現れた。事前に説明した通りにスリングショットではなく、植物魔法で相手の動きを止められるのかを試させてもらう。

「もう少し距離を縮めたら暴猪ワイルドボアの動きを止めてみてくださいね」
「はい……」

 サーシャは植物魔法に自信を持ってないので、かなり緊張してるようだ。俺は軽く肩に触れて緊張をほぐす為に笑顔で話しかける。

「大丈夫ですよ。戦闘手段を試して全てが上手くいくとは限らないんです。失敗を繰り返す事で出来る事が判っていくんです。もっとリラックスしましょう」
「はい、フォローをお願いします」

 サーシャは、少し頬を赤らめながらも笑顔で返事をした後は、肩の力も抜けたようなので、触れた手を離してターゲットへ近づいた。

「この距離なら植物魔法を発動できます」
「じゃあ、動きを止めて。僕達はフォローだよ」
「「OK!」」
「行きます。〚拘束バインド〛!」

 サーシャが植物魔法を唱えると、暴猪ワイルドボアの足下にある草が一気に伸びて体中に巻き付いた。

『ブヒィィィ』

 大声をあげながら必死に抵抗するが、草が巻き付いて懐うように動けずにいたのを確認して、俺は絆の太刀を手にして暴猪ワイルドボアの頭を一突きして絶命させた。

「サーシャさん、凄いじゃないですか!完全に魔物を拘束出来てましたよ」
「うん、サーシャ凄かったよ!私達じゃあんな風に動きを止められないもん。植物魔法はかなり使えるサポート魔法だね!」

 俺とハリエットに褒められた事と、自分の魔法で完璧に拘束した事に驚きながらも、徐々に実感が込み上げてきたようで、サーシャの目から涙が溢れそうになっていた。

「私の魔法が戦闘で役立つなんて……嬉しいです。植物魔法の可能性に気付いてくれたウォードさんのおかげですね」

 サーシャは、俺に感謝を伝えると同時に頭を深く下げた。俺もそうだったけど自分は無能だと思い込んでいて、こうして自分も出来るんだと思うと本当に嬉しい……

(その気持ちよく判ります……)

「これからは植物魔法の有効な使い方を思いついたら、その都度伝えるので一緒に頑張りましょうね」
「はい!」

 その後も魔物を見つけては、サーシャの植物魔法で拘束して倒す事を繰り返して、保有魔力の関係でこの作戦は1日5回が限界みたいだった。魔力に関しては、使い続ければ少しずつ増えるので、積極的に拘束を使うように伝えた。

 これでノースホランに着いて、ハンター協会の職員になれなかったとしても、ハンターとして頑張る事が出来るだろうと安堵したのだった。

 そして数日後に、俺達はノースホランへ無事に到着して、そのままハンター協会へと向かったのだった。


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