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第三章 未知なる世界へ

第117話 試される心の力

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 俺は精神の間へと入るとドアが閉まった。

『バタンッ!』

 俺は何も見えない真っ暗闇の中に居る。

(何も見えない、どうやって心の石に触れろというんだろう?)

 何も見えない状況で立ち尽くしていると、突然光が射して部屋を見渡せるようになった。

 部屋の中央に台座があって、そこには黒い石が『ポツン』と乗せられていた。

(これが心の石なのか?)

 俺は台座にある石に触れようとするが、心がそれを躊躇った気がしたので、直ぐに手を引いてから部屋の周りを隈なく見渡す。

『あっ』

 俺の心はある1点が気になったのでそこへ向かうと、なんて事はないただの石ころがあった。

(これが、心の石なのか?台座にある石はカモフラージュなのはなぜなんだ?)

 俺は心の思うままに従って、ただの石ころに触れると、目の前が暗転して宙に浮いたような浮遊感に襲われた。そして、映像が流れ始めた……

§精神の間で流れた映像§
 1人の少女が女性を抱きながら泣いていた。

「ママ……やだ、死なないで……」
「ティア……」
「許さない……人を許さない……人魔共生の世界を目指した事が間違いだったよ」
「ティア、全ての人が悪じゃないの……」
「人なんて全て悪だよ……ロハも人に殺されたんだよ……」
「セレスティアとの……約束を……」
「あっ……ママ、私を置いて行かないで……」

 少女に抱かれた女性は息を引き取った。

 亡くなった女性は少女の母で、少女達は魔人と呼ばれる者達とセレン島で暮らしていた。あの女神セレスティアの神話に出てくるセレン島で暮らしていたのか?

「私は人を許さない!結局、人魔が交わる事なんてありえないんだ。ならば非道な行動で私達の善意を踏みにじった人類を滅ぼす!」

 人類を滅ぼすと宣言した瞬間、少女の右目が緋色になり闇のオーラに包まれた。
 
 だとしたらこの状況は、神話セレン島の悲劇なのか……人との交流を願った人魔共生の光だった【聖女セレンスティア】が人に裏切られ、最愛の母と彼女を慕っていた魔人の大半を失った悲劇。

 当時の人側の王だったスレイン王が、友好の証と称して開いた宴の席で、魔素封印結界で魔人を無効化して虐殺され、そして最愛の母は聖女セレンスティアの腕の中で息を引き取っていった。目の前で起こった惨劇に、聖女セレンスティアは人を敵として見なした。そして生き残った魔人とともに、人類滅亡を誓って魔王となった光景を見せられたのか……

『これを見ても人類を救うべきだと思う?』

 俺の心にルクンナ洞で話し掛けてきた時と同じ声が聞こえてきた。この内容だけを見れば人は悪だと思うけど、俺は人には優しさや愛がある事を知っている。

「全ての人類が悪ではないと思います。もし、セレンスティア様に合う事があれば、僕は話し合いをして間に合うのなら止めたいと思います」
『ありがとう、あの子の悲しみを止めてあげて』
「約束は出来ませんが、機会があれば必ず止めに行こうと思います」
『あなたなら出来るよ』

 俺がそう伝えると部屋の暗転は解かれた。手元には瑠璃色の珠が残っていた。俺はどうやら精神の間をクリア出来たようで、扉が開いたので部屋の外へ出た時は、2人に思い切り抱き着かれた。

(ただいま、約束通りに帰ってきたよ)

 

 
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