俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

小桃

文字の大きさ
上 下
122 / 363
第三章 未知なる世界へ

第72話 さようなら、ルクンナ村

しおりを挟む
 ルクンナ洞から戻った次の日は、明日の出発に向けてお世話になった人達に別れの挨拶をする。

 ガンコーとイテーツ兄弟は勿論だけど、いつも美味しい料理を提供してくれた屋台の大将や女将へも挨拶をした。

 俺がデルポト市のハンター協会で、ルクンナ洞の上下層のマップと、出現する魔物の情報を販売する事を伝えてると、全員が目を丸くして驚いた後に、感謝の言葉を贈ってくれた。やはりハンター活動で得た情報は、基本的には教えないのが普通みたいだね。

 お世話になった人達への挨拶を済ませると、次は明日から3日間の馬車旅の準備をする。馬車は御者が3人で、食事休憩以外は基本的には止まらないので、自分達の食事を用意するだけいいみたい。整備された街道を進むので魔物からの襲撃は殆どなく、盗賊も現れないと聞いたので楽な旅になりそうだ。

 デルポト市からはパミュルも人型で一緒に入るので、俺達はデルポト市の手前にある森の近くで降りることに予定で、そこで少し珍しい薬草を採集してから、3人でデルポト市へ入る予定になった。

「ハリエットは必要な物は全て揃った?」
「うん、パミュルの分も揃えたから大丈夫だよ。ウォードは大丈夫なの?」
「うん、全部確認したよ。じゃあ、宿へ戻って明日に備えようか」
「OK!」

 宿へと戻って、食事と風呂を済ませてからは、世話になった部屋に感謝をしてから綺麗に掃除をする。人だけではなく物にも感謝をする俺の姿を見て、パミュルとハリエットは『ウォードは必ず聖人になるよ』と冷やかされた。俺はそんな人格者じゃないのにね(笑)

 そして翌朝になり、俺達は部屋を出て精算をする為にハンター協会出張所に居るサチの元へ向かった。

「サチさん、今日までありがとうございました。またルクンナ村を訪れるまで元気で居てくださいね♪」
「あぁ、その時はウォードとハリエットの子供を連れて来るんだよ(笑)」

 サチの言葉を聞いたハリエットは、少し頬を赤らめて返事をする。

「はい、可愛い子供をお披露目しますから、絶対に元気で居てくださいね♪」
「楽しみに待ってるよ(笑)」
「えっと……冗談はこれくらいで、本当にありがとうございました。失礼します」
「冗談じゃないよ!待ってるからね~」

 最後は笑顔で手を振ってから、ハンター協会出張所を後にして馬車乗り場へと向かうと、既に馬車は来ていたので御者に声を掛ける。

「おはようございます。デルポト市行きの馬車を予約していたウォードと申します」
「おぅ、聞いてるよ!俺は【アッチ】で整備してるのが【コッチ】で馬の世話をしてるのが【ソッチ】だよ。この3人で運行するからよろしくな!」
「はい、よろしくお願いします。出発までは馬車に乗ってても問題はないですか?」
「おぅ、直ぐに準備が終わるから乗っててくれ。終わり次第に出発するよ」
「ありがとうございます」

 馬車に乗り込み出発を待っていると、サチにガンコーとイテーツや屋台の大将に女将までが見送りに来てくれた。
 俺は慌てて馬車から降りて、見送りに来てくれた人達に礼を言う。

「みなさん、わざわざ貴重な時間を割いてまで来てくれて、本当にありがとうございます」
「本当に寂しくなるぜ……元気でな!」
「あんたは最高のハンターだよ!またルクンナ村に来ておくれよ!」
「はい、みなさんもお元気で……必ず顔を見せに来ますから待っててくださいね(泣)」


「別れを惜しんでるところで申し訳ないけど、そろそろ馬車を出発するよ」
「はい……直ぐに乗ります。みなさん、僕達は出発しますね」
「「お達者で!」」
「「はい!」」

 優しい言葉を掛けられ、俺は嬉しさのあまり涙を流しながら再開を約束して、馬車へ乗り込んだ。『無能』と罵られてきた俺に、こんなにも優しく接してくれたルクンナ村には必ず戻って来ようと誓いながら、見送りにが見えなくなるまで、窓から身を乗り出して手を振り続けた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...